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教師1年目
寮長との挨拶
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「寮長さん! よろしくお願いします!」
「私は事情知っているので、作らなくていいですよ。転入初日お疲れさまでした」
「(……チラ)」
「先輩が知ってるのは本当だ」
「……疲れましたよ、本当に……」
職員寮に入り、とりあえずフィオナに挨拶したヨルはやっとこさテンションを戻す。
「上手くできてたと思います?」
「俺としては作りすぎなように感じたけどな。クラスの生徒たちはヨルを元気な子だと認識しただろうから、これからテンションが低いと心配されることになるかもだぞ?」
「し、しまった……」
「まぁまぁ、今日は労ってあげましょうよライヤ」
「そしてその口調は何ですか先輩」
「あら、こっちの私もライヤは知ってるでしょう?」
つまり、お仕事モードという事か。
「改めまして、フィオナ・ストラスと申します。ライヤと共にヨル様の護衛にあたらせていただきます。監視状態という事もありますので、極力自由な行動を遠慮していただければと思います。何かあればおっしゃってくれれば考慮いたしますので」
「こちらこそ、受け入れていただきありがとうございます。もちろん、勝手な行動をするつもりはございませんので、ご安心ください」
「ありがとうございます。そちらのライヤはもちろんですが、私も彼ほどではなくとも国内では屈指の実力者だと自負しておりますので護衛の方に関してはご安心ください」
「見ているだけでも実力者だという事に疑いはありません」
「挨拶はこの辺りで大丈夫でしょうか」
「えぇ、お気遣い痛み入ります」
珍しく真面目な顔をしていたフィオナの顔がふにゃりと柔らかくなる。
「それじゃあ、ご飯にしようかー。今日はちょっと奮発したんだよー」
先ほどまでの威厳はどこへやら。
とたとたとキッチンへ向かいエプロンを身に着けるフィオナの様子をヨルは目を丸くして見ている。
「本当にさっきと同じ方ですか?」
「実はそうなんだよな。ほら、折角先輩が用意してくれてるんだから食べようぜ?」
そこへちょうどよく鍋を持ったフィオナが戻ってくる。
「服はどこへ!?」
先ほどまで着ていた軍の正装がどこかへ消えていた。
つまり普段通りの露出が激しい恰好に戻っているのだ。
「さっきあの服の上からエプロン着けていましたよねぇ!?」
確かに。
珍しいなとライヤも思った。
「さて、どうやったのかしらねー?」
非常に謎である。
「ヨルの部屋はここだ。俺の部屋の隣だから、何か困ったら言ってくれ。俺でなくとも、一階にいけば先輩もいるからな。くれぐれも一人で外出とかは避けてくれ」
「わかっています。守ってもらっている立場なのですから。その程度は我慢します。しかし、こんなに手を尽くして頂いていいのでしょうか……。私に返せるものなんてたかが知れてるというのに」
「まぁ、正直な話。ヨルに一人の女の子以上の利用価値がなかったらこうはなっていないだろうな。だが、幸運にもそれ以上の価値を持っているんだ。自分の能力にしろ、情報にしろ、親のつながりにしろ利用できるものは利用した方がいい」
「もう差し出せるのはこの体くらいしか……」
「どこの方面に差し出すつもりなんだよ……」
「ライヤさんへのせめてものお礼として」
「勘弁してくれ……」
執拗にライヤに自らの貞操を委ねようとしてくるヨルにため息をつく。
「正直に言うが、俺だって男だから興味がないわけじゃない。もちろん、ヨルがそんな見た目でも年上だっていうのは承知の上だ。その上で。俺は女性をそういった形で食い物にはしたくないんだ。気持ちはありがたいけど、それなら他の形で返してくれ。じゃあ、お休み」
そう言って自分の部屋へと消えていったライヤの後ろ姿をヨルは見つめる。
「私が返せるものなど本当にないのに……」
そんな独り言が廊下で静かに響いた。
「先生! おはようございます!」
「そのテンションで行くことにしたんだな……」
「何の話ですか? さぁ、今日も頑張っていきましょう!」
ヨルは今日も元気いっぱいだ。
精神年齢を若くするのが上手い。
その上手さに今までの人生の苦労がしのばれる。
「ヨルも苦労してきたんだな……」
「何か失礼な方向で同情されてません?」
そんなことはない、はずだ。
「私は事情知っているので、作らなくていいですよ。転入初日お疲れさまでした」
「(……チラ)」
「先輩が知ってるのは本当だ」
「……疲れましたよ、本当に……」
職員寮に入り、とりあえずフィオナに挨拶したヨルはやっとこさテンションを戻す。
「上手くできてたと思います?」
「俺としては作りすぎなように感じたけどな。クラスの生徒たちはヨルを元気な子だと認識しただろうから、これからテンションが低いと心配されることになるかもだぞ?」
「し、しまった……」
「まぁまぁ、今日は労ってあげましょうよライヤ」
「そしてその口調は何ですか先輩」
「あら、こっちの私もライヤは知ってるでしょう?」
つまり、お仕事モードという事か。
「改めまして、フィオナ・ストラスと申します。ライヤと共にヨル様の護衛にあたらせていただきます。監視状態という事もありますので、極力自由な行動を遠慮していただければと思います。何かあればおっしゃってくれれば考慮いたしますので」
「こちらこそ、受け入れていただきありがとうございます。もちろん、勝手な行動をするつもりはございませんので、ご安心ください」
「ありがとうございます。そちらのライヤはもちろんですが、私も彼ほどではなくとも国内では屈指の実力者だと自負しておりますので護衛の方に関してはご安心ください」
「見ているだけでも実力者だという事に疑いはありません」
「挨拶はこの辺りで大丈夫でしょうか」
「えぇ、お気遣い痛み入ります」
珍しく真面目な顔をしていたフィオナの顔がふにゃりと柔らかくなる。
「それじゃあ、ご飯にしようかー。今日はちょっと奮発したんだよー」
先ほどまでの威厳はどこへやら。
とたとたとキッチンへ向かいエプロンを身に着けるフィオナの様子をヨルは目を丸くして見ている。
「本当にさっきと同じ方ですか?」
「実はそうなんだよな。ほら、折角先輩が用意してくれてるんだから食べようぜ?」
そこへちょうどよく鍋を持ったフィオナが戻ってくる。
「服はどこへ!?」
先ほどまで着ていた軍の正装がどこかへ消えていた。
つまり普段通りの露出が激しい恰好に戻っているのだ。
「さっきあの服の上からエプロン着けていましたよねぇ!?」
確かに。
珍しいなとライヤも思った。
「さて、どうやったのかしらねー?」
非常に謎である。
「ヨルの部屋はここだ。俺の部屋の隣だから、何か困ったら言ってくれ。俺でなくとも、一階にいけば先輩もいるからな。くれぐれも一人で外出とかは避けてくれ」
「わかっています。守ってもらっている立場なのですから。その程度は我慢します。しかし、こんなに手を尽くして頂いていいのでしょうか……。私に返せるものなんてたかが知れてるというのに」
「まぁ、正直な話。ヨルに一人の女の子以上の利用価値がなかったらこうはなっていないだろうな。だが、幸運にもそれ以上の価値を持っているんだ。自分の能力にしろ、情報にしろ、親のつながりにしろ利用できるものは利用した方がいい」
「もう差し出せるのはこの体くらいしか……」
「どこの方面に差し出すつもりなんだよ……」
「ライヤさんへのせめてものお礼として」
「勘弁してくれ……」
執拗にライヤに自らの貞操を委ねようとしてくるヨルにため息をつく。
「正直に言うが、俺だって男だから興味がないわけじゃない。もちろん、ヨルがそんな見た目でも年上だっていうのは承知の上だ。その上で。俺は女性をそういった形で食い物にはしたくないんだ。気持ちはありがたいけど、それなら他の形で返してくれ。じゃあ、お休み」
そう言って自分の部屋へと消えていったライヤの後ろ姿をヨルは見つめる。
「私が返せるものなど本当にないのに……」
そんな独り言が廊下で静かに響いた。
「先生! おはようございます!」
「そのテンションで行くことにしたんだな……」
「何の話ですか? さぁ、今日も頑張っていきましょう!」
ヨルは今日も元気いっぱいだ。
精神年齢を若くするのが上手い。
その上手さに今までの人生の苦労がしのばれる。
「ヨルも苦労してきたんだな……」
「何か失礼な方向で同情されてません?」
そんなことはない、はずだ。
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