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教師1年目
4者面談
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なんでこんなことになってる?
率直な疑問である。
ゲイルとの決闘が終わり、珍しくアンが労ってくれるというからついて行った。
特に予定もないのはいつものことなのだが、連れていかれた先は貴族御用達の高級料理店だった。
周りに格式高そうなお店が増えてたから予想はしてたが、いざお店の前について逃げようとしても時すでに遅し。
アンに腕を掴まれ連れて行かれた。
まぁ、そこまでは良かった。
俺に金はないし、労ってくれると言ってるから奢ってもらえるのかなくらいにしか思ってなかった。
「ようこそ、いらっしゃいました」
「うん、じゃあ、席に案内して」
「かしこまりました」
店に入る瞬間に変装を解いたアンは常連のようだ。
案内された先は広めの6人くらいが想定された個室。
なぜ2人なのにこんな広いのかなーと楽観的に考えていたのだが、答えは部屋の中に待っていた。
「まぁ、座れ」
「はい……」
なんとそこには国王夫妻その人たちがいたのだ。
扉を開け、固まった俺だが、国王の一言で座ることを余儀なくされた。
一介の教師である俺に国王に逆らう術などない……。
「こうやって話すのは久しぶりね! 元気だったかしら?」
「まぁ、ぼちぼちやってます。王妃様もお元気そうで……」
ウキウキした様子の王妃様に話しかけられる。
寡黙な王様と違い、王妃様はほわほわしたお話し好きな方だ。
初めこそ硬めの言葉を使って話していらしたのだが、俺がアンに城に連れていかれることが多く、よく話すようになってから砕けた言葉遣いをされるようになった。
俺はいまだに慣れないが。
「今日も見に行ってたわよ? この人はちゃんと公に行ってたけど、私はお忍びでね? 見ててとても楽しかったわー」
「存じておりましたよ。ともかく、楽しんでもらえたなら良かったです」
「あら? 言ってたかしら?」
「いえ、魔力の質で……」
「流石ねー。相手の魔力で誰かを判断するなんてよっぽど魔力制御の感応に突出していなければできないもの」
「いえいえ」
「でも、ライヤ。ゲイルの攻撃を受ける必要はあったの? ライヤならゲイルに何もさせずに完勝できたでしょう?」
「いや、あれは正解だよ。一応向こうの面子も保てるし、今回の決闘は授業参観も兼ねてるから。生徒の実力を見せないと意味がないだろ?」
「それはそうでしょうけど……」
「だから、俺の力を見せるために雷の龍も作ったんじゃないか」
アンが俺の処遇を憂いてくれているのはわかってたからな。
これで少しは舐められることもなくなればいいんだけど。
「……惜しいな」
最初の一言を除いてここまで沈黙を貫いていた王様がここで発声する。
「やはり、王国軍には来ないか」
「以前にも辞退させていただいたと思いますが……」
「それでもだ。お前の技術は、国のためにあるべきだ」
そう、俺が卒業する際に軍からの勧誘もあったのだ。
なんか俺を入れるように圧力があったようだが、アンが俺の意思を尊重して止めてくれた。
「お言葉ですが、後進の育成は国のためになると思いますし。いざとなれば我々も出ることになるじゃないですか」
学園に努めている先生は手練れが多い。
よって戦争などが起こった場合、召集されることも少なくないのだ。
「もう、あなた。今日はそんなことを話しに来たわけじゃないでしょう」
「む、すまん」
となると。
「ウィルのことですか?」
「流石に察しが早いわね」
「あの子は自分の能力を卑下している節があるわ。なんでもそつなくこなす割に、自分はそれ以上のことは出来ないと諦めてしまっているわ」
「確かに、わからなくもないです」
「私は、あの子はもっと出来ると思うの。だから、ライヤ先生に育てて欲しいのよ」
「善処します……」
ただの親バカというわけではなく、俺も感じていることだから一笑に付すことができない。
でもなー。
どうすればいいのだろうか。
「そうそう、シャロンちゃんのことなのだけど」
「はい。そういえば王妃様がうちを紹介したのでしたよね」
「え? なにその話。私聞いてないわよ?」
「アンには言ってないもの。ライヤ君の教え子の1人が私の姪なのよ。休日にライヤ君の家に行くように言ったのだけれど、この前行ったようね?」
「いきなりだったのでびっくりしましたよ」
「先生とお出かけしたって喜んでたわ。あの子も素養は中々だから、しっかりと育ててあげてね」
「先生ですから。頑張りますよ」
「あの小娘……。いつの間に……」
真横でぎりぎりと歯ぎしりのような音が聞こえる気がするが気のせいだろう。
王女が歯ぎしりなんてするわけないもんな。
「とにかく、今日はお疲れ様。ここは私たちがもつから、たくさん食べてね」
「恐縮です」
高級店にふさわしく、美味ではあったのだが、ちょっと王様の圧が強すぎていまいち覚えていない。
もったいないことした……。
「そんなことがあったんだねー」
「おかげで気も休まらなかったんですよ……」
「まぁ、その点ここにいたらだらけていいからねー。結婚すればこんなに癒し効果のある私がいつでも出迎えて……」
「そんな感じで今日は疲れたのでもう風呂に入って寝ようかと思います。ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様です」
食器を流しに片付けてから部屋へと向かい、とりあえず布団に倒れ込む。
決闘は本当にあれでよかったのか……?
あれでちゃんとゲイルが学校に来るようになるのだろうか。
もっといい決着があったのではないか。
そんなことばかりが頭をよぎる。
こういう時は風呂に入ってさっぱりするに限る。
「ふぅー……」
ガラガラ。
「お邪魔するよー」
「んー、はい!?」
ちょっと反応が遅れた!
目を開けると、そこにはフィオナさんが立っていた。
ここお風呂ですけど!?
「どうやってここに!?」
「ふふふ。私が本気を出せば気づかれずに部屋に侵入するくらいのことは可能なのだよ」
S級(クラス)の力をこんなところで発揮しなくていいだろ!
「普段ならライヤは警戒してるから難しいけどねー。お風呂の時は比較的警戒が緩くなるからねー」
「まずなんで俺のお風呂の時間を把握しているのか聞きたいですけど……」
「愛の力よ!」
無茶苦茶だ。
「一応、水着を着ていることは評価しましょう」
今にも零れ落ちそうな状態とかいうのは置いておくとして、だ。
絶対サイズあってない。
もはや狙っているのか?
「ただ、俺なにも着てないんですけど!?」
「大丈夫だよー。ほら、夫婦になったら毎晩のように見るわけでー……」
「仮定が間違ってますから!」
ガキッ!
バタンッ!
俺の部屋のドアの鍵が壊れてぶち開けられる音がした。
「この痴女めー!」
「あら? 思ってたより早かったわねー」
予想通りアンだったが、とりあえず言わせてほしい。
ここは俺の部屋の、それも浴室なんだが!?
率直な疑問である。
ゲイルとの決闘が終わり、珍しくアンが労ってくれるというからついて行った。
特に予定もないのはいつものことなのだが、連れていかれた先は貴族御用達の高級料理店だった。
周りに格式高そうなお店が増えてたから予想はしてたが、いざお店の前について逃げようとしても時すでに遅し。
アンに腕を掴まれ連れて行かれた。
まぁ、そこまでは良かった。
俺に金はないし、労ってくれると言ってるから奢ってもらえるのかなくらいにしか思ってなかった。
「ようこそ、いらっしゃいました」
「うん、じゃあ、席に案内して」
「かしこまりました」
店に入る瞬間に変装を解いたアンは常連のようだ。
案内された先は広めの6人くらいが想定された個室。
なぜ2人なのにこんな広いのかなーと楽観的に考えていたのだが、答えは部屋の中に待っていた。
「まぁ、座れ」
「はい……」
なんとそこには国王夫妻その人たちがいたのだ。
扉を開け、固まった俺だが、国王の一言で座ることを余儀なくされた。
一介の教師である俺に国王に逆らう術などない……。
「こうやって話すのは久しぶりね! 元気だったかしら?」
「まぁ、ぼちぼちやってます。王妃様もお元気そうで……」
ウキウキした様子の王妃様に話しかけられる。
寡黙な王様と違い、王妃様はほわほわしたお話し好きな方だ。
初めこそ硬めの言葉を使って話していらしたのだが、俺がアンに城に連れていかれることが多く、よく話すようになってから砕けた言葉遣いをされるようになった。
俺はいまだに慣れないが。
「今日も見に行ってたわよ? この人はちゃんと公に行ってたけど、私はお忍びでね? 見ててとても楽しかったわー」
「存じておりましたよ。ともかく、楽しんでもらえたなら良かったです」
「あら? 言ってたかしら?」
「いえ、魔力の質で……」
「流石ねー。相手の魔力で誰かを判断するなんてよっぽど魔力制御の感応に突出していなければできないもの」
「いえいえ」
「でも、ライヤ。ゲイルの攻撃を受ける必要はあったの? ライヤならゲイルに何もさせずに完勝できたでしょう?」
「いや、あれは正解だよ。一応向こうの面子も保てるし、今回の決闘は授業参観も兼ねてるから。生徒の実力を見せないと意味がないだろ?」
「それはそうでしょうけど……」
「だから、俺の力を見せるために雷の龍も作ったんじゃないか」
アンが俺の処遇を憂いてくれているのはわかってたからな。
これで少しは舐められることもなくなればいいんだけど。
「……惜しいな」
最初の一言を除いてここまで沈黙を貫いていた王様がここで発声する。
「やはり、王国軍には来ないか」
「以前にも辞退させていただいたと思いますが……」
「それでもだ。お前の技術は、国のためにあるべきだ」
そう、俺が卒業する際に軍からの勧誘もあったのだ。
なんか俺を入れるように圧力があったようだが、アンが俺の意思を尊重して止めてくれた。
「お言葉ですが、後進の育成は国のためになると思いますし。いざとなれば我々も出ることになるじゃないですか」
学園に努めている先生は手練れが多い。
よって戦争などが起こった場合、召集されることも少なくないのだ。
「もう、あなた。今日はそんなことを話しに来たわけじゃないでしょう」
「む、すまん」
となると。
「ウィルのことですか?」
「流石に察しが早いわね」
「あの子は自分の能力を卑下している節があるわ。なんでもそつなくこなす割に、自分はそれ以上のことは出来ないと諦めてしまっているわ」
「確かに、わからなくもないです」
「私は、あの子はもっと出来ると思うの。だから、ライヤ先生に育てて欲しいのよ」
「善処します……」
ただの親バカというわけではなく、俺も感じていることだから一笑に付すことができない。
でもなー。
どうすればいいのだろうか。
「そうそう、シャロンちゃんのことなのだけど」
「はい。そういえば王妃様がうちを紹介したのでしたよね」
「え? なにその話。私聞いてないわよ?」
「アンには言ってないもの。ライヤ君の教え子の1人が私の姪なのよ。休日にライヤ君の家に行くように言ったのだけれど、この前行ったようね?」
「いきなりだったのでびっくりしましたよ」
「先生とお出かけしたって喜んでたわ。あの子も素養は中々だから、しっかりと育ててあげてね」
「先生ですから。頑張りますよ」
「あの小娘……。いつの間に……」
真横でぎりぎりと歯ぎしりのような音が聞こえる気がするが気のせいだろう。
王女が歯ぎしりなんてするわけないもんな。
「とにかく、今日はお疲れ様。ここは私たちがもつから、たくさん食べてね」
「恐縮です」
高級店にふさわしく、美味ではあったのだが、ちょっと王様の圧が強すぎていまいち覚えていない。
もったいないことした……。
「そんなことがあったんだねー」
「おかげで気も休まらなかったんですよ……」
「まぁ、その点ここにいたらだらけていいからねー。結婚すればこんなに癒し効果のある私がいつでも出迎えて……」
「そんな感じで今日は疲れたのでもう風呂に入って寝ようかと思います。ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様です」
食器を流しに片付けてから部屋へと向かい、とりあえず布団に倒れ込む。
決闘は本当にあれでよかったのか……?
あれでちゃんとゲイルが学校に来るようになるのだろうか。
もっといい決着があったのではないか。
そんなことばかりが頭をよぎる。
こういう時は風呂に入ってさっぱりするに限る。
「ふぅー……」
ガラガラ。
「お邪魔するよー」
「んー、はい!?」
ちょっと反応が遅れた!
目を開けると、そこにはフィオナさんが立っていた。
ここお風呂ですけど!?
「どうやってここに!?」
「ふふふ。私が本気を出せば気づかれずに部屋に侵入するくらいのことは可能なのだよ」
S級(クラス)の力をこんなところで発揮しなくていいだろ!
「普段ならライヤは警戒してるから難しいけどねー。お風呂の時は比較的警戒が緩くなるからねー」
「まずなんで俺のお風呂の時間を把握しているのか聞きたいですけど……」
「愛の力よ!」
無茶苦茶だ。
「一応、水着を着ていることは評価しましょう」
今にも零れ落ちそうな状態とかいうのは置いておくとして、だ。
絶対サイズあってない。
もはや狙っているのか?
「ただ、俺なにも着てないんですけど!?」
「大丈夫だよー。ほら、夫婦になったら毎晩のように見るわけでー……」
「仮定が間違ってますから!」
ガキッ!
バタンッ!
俺の部屋のドアの鍵が壊れてぶち開けられる音がした。
「この痴女めー!」
「あら? 思ってたより早かったわねー」
予想通りアンだったが、とりあえず言わせてほしい。
ここは俺の部屋の、それも浴室なんだが!?
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