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教師1年目
経験談
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「無理でしょ」
「そうか? あ、おかわりお願いします」
「はいはーい」
今日も今日とてフィオナに夜ご飯をご馳走になるライヤ。
なぜかアンもその場にいた。
「あ、フィオナさん。私もお願いします」
「自分でやればー?」
「扱いが違いすぎるでしょ!?」
プロレスは本日も行われているが、ご飯をあげてるだけフィオナの懐が深いことが伺える。
「ただ、私も難しいとは思うなー。私の代も遂に達成できなかったことだしねー」
「先輩の時は一応目指してはいたんですか?」
大抵はチームが破綻してしまって個人種目はともかく団体競技は見るも無残なことになると聞いているが。
「まぁ、努力はしたねー。でも私には王女様ほどの求心力はないですしー? 最高で2位だったよ」
「当時の先輩でもダメだったのか……」
「当時のって失礼だなー?」
実際、当時のフィオナは学年内であればアンに当たるような存在であったはずだ。
それでも届かなかった。
年によって各級の戦力に差があったとしても、1位には届く気がしなかったらしい。
「こんなこと言ったら身もふたもないんだけど、彼らはまだ学生なんだよー。それぞれが正しい判断なんてできるはずないし、出来ないことも多いよねー。だから、信じられる人から出される指示っていうのはかなりありがたいものなんだよー。だから、指揮官役の指示する力と、求心力っていうのはどうしても必要になると思うよー」
経験者のいう事は的を射ている。
「でも、C級は?」
「王女様にはわからないかもだけどー。ずっと一緒にいれば自然とリーダーみたいな人はどの団体にも出てくるよー。そして、彼らは周りの人が出来ることを他のチームよりも理解しているからね。よりやりやすい指示を出しやすいよねー」
「一言余計じゃないかしら?」
ビキッと白い肌に青筋を浮かべるアンだが、フィオナには全く応えていない。
「となると、うちの学年だとウィルか……」
少し考え込んで、あることに思い至る。
「アン以外の王族はどうなんだ?」
同じ学年には王族は通っていないはずだ。
ということは自然と各学年でリーダーシップをとっていくことになっていくのではないだろうか。
「さぁ、そんなこと聞いたことないもの。一緒にご飯食べたりなんてしないし」
ここにいるくらいだからな。
よく考えたら王族が毒見やら見張りの護衛やら無しで食事してるのえぐくない?
どんな信頼を置かれてんだ。
「ライヤ、あんた魔術クラブの顧問になったんでしょ? イリーナに聞けばいいじゃないの」
「それがいいよ! 私と一緒に行こうよー!」
「コーチは随分暇なようですね!」
「なぁに? ライヤと一緒にいれるのがそんなに羨ましいのかなー?」
「ごちそうさまでした」
またバチバチと戦いだした二人を横目にライヤは食器を片付けるのだった。
「は? 何言ってんだお前は」
そんなにあたり強いことある?
「お前じゃなくて、先生でしょう?」
「……先生」
顧問の先生が助け舟を出してくれるが、もはやそこじゃない。
「他の級がいる前で手の内を話すわけがないだろ?」
あ、そうか。
他の学年も体育祭が近づいてるし、クラブ内には敵になるものもいるのだ。
ほいほい言えるものじゃないか。
「じゃあ、放課後でどうだ? 何か奢るから話聞かせてくれよ」
「……はぁ!?」
顔を真っ赤にして叫ぶイリーナ。
「ライヤー」
「な、なんですか先輩」
「私というものがありながら他の女の子をデートに誘うなんて許せないなぁー」
「で、デート……」
プルプル震えているイリーナとその言葉からやっと事態を察する。
「いや、変な意味はないぞ!? 俺はただ体育祭の話を聞ければと……」
「わかってるから! こっちによるなっ!」
一歩距離をつめたら5歩分くらい距離をあけられた。
えぇ……?
「ひ、暇があれば考えてやらんでもないわ」
「ほ、ほんとか」
無理にというわけではなかったが、ありがたいことにはありがたい。
「いつなら大丈夫だ?」
「お父様とお母様に話をしてからになるから、3日後とか……?」
あの2人に話が伝わるのか……。
「ライヤ君。アンだけじゃ満足できなくてイリーナにも手を出すつもりなの? 母親としてはちょっと許容できないわぁー」
「アンにも手を出してなんかいませんよ!?」
その週の週末。
いつものようにアンが訪ねてきたので居留守してたら王妃も来てた。
慌ててパジャマ姿で王妃を自分の部屋に招き入れたという間抜けな図が生まれた。
一応、ローブに着替える時間くらいはもらえたが。
「え、何もしてないの……?」
「もちろんですよ! まかり間違って王女様に平民がなんかやらかしたら俺だけが処刑されるどころか家ごと一族全員いかれるでしょ! そんな親不孝な事俺は出来ませんからね!」
ついでに言えばそんな度胸もない。
スッと流し目を送る王妃から目をそらすアン。
「まぁ、いいわ。イリーナに気移りしたとかそういうわけではないのね?」
「いや、しませんよ。俺は今度ある体育祭でうちのクラスがいるチームが勝つために意見を聞こうと思っただけで……」
「あら、そういえばそんな時期ね」
「把握してらっしゃらないのですか?」
「アンがいた頃はこの子がライヤ君に勝てる機会だって嬉しそうに話してくれてたから知っていたかしらね」
「お母様」
「高学年になるにつれて余裕がなくなって負けて帰ってきた日なんて……」
「お母様!?」
慌てて王妃の口を塞ぐアンに苦笑を漏らすライヤ。
アンが極度の負けず嫌いなのはライヤが一番知っている。
隠さなくても負けた日に泣くのをギリギリまで我慢して帰ったのは知っている。
それでも隠そうとするアンをライヤは微笑ましく感じるのであった。
(この子ももっと積極的にいけば既成事実の一つや二つ出来そうなものを……)
先ほどライヤにした質問ではイリーナに気移りしたのかと聞いたことに対してライヤはしていないと答えた。
つまり、アンに気があることはあまり隠そうとしていないのだ。
つい言ってしまったという空気は感じなかったのだし。
ライヤからすれば今更なのだろうが、この子はそんな気遣いも気づいていないようである。
(これは、今までライヤ君が朴念仁なのかもと思っていたのだけど、逆なのかもしれないわね)
2人の関係の感想に少し修正を加える王妃であった。
「そうか? あ、おかわりお願いします」
「はいはーい」
今日も今日とてフィオナに夜ご飯をご馳走になるライヤ。
なぜかアンもその場にいた。
「あ、フィオナさん。私もお願いします」
「自分でやればー?」
「扱いが違いすぎるでしょ!?」
プロレスは本日も行われているが、ご飯をあげてるだけフィオナの懐が深いことが伺える。
「ただ、私も難しいとは思うなー。私の代も遂に達成できなかったことだしねー」
「先輩の時は一応目指してはいたんですか?」
大抵はチームが破綻してしまって個人種目はともかく団体競技は見るも無残なことになると聞いているが。
「まぁ、努力はしたねー。でも私には王女様ほどの求心力はないですしー? 最高で2位だったよ」
「当時の先輩でもダメだったのか……」
「当時のって失礼だなー?」
実際、当時のフィオナは学年内であればアンに当たるような存在であったはずだ。
それでも届かなかった。
年によって各級の戦力に差があったとしても、1位には届く気がしなかったらしい。
「こんなこと言ったら身もふたもないんだけど、彼らはまだ学生なんだよー。それぞれが正しい判断なんてできるはずないし、出来ないことも多いよねー。だから、信じられる人から出される指示っていうのはかなりありがたいものなんだよー。だから、指揮官役の指示する力と、求心力っていうのはどうしても必要になると思うよー」
経験者のいう事は的を射ている。
「でも、C級は?」
「王女様にはわからないかもだけどー。ずっと一緒にいれば自然とリーダーみたいな人はどの団体にも出てくるよー。そして、彼らは周りの人が出来ることを他のチームよりも理解しているからね。よりやりやすい指示を出しやすいよねー」
「一言余計じゃないかしら?」
ビキッと白い肌に青筋を浮かべるアンだが、フィオナには全く応えていない。
「となると、うちの学年だとウィルか……」
少し考え込んで、あることに思い至る。
「アン以外の王族はどうなんだ?」
同じ学年には王族は通っていないはずだ。
ということは自然と各学年でリーダーシップをとっていくことになっていくのではないだろうか。
「さぁ、そんなこと聞いたことないもの。一緒にご飯食べたりなんてしないし」
ここにいるくらいだからな。
よく考えたら王族が毒見やら見張りの護衛やら無しで食事してるのえぐくない?
どんな信頼を置かれてんだ。
「ライヤ、あんた魔術クラブの顧問になったんでしょ? イリーナに聞けばいいじゃないの」
「それがいいよ! 私と一緒に行こうよー!」
「コーチは随分暇なようですね!」
「なぁに? ライヤと一緒にいれるのがそんなに羨ましいのかなー?」
「ごちそうさまでした」
またバチバチと戦いだした二人を横目にライヤは食器を片付けるのだった。
「は? 何言ってんだお前は」
そんなにあたり強いことある?
「お前じゃなくて、先生でしょう?」
「……先生」
顧問の先生が助け舟を出してくれるが、もはやそこじゃない。
「他の級がいる前で手の内を話すわけがないだろ?」
あ、そうか。
他の学年も体育祭が近づいてるし、クラブ内には敵になるものもいるのだ。
ほいほい言えるものじゃないか。
「じゃあ、放課後でどうだ? 何か奢るから話聞かせてくれよ」
「……はぁ!?」
顔を真っ赤にして叫ぶイリーナ。
「ライヤー」
「な、なんですか先輩」
「私というものがありながら他の女の子をデートに誘うなんて許せないなぁー」
「で、デート……」
プルプル震えているイリーナとその言葉からやっと事態を察する。
「いや、変な意味はないぞ!? 俺はただ体育祭の話を聞ければと……」
「わかってるから! こっちによるなっ!」
一歩距離をつめたら5歩分くらい距離をあけられた。
えぇ……?
「ひ、暇があれば考えてやらんでもないわ」
「ほ、ほんとか」
無理にというわけではなかったが、ありがたいことにはありがたい。
「いつなら大丈夫だ?」
「お父様とお母様に話をしてからになるから、3日後とか……?」
あの2人に話が伝わるのか……。
「ライヤ君。アンだけじゃ満足できなくてイリーナにも手を出すつもりなの? 母親としてはちょっと許容できないわぁー」
「アンにも手を出してなんかいませんよ!?」
その週の週末。
いつものようにアンが訪ねてきたので居留守してたら王妃も来てた。
慌ててパジャマ姿で王妃を自分の部屋に招き入れたという間抜けな図が生まれた。
一応、ローブに着替える時間くらいはもらえたが。
「え、何もしてないの……?」
「もちろんですよ! まかり間違って王女様に平民がなんかやらかしたら俺だけが処刑されるどころか家ごと一族全員いかれるでしょ! そんな親不孝な事俺は出来ませんからね!」
ついでに言えばそんな度胸もない。
スッと流し目を送る王妃から目をそらすアン。
「まぁ、いいわ。イリーナに気移りしたとかそういうわけではないのね?」
「いや、しませんよ。俺は今度ある体育祭でうちのクラスがいるチームが勝つために意見を聞こうと思っただけで……」
「あら、そういえばそんな時期ね」
「把握してらっしゃらないのですか?」
「アンがいた頃はこの子がライヤ君に勝てる機会だって嬉しそうに話してくれてたから知っていたかしらね」
「お母様」
「高学年になるにつれて余裕がなくなって負けて帰ってきた日なんて……」
「お母様!?」
慌てて王妃の口を塞ぐアンに苦笑を漏らすライヤ。
アンが極度の負けず嫌いなのはライヤが一番知っている。
隠さなくても負けた日に泣くのをギリギリまで我慢して帰ったのは知っている。
それでも隠そうとするアンをライヤは微笑ましく感じるのであった。
(この子ももっと積極的にいけば既成事実の一つや二つ出来そうなものを……)
先ほどライヤにした質問ではイリーナに気移りしたのかと聞いたことに対してライヤはしていないと答えた。
つまり、アンに気があることはあまり隠そうとしていないのだ。
つい言ってしまったという空気は感じなかったのだし。
ライヤからすれば今更なのだろうが、この子はそんな気遣いも気づいていないようである。
(これは、今までライヤ君が朴念仁なのかもと思っていたのだけど、逆なのかもしれないわね)
2人の関係の感想に少し修正を加える王妃であった。
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