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教師1年目
偉い人特有
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アンネは一度エグイ殺気を出した後は恙なく授業を進めた。
というか、あの殺気でビビりあがったウィル以外の皆が非常に静かだったため、問題など起こりようもなかった。
ウィルが普段通りだったのは流石と言うべきか。
「さ、帰りましょう、ライヤ」
「え、そうなの?」
「なに? 私と帰るのがそんなに嫌なの?」
「いえ、滅相もございません」
「そ。なら大人しく一緒に帰りなさいよ」
そもそもこいつに対抗する手段など持ち合わせていないのだ。
下手なことをすると王家の子供に各自存在する親衛隊に何をされるのかわからない。
特に、王子よりも王女の親衛隊の方が過激な方向に走りやすい。
男性が多いというのはあるだろうが、それにしてもだ。
「ライヤ先生」
「ん? なんだ、ウィル」
帰ろうとしているとティムとエウレアを連れたウィルが現れた。
「すみませんが、あなたたち、少し離れててもらえますか?」
「そんな! 我々の使命はウィル様をお守りすることですよ!」
「でも……、ウィル様の命令だから……」
食い下がるティムをエウレアが引っ張っていく。
ウィルが何も言わないところを見ると、日常茶飯事なのかもな。
「では、本題です」
2人が離れたのを見計らってウィルが話し始める。
「お姉さま、このようなところで何をしておいでで?」
俺は顔には出さないが、心の中でぎくりとする。
いずればれるとは思っていたがこんなに早いか……?
「な、なんのことですか? 私なんかと麗しいアン王女を比較してはいけませんよ」
なんか無意識に自分のこと持ち上げてない?
「そ、そうだぞ。アンは一応お姫様だぞ? こんなところで働いているわけがないだろ? 城で公務をこなしているはずだろ?」
「それはそう聞いているのですけど……。私は実際に見たことがありませんので」
「へぇ、そうなのか」
俺はウィルに気取られないようにチラリとアンを見る。
すっと視線を外すアン。
こもって政務をしているのか、そもそもしていないのかのどちらかだとは思ったが、この反応から察するに後者だなこれ。
第1王女としていかがなものか。
「そうですよね。国の第1王女たるアンお姉さまがこのようなところで油を売っているわけもございません。失礼いたしました、アンネ先生」
「いえ、気にしないでね」
「本当にごめんなさい。先生の発した殺気があまりにもお姉さまと似ていたもので……」
アンは内心冷や汗ダラダラだろう。
無理言ってこんなところで働いてるんだ。
身から出た錆とでもいうか。
というか、判断材料が殺気て。
普段からどんな生活送ってるんだよ。
「さ、さぁ、ライヤ。帰りましょう」
少々ぎこちない足取りで帰路に就くアンネ先生。
「じゃあ、ウィル。また明日学校でな」
「はい、先生さようなら」
ウィルが踵を返し、ある程度進むと後ろにスッとティムとエウレアがつく。
うーん。
訓練されてるなぁ。
あれ?
「アンにはああいう奴いたっけ?」
「え? あぁ、護衛のこと? いたことはいたわよ? ただ、確かにライヤといるようになってからいなくなってたわね。どうしてかしら?」
いなくなってた、か。
ってことは生徒じゃなかったのかもな。
S級(クラス)に途中で抜けたやつなんかいなかったし。
いや、俺の交友関係が狭すぎて知らなかっただけとかいう説は受け付けない。
そんなわけない、よな?
しかし、俺といるようになってからいなくなった、か。
謎だな。
俺が護衛になったって話なら簡単なのだが。
あいにくとそんな記憶はない。
そもそも授業中とか他の級(クラス)だし。
まぁ、他の時間は似たようなことやらされてたけど。
アンを攫おうとする輩を撃退したのも1度や2度ではない。
「で、なんで今日は一緒に帰ろうとか言いだしたんだ?」
「べ、別にいいじゃないの。そんなことは。そんな日もあるわ」
「つっても俺の家はすぐそこなんだが」
アンがカッと赤くなる。
「しっかりと私を家まで送り届けなさい!」
「へいへい……」
まぁ、学生時代に戻ったと思えばそんなもんである。
「初出勤はどうだった?」
「そうね。自分では思っていたよりも緊張せずに授業できていたと思うわ。及第点はあげられそう」
「それから?」
「ウィルにばれそうになったのはいただけないけど、誤魔化せていたからよしとしましょう」
「……それから?」
「? 他に何かあるかしら?」
こいつ、ゲイルにあんな殺気を放ったのがなかったことになってやがる……。
「ほら、なんかあったじゃん。授業の最初にさぁ……」
「?」
キョトンって顔をするアン。
ダメだこりゃ。
「俺の勘違いだった。忘れてくれ」
「そうでしょう? 昔からライヤはそういうことが多いわよね。どうしてかしら」
お前のせいだよ!
声を大にして言いたいが、往来なのでやめておく。
人ごみにいるため、アンと言っても大丈夫なところがいい。
まず聞かれないし、聞かれたとしてもアンなんて比較的よくある名前だからな。
問題ない。
「ねぇ、ライヤ! あれは何かしら!」
とてててて、とアンが屋台に寄っていく。
昔から少しでも興味をそそられると近づいていくんだよな。
「いらっしゃいませ。お飲みになりますか?」
「これは何かしら?」
「これはですね……」
「芋のデンプン質を利用して作った餅のようなものを入れたドリンクだな。賛否両論あるが、食感は他のものにはないようなものだ」
「ちなみに、ライヤは賛否どっちなの?」
「俺は好きだな」
俺がスラスラと答えると、お店のお姉さんが目を丸くする。
こういう店の店員さんって大抵女性だよな。
「お客さん、お詳しいんですね……」
「そうよ。ライヤは何でも知っているもの!」
「なんでもは知らないよ……。てかなんでお前が自慢げなんだ」
毎回このやり取りでは某ライトノベルのキャットだったりする翼さんが思い浮かび、言いそうになるのだが寸前で踏みとどまっている。
なんか言っちゃダメな気がする。
「んー! 美味しいー! ありがとね、ライヤ!」
「どういたしまして」
もちろん俺の奢りなわけだ。
イタリアにあるような噴水の広場のベンチに腰掛け、タピオカ(?)に舌鼓を打つ。
前の世界ならキャッサバっていう芋から作られているはずだが、こちらでは違うらしい。
まぁ、全く同じものがあるのもおかしいとは思うが。
よって、食材からなにまで似ているようで実は違うものが普及している。
「でも、決闘なんて本当にするの? 基本的に平和主義者のあなたが」
「基本的にってなんだ。俺はいつでも平和主義だ」
「でも、本気を出すわけじゃないのよね?」
「当たり前だろ? いい塩梅で戦うつもりだ」
「それはそれで勝っても舐められそうね……。まぁ、そうなればこちらにも考えがあるわ。安心して戦いなさい」
「なんの考えだよ……」
負けられない戦いがここにはある。
というか、あの殺気でビビりあがったウィル以外の皆が非常に静かだったため、問題など起こりようもなかった。
ウィルが普段通りだったのは流石と言うべきか。
「さ、帰りましょう、ライヤ」
「え、そうなの?」
「なに? 私と帰るのがそんなに嫌なの?」
「いえ、滅相もございません」
「そ。なら大人しく一緒に帰りなさいよ」
そもそもこいつに対抗する手段など持ち合わせていないのだ。
下手なことをすると王家の子供に各自存在する親衛隊に何をされるのかわからない。
特に、王子よりも王女の親衛隊の方が過激な方向に走りやすい。
男性が多いというのはあるだろうが、それにしてもだ。
「ライヤ先生」
「ん? なんだ、ウィル」
帰ろうとしているとティムとエウレアを連れたウィルが現れた。
「すみませんが、あなたたち、少し離れててもらえますか?」
「そんな! 我々の使命はウィル様をお守りすることですよ!」
「でも……、ウィル様の命令だから……」
食い下がるティムをエウレアが引っ張っていく。
ウィルが何も言わないところを見ると、日常茶飯事なのかもな。
「では、本題です」
2人が離れたのを見計らってウィルが話し始める。
「お姉さま、このようなところで何をしておいでで?」
俺は顔には出さないが、心の中でぎくりとする。
いずればれるとは思っていたがこんなに早いか……?
「な、なんのことですか? 私なんかと麗しいアン王女を比較してはいけませんよ」
なんか無意識に自分のこと持ち上げてない?
「そ、そうだぞ。アンは一応お姫様だぞ? こんなところで働いているわけがないだろ? 城で公務をこなしているはずだろ?」
「それはそう聞いているのですけど……。私は実際に見たことがありませんので」
「へぇ、そうなのか」
俺はウィルに気取られないようにチラリとアンを見る。
すっと視線を外すアン。
こもって政務をしているのか、そもそもしていないのかのどちらかだとは思ったが、この反応から察するに後者だなこれ。
第1王女としていかがなものか。
「そうですよね。国の第1王女たるアンお姉さまがこのようなところで油を売っているわけもございません。失礼いたしました、アンネ先生」
「いえ、気にしないでね」
「本当にごめんなさい。先生の発した殺気があまりにもお姉さまと似ていたもので……」
アンは内心冷や汗ダラダラだろう。
無理言ってこんなところで働いてるんだ。
身から出た錆とでもいうか。
というか、判断材料が殺気て。
普段からどんな生活送ってるんだよ。
「さ、さぁ、ライヤ。帰りましょう」
少々ぎこちない足取りで帰路に就くアンネ先生。
「じゃあ、ウィル。また明日学校でな」
「はい、先生さようなら」
ウィルが踵を返し、ある程度進むと後ろにスッとティムとエウレアがつく。
うーん。
訓練されてるなぁ。
あれ?
「アンにはああいう奴いたっけ?」
「え? あぁ、護衛のこと? いたことはいたわよ? ただ、確かにライヤといるようになってからいなくなってたわね。どうしてかしら?」
いなくなってた、か。
ってことは生徒じゃなかったのかもな。
S級(クラス)に途中で抜けたやつなんかいなかったし。
いや、俺の交友関係が狭すぎて知らなかっただけとかいう説は受け付けない。
そんなわけない、よな?
しかし、俺といるようになってからいなくなった、か。
謎だな。
俺が護衛になったって話なら簡単なのだが。
あいにくとそんな記憶はない。
そもそも授業中とか他の級(クラス)だし。
まぁ、他の時間は似たようなことやらされてたけど。
アンを攫おうとする輩を撃退したのも1度や2度ではない。
「で、なんで今日は一緒に帰ろうとか言いだしたんだ?」
「べ、別にいいじゃないの。そんなことは。そんな日もあるわ」
「つっても俺の家はすぐそこなんだが」
アンがカッと赤くなる。
「しっかりと私を家まで送り届けなさい!」
「へいへい……」
まぁ、学生時代に戻ったと思えばそんなもんである。
「初出勤はどうだった?」
「そうね。自分では思っていたよりも緊張せずに授業できていたと思うわ。及第点はあげられそう」
「それから?」
「ウィルにばれそうになったのはいただけないけど、誤魔化せていたからよしとしましょう」
「……それから?」
「? 他に何かあるかしら?」
こいつ、ゲイルにあんな殺気を放ったのがなかったことになってやがる……。
「ほら、なんかあったじゃん。授業の最初にさぁ……」
「?」
キョトンって顔をするアン。
ダメだこりゃ。
「俺の勘違いだった。忘れてくれ」
「そうでしょう? 昔からライヤはそういうことが多いわよね。どうしてかしら」
お前のせいだよ!
声を大にして言いたいが、往来なのでやめておく。
人ごみにいるため、アンと言っても大丈夫なところがいい。
まず聞かれないし、聞かれたとしてもアンなんて比較的よくある名前だからな。
問題ない。
「ねぇ、ライヤ! あれは何かしら!」
とてててて、とアンが屋台に寄っていく。
昔から少しでも興味をそそられると近づいていくんだよな。
「いらっしゃいませ。お飲みになりますか?」
「これは何かしら?」
「これはですね……」
「芋のデンプン質を利用して作った餅のようなものを入れたドリンクだな。賛否両論あるが、食感は他のものにはないようなものだ」
「ちなみに、ライヤは賛否どっちなの?」
「俺は好きだな」
俺がスラスラと答えると、お店のお姉さんが目を丸くする。
こういう店の店員さんって大抵女性だよな。
「お客さん、お詳しいんですね……」
「そうよ。ライヤは何でも知っているもの!」
「なんでもは知らないよ……。てかなんでお前が自慢げなんだ」
毎回このやり取りでは某ライトノベルのキャットだったりする翼さんが思い浮かび、言いそうになるのだが寸前で踏みとどまっている。
なんか言っちゃダメな気がする。
「んー! 美味しいー! ありがとね、ライヤ!」
「どういたしまして」
もちろん俺の奢りなわけだ。
イタリアにあるような噴水の広場のベンチに腰掛け、タピオカ(?)に舌鼓を打つ。
前の世界ならキャッサバっていう芋から作られているはずだが、こちらでは違うらしい。
まぁ、全く同じものがあるのもおかしいとは思うが。
よって、食材からなにまで似ているようで実は違うものが普及している。
「でも、決闘なんて本当にするの? 基本的に平和主義者のあなたが」
「基本的にってなんだ。俺はいつでも平和主義だ」
「でも、本気を出すわけじゃないのよね?」
「当たり前だろ? いい塩梅で戦うつもりだ」
「それはそれで勝っても舐められそうね……。まぁ、そうなればこちらにも考えがあるわ。安心して戦いなさい」
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