あーきてくっちゃ!

七々扇七緒

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☆6話:なんだこれ?屋根から伸びる謎の筒

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「よ~し、『さっぽろ建物巡りツアー』で行く場所は決定~!! ということで、ねぇねぇ。この旧校舎の3階にテラスあるの知ってる? あったかくなってきたしさぁ、みんなで紅茶持って、優雅なティータイムしない?」
 
 画用紙を壁にテープで貼り付けたうららは、テーブルの上に広げてある3階平面図に記載のあるルーフバルコニーを指した。3階建ての旧校舎は、2階の一部分がセットバックしており、冬季以外はテラスとして利用されている。
 
「わぁっ☆ うららっち、ナイスアイディア!! さっそく紅茶入れなおすね~」
 
 チューリップが描かれたティーポットを持って、フフンと鼻歌交じりにキッチンへ向かった志帆。上機嫌な志帆とは裏腹に、海巳とセリナは腕組をしながら眉を寄せている。
 
「テラスが公開されるのって、6月からじゃなかったっけ? たしかクラスでよく自撮りしてる女子たちが、『6月になったらテラスで映え~』って言ってた気がする」
 
「わたくし、職員室で『今年はテラスを改修工事する』って聞こえたんです。新校舎のことなのか、旧校舎のことなのかわかりませんが、確かではないので一度3階まで見に行ってみませんか?」
 
「うむ。私とセリナで一回テラスが使えそうか見に行ってくるから、うららと志帆はここで待ってておくれ」
 
 今一度平面図を見て、海巳とセリナはテラスの位置を頭に入れた。廊下の突き当たりに階段があり、3階まで上ったらすぐ正面の窓からテラスが見えるはずだ。うららと志帆とガウディくんに紅茶淹れの任務を託し、海巳とセリナは手を振りながら部室を後にした。
 
「ミミちゃんは、図面とか覚えるの得意そうですよね。ほら、バイオハザードとかマップ出てくるじゃないですか!」
 
「うむ。割と得意な方だと思うぞ。セリナ、みろ。あそこの角を曲がると階段だけど、絶対あーいったところにゾンビがいるんだよ」
 
「も~っ! ミミちゃんったら、本当にゲーム脳なんだから。でもわたくし、驚きませんよ! だって、この世界はゲームの世界ではなく、現実世界だか、ら……」
 
 突き当りで右に曲がった海巳とセリナは、階段の手前にいる人間のようなものを見て唾をのんだ。バイオハザードに出てくるゾンビのような、化物という言葉が相応しいものがゆっくりと振り返ったのだった。
 
「ぎゃあああああああああああ!!!!!!」
 
 目を見開いた海巳とセリナが叫び声をあげると、ゾンビのような化物もビクッと身体を大きく震わせて声を張り上げた。
 
「うわああああ!!! びっくりしたぁ!!!」
 
 顔からゴムマスクを剥がした人物は、志帆と同じクラスにあたる、1年B組の福住ふくずみレイカだった。ゴムマスクで顔を覆っていたからか、額や鼻の下で大きな汗の粒が光っている。ミモザのように華やかな髪を揺らしながら、耳たぶまで顔を真っ赤にしながらジリジリと後退している。
 
「……ち、ちがうの。これはね、演劇部の練習をしてただけなんだからーーー!!」
 
 レイカは2人に隙を与える間もなく、階段を駆け上って去っていった。あっという間の出来事に呆然とした海巳とセリナは、「一体何だったんだ?」という視線を交し合った。
 
「はぁ。一本取られちゃって悔しいけど、テラス目指して先へ急ごう」
 
「はぁ、びっくりしましたぁ……。心臓がまだドキドキ鳴ってます~」
 
 一歩階段を上るたび、絨毯のフワフワした感覚が足裏に伝わってくる。ステンドクラスを透過した光と、絨毯の濃緑色が重なり、階段の床や壁が抽象画のようになって見える。Uの字になっている手摺も、真鍮で作られていてクラシカルな雰囲気を演出している。
 
「もう少しで3階。新校舎に劣らず、旧校舎も立派なもんだねー」
 
「そうですねぇ~。大正浪漫みたいな雰囲気でウキウキしちゃいます~」
 
 階段を上りきるとウッドテラスが見える――はずだったが、外へと通じる扉には『改修工事のため立入禁止』との文字が書いてあるポスターが貼られていた。既にウッドデッキが撤去されたため、今は灰色一色の味気ない場所となっている。しかし、その灰色の中で、海巳は銀色に光る謎の物体を発見した。
 
「セリナ!! あれ……銃の先端じゃない!?」
 
 海巳が指す方へ目を向けたセリナ――そこには、屋根から突き出た銃の先端ような、今にも銃弾が発射されそうな謎の物体が何本もあったのだった。口をアワアワと震わせた海巳とセリナは、じりじりと後退しながら大声で叫んだ。
 
「バーイオハザーーード!!!!!」

レイカ


屋上の謎の筒


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