あーきてくっちゃ!

七々扇七緒

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☆2話:4人目現る?

2-1

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「そういえば! セリちゃんとミーちゃんは、どうして建築学科に入ろうって思ったの?」

 うららは少し黒ずんでいる人体模型を雑巾で磨きながら、床磨きをしている海巳とテーブル拭きをしているセリナに問いかけた。3人は都先生から部室として、旧校舎にある一室、元々理科準備室として利用されていた空き部屋を借りることになったのだった。室内の装飾は新校舎とも引けを取らないくらいアンティーク調で豪華だが、埃っぽく、日当たりが悪いため雪が残る今の時期は寒い。

「わたくしも、うららちゃんと少し似ていますよ。うちも先祖代々、建設業なので。幼い頃よく、おじい様に工事現場へ連れて行ってもらったんです。おてんばな子供だったので、遠くからしか見せてもらえませんでしたけどね。それでも、現場から伝わってくる情熱といいますか、みんなで一つのものを作ることに対して興味が沸いたんです」

「わかるわかる~! それ、すっごいわかる!」

「……現場いいなぁ。私も見てみたいなぁ。現場ってシートみたいので囲われてて、中が見えないようになってるじゃん」

「今度、みんなで現場見学いきましょうか! 前もってじいやに言えば、新千歳空港からいつでもジェット飛ばせますし!」


《――我々の想像している現場見学の想像を遥かに上回ってるっっっ!!!!》


「……それからでしょうか、わたくしもいずれ、建築に携わりたいと思い始めたんです。それで、お父様お墨付きのこの学校、才華女子高等学校へ入学したんです」

「な~るほどね~、セリちゃんの情熱、す~っごく伝わってきたよ! んじゃ次はミーちゃん! ミーちゃんはなんで建築学科入ろうと思ったの?」

 うららの問いかけに対し、ビクッと肩を震わせた海巳。ゴシゴシ床を磨いていた手を止めて、今にもこの場から逃げ出そうとしている猫のような目付きをしている。

「……内緒」

「え~!? なんで!?」

「だって、うららやセリナに比べたら、本当にしょーもないから」

「無理にとは言いませんが、ミミちゃんのこと、教えてくれるとうれしいです」

「う゛ーーー。ぜーーったい笑わない?」

「誓って言う!笑わない!」

「わたくしも、ぜ~ったい笑いません!」

 観念したように深い息を吐きだした海巳は、頬を真っ赤に染めながら小声で呟いた。

「……カッコいいと思ったの。建築学科の人たちがよく持ってる、あのバズーカみたいなやつ」

 うららとセリナは、脳内でバズーカを思い浮かべた。建築学科が良く持ってるバズーカ。建築学科が良く持ってる黒い筒……。想像を膨らませていくと、とあるが2人の脳裏をよぎった。

「あぁ~!図面ケースだぁ!」

「ミミちゃんが憧れる気持ち、す~っごくわかりますよ! 特に才華女子高等学校のバズーカ型の図面ケース、凝ったデザインで素敵なんですよねぇ~」
 
 2人の反応を見て、目をキラキラと輝かせた海巳。手に持っていた雑巾を放って、ギュッと握りしめた手をブンブンと震わせて興奮をあらわにした。

「そうなのーーっ!!! どーしても才華のバズーカが欲しくって!! だってズルいよね? あのデザイン。あのバズーカ持ってたらRPGやバイ〇ハザードの世界でも楽勝じゃん?ってくらい強そうでカッコいいよね!!」


《――それはよくわからんが、とりあえず納得しとこ~っっ!!!》


「どんな理由であろうとさ、少なくともあと7人、建築学科に入りたいっていう子みつかるといいね!」

 うららが力強く人体模型の肩をバシッと叩くと、その反動でかろうじて頭に納まっていた脳味噌や腹部の臓器が床に散らばった。

「ぎゃああああああーーーーー!!!!」

 ハモった叫び声の残響が鳴りやんだとき――部室の扉がドンドンッと音を立てて勢いよくガチャッと開いた。

「ぎゃあああああああああああああああーーーー!!!!!!」

 薄暗い室内に散らばった脳味噌、臓器。アホ―ッと聞こえるカラスの鳴き声。口をあんぐりさせ、恐怖で顔を歪ませた女子高生3人――その視線の先には、甘いお菓子のような香りをまとった少女が不安そうな表情で立っていた。

「あの……ここに、建築学科に入りたい人たちのクラブがある、って都先生に聞いたんですけどぉ」



バズーカ
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