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春休み
裏仕事が良く似合う
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「だから言ったでしょう。あんなのに従う道理がない」
「カムイの才覚に関しての話はまた今度だ。今は俺たちがするべきことを考えよう」
開戦ののろしが上がったことはすぐに軍全体に共有された。
ライヤの部隊ももちろん承知済みだ。
「俺たちの役割自体は遊撃で変わりないが、今回は戦線自体に絡むというよりも、裏方が基本になる」
「暗殺ですか?」
「生き生きしてるな、イプシロン」
「そんなことはないですよ?」
顔が本業ですと物語っている。
「で、国境部分が狭い分、簡単には抜けられないから。俺たちは今から出発する。異論は?」
「もちろんありませんが、隊長は王女のもとに残らないでよろしいので?」
「その王女のところまで相手が辿り着く前にかき乱すんだよ」
スピードが命だ。
「ライヤさんを送り出して良かったのですか?」
「私が良いと思ってるように見える?」
「見えないですね」
ライヤがいなくなり、不機嫌になったアンにヨルが話しかける。
「お嬢には悪いが、あいつは役に立たないといけない駒だ。あいつ抜きでも勝てるが、あいつ有りならもっと楽じゃからな」
「わかっているわ。だから、あんまり文句言ってないでしょう」
ある程度は言っていたのだが。
ちなみに、ある程度とはここにいる軍の総大将であるメンデスが3時間ほど拘束される程度だ。
「気休めかもしれませんが、ライヤさんなら大丈夫ですよ。負ける姿が想像できませんし」
「ふっ……」
「……?」
ヨルの励ましの言葉になぜか笑うアン。
「まだまだライヤのことをわかってないわね」
「むっ、どこでそんな判断をされたのですか」
さしものヨルも少し不満げな顔をするが、アンはどこ吹く風。
「勝ち負けなんて類の勝負をライヤがするわけないわ」
「火の出どころはどこだ!?」
「わかりません!」
「とにかく、早く火を消せ!」
とある海洋諸国連合の野営地。
食糧庫が煌々と燃え盛っていた。
「なぜこの人数がおって火が消えんのだ!」
食糧庫の周りにいる兵士の数は凡そ130名。
どれだけの大火事であっても彼らが一斉に水魔法で消火にかかればまず消えるだろう。
「(まぁ、食料の枯渇っていう大問題を前にして周りの兵士が本当に自軍の兵士かになんて考えは回らないよな。今何とかすれば食料は守られるっていう瀬戸際だからこそ)」
130名中、50名程はライヤの部隊だ。
元々持ってきていた変装に加え、見張り番の交代に合わせて何人かを処理。
ほぼ全員分の変装を手に入れた。
妨害工作をしているのが半分弱もいるのだ。
簡単に消火作業が進むはずがない。
10名は火魔法、もう10名は風魔法で更に炎を煽り、残りは周りの必死に消火しようとしている兵士たちの水魔法の制御を奪って邪魔をしている。
彼らが平民だからこそ、そしてライヤと出会ってから魔力制御に注力してきたからこそ為せる芸当だ。
食糧庫の大半が燃えた頃、ライヤ達は撤退を始める。
数人ずつ、慌ただしく動く諸国連合の兵士たちに紛れて方々に散っていく。
ついでにその際に数人処理していく。
食糧庫の問題が一段落して人数確認をしたら最初の変装を得るために殺した人員と合わせて3,40人が消えていることになる。
何が起こったのかは明確だ。
王国の襲撃を受けていたと気づくだろう。
だが、その頃にはライヤ達は撤退しているし、戦線を維持しようにも食料がない。
何をされたのかを調べるためにその地に残るための物資が足りないので撤退せざるを得ない。
ライヤ達は国境付近に展開している部隊よりも、更に奥の方。
所謂補給部隊の方を急襲した。
この情報はすぐに周知されるだろうが、問題はどうやってそこまで潜り込まれたかだ。
経路を先にはっきりさせないとこれから先もどこが襲われるかわからないのだから。
しかし、そのような対処を行うために軍に情報を流している頃、一目散に自軍に戻っているライヤ達は掴まらない。
ついでに経路も判然としない。
見つかるのは精々ライヤ達が夜を明かしたちょっとした痕跡程度だろう。
だが、それらの周りに足跡が発見できないので更に困惑するはずだ。
彼らは夜にだけ空を移動していたのだから。
ライヤ、イプシロン、ミランダはかなりの距離をとんで移動できるが、他の隊員はそうではない。
それでも50余名が飛んで移動するなど思いついても信じることは出来ない。
「と、いうことで、補給部隊を襲ってきました」
「よくやった」
「ね、言ったでしょ?」
メンデス大将へのライヤの報告を聞き、得意げな顔をするアンだった。
「カムイの才覚に関しての話はまた今度だ。今は俺たちがするべきことを考えよう」
開戦ののろしが上がったことはすぐに軍全体に共有された。
ライヤの部隊ももちろん承知済みだ。
「俺たちの役割自体は遊撃で変わりないが、今回は戦線自体に絡むというよりも、裏方が基本になる」
「暗殺ですか?」
「生き生きしてるな、イプシロン」
「そんなことはないですよ?」
顔が本業ですと物語っている。
「で、国境部分が狭い分、簡単には抜けられないから。俺たちは今から出発する。異論は?」
「もちろんありませんが、隊長は王女のもとに残らないでよろしいので?」
「その王女のところまで相手が辿り着く前にかき乱すんだよ」
スピードが命だ。
「ライヤさんを送り出して良かったのですか?」
「私が良いと思ってるように見える?」
「見えないですね」
ライヤがいなくなり、不機嫌になったアンにヨルが話しかける。
「お嬢には悪いが、あいつは役に立たないといけない駒だ。あいつ抜きでも勝てるが、あいつ有りならもっと楽じゃからな」
「わかっているわ。だから、あんまり文句言ってないでしょう」
ある程度は言っていたのだが。
ちなみに、ある程度とはここにいる軍の総大将であるメンデスが3時間ほど拘束される程度だ。
「気休めかもしれませんが、ライヤさんなら大丈夫ですよ。負ける姿が想像できませんし」
「ふっ……」
「……?」
ヨルの励ましの言葉になぜか笑うアン。
「まだまだライヤのことをわかってないわね」
「むっ、どこでそんな判断をされたのですか」
さしものヨルも少し不満げな顔をするが、アンはどこ吹く風。
「勝ち負けなんて類の勝負をライヤがするわけないわ」
「火の出どころはどこだ!?」
「わかりません!」
「とにかく、早く火を消せ!」
とある海洋諸国連合の野営地。
食糧庫が煌々と燃え盛っていた。
「なぜこの人数がおって火が消えんのだ!」
食糧庫の周りにいる兵士の数は凡そ130名。
どれだけの大火事であっても彼らが一斉に水魔法で消火にかかればまず消えるだろう。
「(まぁ、食料の枯渇っていう大問題を前にして周りの兵士が本当に自軍の兵士かになんて考えは回らないよな。今何とかすれば食料は守られるっていう瀬戸際だからこそ)」
130名中、50名程はライヤの部隊だ。
元々持ってきていた変装に加え、見張り番の交代に合わせて何人かを処理。
ほぼ全員分の変装を手に入れた。
妨害工作をしているのが半分弱もいるのだ。
簡単に消火作業が進むはずがない。
10名は火魔法、もう10名は風魔法で更に炎を煽り、残りは周りの必死に消火しようとしている兵士たちの水魔法の制御を奪って邪魔をしている。
彼らが平民だからこそ、そしてライヤと出会ってから魔力制御に注力してきたからこそ為せる芸当だ。
食糧庫の大半が燃えた頃、ライヤ達は撤退を始める。
数人ずつ、慌ただしく動く諸国連合の兵士たちに紛れて方々に散っていく。
ついでにその際に数人処理していく。
食糧庫の問題が一段落して人数確認をしたら最初の変装を得るために殺した人員と合わせて3,40人が消えていることになる。
何が起こったのかは明確だ。
王国の襲撃を受けていたと気づくだろう。
だが、その頃にはライヤ達は撤退しているし、戦線を維持しようにも食料がない。
何をされたのかを調べるためにその地に残るための物資が足りないので撤退せざるを得ない。
ライヤ達は国境付近に展開している部隊よりも、更に奥の方。
所謂補給部隊の方を急襲した。
この情報はすぐに周知されるだろうが、問題はどうやってそこまで潜り込まれたかだ。
経路を先にはっきりさせないとこれから先もどこが襲われるかわからないのだから。
しかし、そのような対処を行うために軍に情報を流している頃、一目散に自軍に戻っているライヤ達は掴まらない。
ついでに経路も判然としない。
見つかるのは精々ライヤ達が夜を明かしたちょっとした痕跡程度だろう。
だが、それらの周りに足跡が発見できないので更に困惑するはずだ。
彼らは夜にだけ空を移動していたのだから。
ライヤ、イプシロン、ミランダはかなりの距離をとんで移動できるが、他の隊員はそうではない。
それでも50余名が飛んで移動するなど思いついても信じることは出来ない。
「と、いうことで、補給部隊を襲ってきました」
「よくやった」
「ね、言ったでしょ?」
メンデス大将へのライヤの報告を聞き、得意げな顔をするアンだった。
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