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☆2話:4人目現る?
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恐怖で固まっていた3人は、少女の優しい声を聴いて森の中にいるような晴れやかな気持ちになった。新メンバーとしての期待感はもちろんのこと、この少女が持つ癒し系のパワーが3人を温かく包み込んだのだった。
「わたし、1年B組の麻生志帆といいます」
うらら達3人は、尊いものを見るような目で志帆を見つめた。ふわっと揺れる深緑色のボブヘアーが、幼い顔立ちと良く似合っていて可愛い。その可愛さに反し、体つきは峰不〇子級の目を見張るものがあった。
「α波のαって……あさぶのαだったんだね!!!」
「うららちゃん、座布団一枚っ!!!」
「ささっ、まだ少し片付いていないですがこちらへどーぞっ!!!」
室内の装飾とミスマッチすぎるほど、簡素なパイプ椅子4脚と長テーブル。海巳は手際よく志帆を誘導し、掃除中の皆は手を止めて椅子に座った。
「ようこそ! 建築学科に入りたいものたちのクラブへ! まだ出来立てほやほやだから、クラブの名前とか決まってないんだよねぇ。私たちは、1年C組の美園うらら、こっちの猫みたいな子は澄川海巳、こっちのふわっとした子が白石セリナだよぉ。ところで、シホちゃんも建築学科に入りたいの!?」
うららの問いに対して、にんまりと笑顔になった志帆。返答するわけでもなく、スクールバッグの中をガサガサあさっている。
「……とりあえず。シフォンケーキ食べながら話しませんか? 昨日、作り過ぎっちゃって」
ひとつひとつ、リボンと透明の袋で可愛く包まれたシフォンケーキが4つ。それを見たうらら、セリナ、海巳は再び森の中にいるような癒しを感じた。
「シフォンケーキのシフォンって……シホのことだったんだね!!!」
《――それは無理ある気がっっっっ!!!!》
リボンをほどいて、パクッとケーキを口に含む4人。程よいアールグレイの香りが口いっぱいに広がり、雲の上にいるようなフワリとした触感が残る。頬を抑えながら感動している3人を嬉しそうに眺めながら、志帆はゆったりとした口調で語り始めた。
「わたし、学科の志望調査で、建築学科を第一希望にしていたんです。第二希望は元々お菓子作りが趣味なので、パティシエ学科を。だけどわたし……本当に数学が大の苦手でバカなんですっ!!!」
今にも涙が溢れそうな目を手で覆った志帆。
「お兄ちゃんに『俺の妹が、建築学科の授業についていけるはずがない件』『1級バカ建築士』って言われて自信なくなっちゃって。それで志望調査から、泣く泣く建築学科を消しちゃったんです。それでもやっぱり今日……建築がしたいなぁって思って、都先生に『こんなわたしでも大丈夫ですか』って相談しに行ったところだったんです」
3人は椅子から立ち上がり、涙目になっている志帆を背後と両際からギュッと抱きしめた。
「ぜ~ったい大丈夫!自慢じゃないけど、私、中学校のとき数学2以上とったことないし! うちの父ちゃん、大工だけど三角関数なんか一生わからんって言ってるし!」
「もしわからないことに直面したら、みんなで支えあっていきましょうよ!」
「うむっ。やりたいって気持ちさえあれば大丈夫。シホはなんで建築やりたいと思ったの?」
志帆は鼻をすすり、唇を震わせながら呟いた。
「わたし、中学校の修学旅行ではじめて函館にいったの。そのときにレトロな建築やインテリアを見てね。あっ、ハリストス正教会とか、旧函館区公会堂とか! 見ていてワクワクしたし、ドキドキしたの。それ以来、建築やインテリアのお勉強がしたいなぁ~って思ったの」
志帆の熱弁を聞いて、3人は深く頷いた。
「そんなに建築大好きなら、ぜ~ったいやるべきだよっ!」
「そうですよっ! その情熱があるなら、何事もチャレンジした方がいいと思いますっ!」
「うむっ! 一緒にやろうではないかっ!」
今から何かの試合が始まるのか、と言わんばかりの円陣をガシッと組んだ4人組。《建築学科に入りたいものたちのクラブ》はその後、話し合いによって《才華けんちくらぶ》という名前に決定した。
ハリストス正教会
旧函館区公会堂
「わたし、1年B組の麻生志帆といいます」
うらら達3人は、尊いものを見るような目で志帆を見つめた。ふわっと揺れる深緑色のボブヘアーが、幼い顔立ちと良く似合っていて可愛い。その可愛さに反し、体つきは峰不〇子級の目を見張るものがあった。
「α波のαって……あさぶのαだったんだね!!!」
「うららちゃん、座布団一枚っ!!!」
「ささっ、まだ少し片付いていないですがこちらへどーぞっ!!!」
室内の装飾とミスマッチすぎるほど、簡素なパイプ椅子4脚と長テーブル。海巳は手際よく志帆を誘導し、掃除中の皆は手を止めて椅子に座った。
「ようこそ! 建築学科に入りたいものたちのクラブへ! まだ出来立てほやほやだから、クラブの名前とか決まってないんだよねぇ。私たちは、1年C組の美園うらら、こっちの猫みたいな子は澄川海巳、こっちのふわっとした子が白石セリナだよぉ。ところで、シホちゃんも建築学科に入りたいの!?」
うららの問いに対して、にんまりと笑顔になった志帆。返答するわけでもなく、スクールバッグの中をガサガサあさっている。
「……とりあえず。シフォンケーキ食べながら話しませんか? 昨日、作り過ぎっちゃって」
ひとつひとつ、リボンと透明の袋で可愛く包まれたシフォンケーキが4つ。それを見たうらら、セリナ、海巳は再び森の中にいるような癒しを感じた。
「シフォンケーキのシフォンって……シホのことだったんだね!!!」
《――それは無理ある気がっっっっ!!!!》
リボンをほどいて、パクッとケーキを口に含む4人。程よいアールグレイの香りが口いっぱいに広がり、雲の上にいるようなフワリとした触感が残る。頬を抑えながら感動している3人を嬉しそうに眺めながら、志帆はゆったりとした口調で語り始めた。
「わたし、学科の志望調査で、建築学科を第一希望にしていたんです。第二希望は元々お菓子作りが趣味なので、パティシエ学科を。だけどわたし……本当に数学が大の苦手でバカなんですっ!!!」
今にも涙が溢れそうな目を手で覆った志帆。
「お兄ちゃんに『俺の妹が、建築学科の授業についていけるはずがない件』『1級バカ建築士』って言われて自信なくなっちゃって。それで志望調査から、泣く泣く建築学科を消しちゃったんです。それでもやっぱり今日……建築がしたいなぁって思って、都先生に『こんなわたしでも大丈夫ですか』って相談しに行ったところだったんです」
3人は椅子から立ち上がり、涙目になっている志帆を背後と両際からギュッと抱きしめた。
「ぜ~ったい大丈夫!自慢じゃないけど、私、中学校のとき数学2以上とったことないし! うちの父ちゃん、大工だけど三角関数なんか一生わからんって言ってるし!」
「もしわからないことに直面したら、みんなで支えあっていきましょうよ!」
「うむっ。やりたいって気持ちさえあれば大丈夫。シホはなんで建築やりたいと思ったの?」
志帆は鼻をすすり、唇を震わせながら呟いた。
「わたし、中学校の修学旅行ではじめて函館にいったの。そのときにレトロな建築やインテリアを見てね。あっ、ハリストス正教会とか、旧函館区公会堂とか! 見ていてワクワクしたし、ドキドキしたの。それ以来、建築やインテリアのお勉強がしたいなぁ~って思ったの」
志帆の熱弁を聞いて、3人は深く頷いた。
「そんなに建築大好きなら、ぜ~ったいやるべきだよっ!」
「そうですよっ! その情熱があるなら、何事もチャレンジした方がいいと思いますっ!」
「うむっ! 一緒にやろうではないかっ!」
今から何かの試合が始まるのか、と言わんばかりの円陣をガシッと組んだ4人組。《建築学科に入りたいものたちのクラブ》はその後、話し合いによって《才華けんちくらぶ》という名前に決定した。
ハリストス正教会
旧函館区公会堂
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