ミニュモンの魔女

藤枝ゆみ太

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【ミニュモンの魔女】序章

12話

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「………………ん……」

 目覚めると、そこは見たことも無い場所だった。

「…………あ……ろ……ろこだ?…………ここ…………」

 どうやら屋内のようだ。窓から差し込む光がまぶしい。

 しかし、いくら考えてもこんな部屋に入った記憶はまるで無い。

 ……夢か?……それとも……

「……はは。……俺、もしかして……死ん…だ?」

「ここで死なれちゃ困るんだけど……」

「うおぁっっ!!」

 突然の声に必要以上におどろき振り向くと、そこには見たことも無い女が立っていた。

 自分を見下ろすその瞳には、明らかな軽蔑けいべつの色が見て取れる。

 ……異様なほど化粧が濃い。しかし、黒く長い髪は艶々つやつやしていてとても綺麗きれいだ。

「…………あ……」

「目覚めたわね……」

「あ、ああ。その、もしかしてアンタが?助けてくれたのか?……あ、ありがとな」

「…………」

「俺ぁ……ジャムっつうんだ。……ジャムミッツ。森ん中を歩ってたはずなんだけど……あんま……覚えてなくってよぉ」

「へぇ…………そぅ…………」

 ジャムの話を聞いても何の興味もないようで、返す言葉は氷のように冷えきっている。

 暗く冷たい瞳で見据みすえられると、なんだかとても緊張きんちょうしてしまう。

「ごくっ……」

「目が覚めたのなら……」

「お?おおっ」

「目が覚めたのなら……さっさと出て行って」

「……は?」

「聞こえなかったのかしら?……で・て・い・け・って言っているの……よっ!」

 ドカッ

「のわっ!」

 女の強烈きょうれつな一蹴りを受け、ジャムは勢いよく吹っ飛ぶ。

「な、なな……ちょっ!」

「やかましい。……早く出て行きなさい……よっ!」

 ズカンッ!

「ぐえっ!」

 転げ回ったその勢いのまま、遂にジャムは玄関から外に放り出されてしまった。

「ま、待ってくれーっ、ちょっと待ってくれよっ!!」

「何故?待つ必要なんて無いでしょう?それじゃあさようなら。……もう二度と会うことも無いわ」

 ツーンとそっぽを向いて家の中に戻ろうとする女の足を、ジャムは思わずぐぐいとつかんでしまう。

 黒いタイツにおおわれた足首が自分の予想以上に細いことに少し驚く。

「ちょっとあなた、そんな汚ならしい手で触らないでほしいんだけど」

「わかったよ。でも少しっ!少しだけ俺の話を聞いてくれっ……な?」

「………………」

「……」

「……………………」

「……むぐ」

「…………………………」

「……むぐぅ」

「……………………はぁ、分かったわよ。……で、一体何?」

「あ、ああっ。実は俺、飲まず食わずで……ちょっと……ヤベエんだ」

「そのようねぇ」

「おっ、気付いてたんか。頼むっ、残り物でも何でも良いから……食いもんを分けて欲しいんだっ。足に全っ然力が入らなくてよ」

「食いもん……」

「生ゴミでも何でもっ!……頼むっ」

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