あーきてくっちゃ!

七々扇七緒

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☆5話:GWは現場へGO!!

5-6

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「わぁ~~!! すごいっていう言葉しか出てこないくらいすっご~い!!」

 安全通路を通りながら鉄骨階段で5階まで上ると、力強い音や職人たちの声が地上にいた時よりも心臓に直接響いてくる。足元が悪いスラブ鉄筋の上に敷かれている、歩行用仮設材のメッシュロード上を慣れない足つきで歩いていく。

「は~い、皆さん! これが、コンクリート打設真っ最中の様子です。うちの現場は『ハーフPC工法』といって、既に工場で作られた柱・梁・床を現場でブロックみたいに組み立てて、それをつなぎ合わせるように鉄筋を組んでコンクリートを打設する、という工法で建物を作っています。そして今まさに、床にコンクリートを流し込んでいく作業を行っているんですねぇ。ほら、あの黒いホースを持っている職人さんを見てごらん!」

 ユリナが指した方に目を向けると、コンクリートが勢いよく流れ出ているホースの向きを手際よく調整している職人がいた。黒いホースを目で追っていた志帆は、地上に停まっていたポンプ車の先端と合体していることにいち早く気付いた。

「なるほど~! 地上からポンプ車を通って、ホースへ送られたコンクリートがこうやって出てきてるんだね」

 志帆の気付きに対し、ユリナは指先で丸印をつくってみせた。

「そうっ!! そのとおり!!」

「ユリナお姉さま、ひとつ質問です。この建物は30階建てとのことですが、ポンプ車って30階まで届くのでしょうか? もっとも~っと高い建物の場合、どうやってコンクリートを運ぶのでしょうか?」

「おっ、セリナ~。いい質問じゃないか! ポンプ車にも長さの限界があって、高層の建物だと届かなくなります。そういうときは『配管』って呼ばれる長い筒を何本もつなげて、高い位置までコンクリートを持ってくる方法があるんだよ。この方法は高層の建物だけじゃなくて、敷地が狭くてどうしてもポンプ車を配置できないときにも使われる方法なんだよ」

「そうなんですね~! さすが、ユリナお姉さまの説明はわかりやすいですっ!」

「ふふふ。ん~じゃあ、少し難しい問題をだしてみよう。ホースを持っている職人さんの横に、黒くてながーい棒みたいなものを持っている人が2人いるよね? この棒は、何をするためのものでしょうか?」

 はてなマーク状態になっている目を、再び職人たちへ向けた4人。10人弱いる職人のうち、長い棒状の機械を持った人が2人いる。

「見た目はすっごく大きなポッキーみたいだけど……お菓子作りの時みたいな発想で、もしかしてコンクリートを混ぜて空気を送ってるとかでしょうか?」

「志帆、それ私も思った。黒いがグルグル回転してかき混ぜてるのかなーって思った」


《ウミネコ、北海道弁丸出しーーーっっっ!!!!!》※ぼっこ=棒という意味の北海道弁です※


「わたくし、コンクリートから引き上げているところ見ましたけど、釣りたての魚みたいにピチピチ動いているわけではなさそうでしたよ」

「え゛っピチピチ!? 機械に見えて実は生きてる!? あの黒いのから、ウ゛ーーーって唸り声聞こえるの気のせい!?」


《一体、何の話やねーーーんっっっ!!!!!》


「ちょっと難しかったかな? でも、志帆ちゃん・海巳ちゃんペアはいい線いってたよ。答えは、余分な空気や水分を抜くためでした! コンクリートって運搬するときや、打設するときに余計な空気が入るの。この余分な空気を抜くことで、砂とかセメントが均一化されて、コンクリート本来の強度・水密性・耐久性を引き出すことができるんだよ。あとは、振動によって鉄筋の付着力が増加したり、型枠内に均一的にコンクリートを充填する大事な役割があるんだよ~。ちなみにあの棒は、『バイブレーター』と呼ばれる機械です」

 ひと通りの説明を受けたあと、バイブレーターがなかった時代はを使っていたことを補足され、4人はさらに目を丸くした。竹の節が生コンクリート中の気泡を抜いて、密実なコンクリートをつくるため、現在でもコンクリート打ち放しの壁を打設する際に用いられることがある。

「そういえば、うららちゃんが言ってた『ウ゛ーーーー』っていう唸り声みたいな音は、バイブレーターの振動音です。いい着目点だね!!」

 いつもなら褒められると、照れながらはしゃぐうららが大人しいため、隣に立っている海巳は心配そうに眉を寄せた。

「うらら? どうした?」

 切なげな顔をしたうららは、懸命にコンクリートを打設する職人たちを見ながら言った。

「『建物は一人じゃつくれねーんだ。一つの建物にはな、何人もの人の力が宿ってんだ』って、いっつもうちの父ちゃんが言っててさぁ。それをね、ふと思い出しちゃったんだ。こうやって何人もの職人さんたちが、頑張って建物を作ってくれてるんだなぁって」

 ひこうき雲が映える真っ青な空の下で、額を覆う汗がキラリと光る。懸命に一つのものを作ろうと、同じ目標に向かっている大人たちの姿を見た4人の心に、さらなる建築に対する情熱の灯がともったのだった。

コンクリート打設


バイブレーター


竹突きの様子
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