一妻多夫の奥様は悩み多し

たまりん

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一章

6話

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あっという間に婚約期間が過ぎ無事に結婚式の日を迎えた。美琴はその間に15歳の誕生日を迎えていた。

神前式を終え、帝国ホテルの会場に移動して披露宴を行った。両家の出席者は良家同士の結婚というだけあって錚々たる顔ぶれだった。世間をあまり知らない美琴にはよくわからなかったが…。



その日、清鷹と美琴は皆から盛大な祝福を受けたのだった。



2次会のおひらきまで滞りなく済ませ特にホテルに泊まることもなく、2人で新居に帰宅した。

美琴達は特にハネムーンには行かない。
清鷹が美琴との結婚生活を盤石にするためにも仕事に集中したいと言うからだ。美琴自身もお見合い結婚だし新婚生活は慣れるまでが大変だろうから正直今、旅行に行かなくてもいいだろうと言うのが正直なところだったのでホッとした。

美琴は業者に頼んだ移送作業が済んだ清鷹との新居である賃貸マンションに一週間前ほどから出入りして清鷹や家族の手を借りながら新婚生活の準備をしていた。骨の折れる作業だったけれど、もう結婚して人妻になるのだから甘えてはいられない。
本当はもっと早くから同棲の話が出ていたが、何故か兄月良が式前の同棲に大反対して話が流れた。
結果、式の直前まで忙しくて大変な羽目に遭った。大方片付いて住める状態にはなっているが。
清鷹が新居に泊まり込んで片付けを進めてくれる日もあった。美琴は頭が下がる思いである。

間宮の家のお祖父様が所有する土地に新築を建てようというのが清鷹の父からの提案だったが、時間がかかる上に新婚早々新築というのは美琴にとって荷が重い。

(使いこなせないし管理が大変。それに当分は2人きりだろうし…はあ、疲れた。)

初めて新居に帰宅して衣装を脱ぎ、簡単な部屋着に着替えて美琴は少し寛ごうとしていた。

清鷹には先にお風呂に入ってもらっいる。

(お酒抜けてないのにお風呂入らせちゃったの危なかったかも…これから気をつけないと)

妻としてまだまだ至らないのは仕方ない。


(僕失礼な振る舞いとかしなかったよね?皆僕のこと注目して緊張した~。まあ花嫁だから当然か…それにしても久しぶりに小早ちゃんに会えてよかったな)

披露宴には美琴の数少ない親しい友人の大林小早おおばやしこはやもその付き添いの婚約者と共に来てくれた。ドライな性格の小早は、
「美琴ちゃんに幸運にも選ばれたんだから旦那のことせいぜい尻に敷いてやりなよ」
と美琴にそっと耳打ちして満面の笑みでおめでとう、と言ってくれた。小学校を卒業してからはなかなか会えなかったが心から喜んでくれているようだった。


(清鷹さんの親族の方達も全員出席してくれたし皆祝福してくれてるみたいでよかった…)


清鷹の家族には式前には両親にしか会えなかったため、美琴はもしや親族兄弟の誰かから反対でもされているのでは、と余計な心配をしていた。一生懸命に猫を被ってはいるが本当はへなちょこのちんちくりんなのがバレて噂になっているのかも知れない。当日、もちろんそんなことはなく皆一様に朗らか様子で祝ってくれたので安心した。
特に清鷹の祖父は披露宴では赤ら顔で酒を煽り、終始めでたやのテンションだった。

ひとつ気になるとすれば、結納の際、清鷹が席を外している時に清隆の母、清が美琴に
「まあ、結婚したらよく見てやっておくれ。気難しいんだよ、あの子…」
とどこか憂い帯びた表情で呟いたことだった。

(清鷹さんもお義母さまのことはあまり話さないし…)

まあ、式披露宴では楚々として祝っていてくれたが。









前夜は実家で過ごしたが緊張でよく眠れなかった。疲れが溜まっている美琴は真新しいダブルベットの端に腰を下ろした。

(今日は披露宴のあとにサービスの軽食を食べたから簡単な夜食を用意すればいいよね…)

座っていたら急な眠気が美琴を襲いうつらうつらしながら少し横になろうか迷った。


「美琴…?起きてるのか?疲れただろう、横になっていてよかったのに。」


「あ、清鷹さん…」

(早い…もう出たんだ…)

最近清鷹には美琴から頼んで呼び捨てにしてもらっている夫婦になるのだからいつまでも他人行儀では駄目だという理由で。

疲れきっている美琴とは裏腹に清鷹は大変機嫌が良く上気しているようだった。


「美琴、今日の君の白無垢姿に綿帽子姿は本当に美しかった…こんなに幸せな日は生まれて初めてだ」


(清鷹さん…?どうしたんだろう何だか大袈裟だな…結婚写真の前撮りでも着たのに)


「清鷹さんの紋付袴姿もすごく格好良かったですよ」

「ありがとう」

清鷹が笑みをみせる。

「ふふ…清鷹さんて、笑うとお義父さまにそっくり…」

清鷹の笑みがふと崩れて憂いおびた表情を見せた。


「…この顔は嫌いか?」


「…?まさか!」


何か変なことを言ってしまっただろうか、褒めたつもりだった美琴は困惑した。


「僕は、その…清鷹さんのその笑顔が初めて見た時から好きで……この人が初めての夫になってくれたらと…その…」


美琴はあまりの恥ずかしさに言い淀み顔を赤らめ俯いた。

何か怒らせてしまったのだろうか、清鷹は無言のまま立っていた。

清鷹がそっと歩みよりベッドに腰を下ろす。美琴が気まずい沈黙を破ろうと顔を上げると清鷹の腕が美琴の身体を包み込んだ。


「そう、俺は君の初めての夫だ…」

耳元で清鷹が囁く。美琴は心臓が高鳴るのを感じた。


そっと肩を捕まえて美琴の身体を少し引き離しその長い指で顎を捉えると見上げる美琴を清鷹は真っ直ぐに熱がこもった眼差しで見つめ自らに言い聞かせるように、

「式の日まで我慢したんだ…もう、いいだろう…」


と呟いた。


(…?)


清鷹の唇が美琴の可憐な紅い花唇に重なった。









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どうしようか悩んだけれど新婦は普通に白無垢にしました。



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