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【ミニュモンの魔女】序章
1話
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人間、吸血鬼、エルフ、その他色々の種族がごちゃ混ぜになって暮らす広大世界。
皇帝ザーザーの下、幾千もの貴族達が広すぎる領土を少しずつ預かっている。
その中の一つ。
中央地区、東地区、西地区、南地区、北地区、五つの地区からなるミニュモンと言う領土があった。
吸血鬼族の領主、サンゼル・ドド・ミニュモンもまた、ザーザーから土地を預かる高位貴族の一人だ。
種族が種族だけに人間族への優遇措置や、献血キャンペーンなとも開催されている。
おまけにとんでもない軟派者なので、女性への優遇措置もしっかりと作られている。
毎日生き血で乾杯していたり、若干男性に対して冷遇気味ではあるが、比較的平和で住みやすい、それがミニュモン領土の良いところ。
しかし、天幕で覆われた城の中では一人悶々と思い悩む者がいた。
「最近、ここ百数十年程だと思うのだが……女性の失踪がやけに目立っているような気がしてなぁ。
……どう思う?シームフよ」
領主サンゼルは、はぁ……と息をつくと、側近の男に銀色の視線を向ける。
「失踪してはすぐ見つかる……の間違いでは?」
ブロンドを後ろに撫でつけた側近は、主の間違いをしれっとした表情で指摘する。
「えぇぇぇー……本気で?シームフ、それ本気でぇ?」
「本気でございますが……何か?」
「はぁぁ……。これだから堅物ちゃんはさぁ~」
「主が軟派者ですので、私くらいはしっかりしませんと」
「……」
「…………」
「………………ええと、麗しの女性達の失踪の話だけど……」
「はい。失踪してはすぐに見つかる、ですが」
サンゼルは身を乗り出してシームフの目を覗き込む。
サンゼルの瞳に見据えられると、心の奥まで見透かされている気分になる。
「なぁ……シームフよ。本当に本気でそう思っているのか?
……だとしたらもう少ーし、女の子と接したほうが良いぞ?」
「?」
「アレを帰っているとは言わない。
アレは空っぽ、空っぽのお人形さんと言うんだよ。
……可哀想に、苦しいだろうね……彼女達」
「……人形でございますか」
「そうさ、よーく見るんだ。シームフ、心の眼で見るんだ。
彼女達は本当に帰っているのかな?」
「……んんん……」
サンゼルはグラスに注いだ生き血を静かに口に含み、舌の上でころがす。
「…………ん?」
「…………」
「…………っっ!これはっ……サンゼル様」
「気付くの遅ーい」
「申し訳ありません」
「それにしても気に入らないなぁ。一体彼女達は何処にいるのかな?
そして、ボクに隠れて誰がこんな事をしているんだろ。
サブナリスならいざ知らず、ボクの領土でさぁ」
「そうですね。早急に調査いたします」
「ん、そうしてねぇ……」
急ぎ足で部屋を出るシームフを見つめながら、サンゼルはポツリと呟く。
「でもねぇ……何故、彼女達が公に助けを請わないのかを考えないと、どうにもならないんじゃないかな……」
皇帝ザーザーの下、幾千もの貴族達が広すぎる領土を少しずつ預かっている。
その中の一つ。
中央地区、東地区、西地区、南地区、北地区、五つの地区からなるミニュモンと言う領土があった。
吸血鬼族の領主、サンゼル・ドド・ミニュモンもまた、ザーザーから土地を預かる高位貴族の一人だ。
種族が種族だけに人間族への優遇措置や、献血キャンペーンなとも開催されている。
おまけにとんでもない軟派者なので、女性への優遇措置もしっかりと作られている。
毎日生き血で乾杯していたり、若干男性に対して冷遇気味ではあるが、比較的平和で住みやすい、それがミニュモン領土の良いところ。
しかし、天幕で覆われた城の中では一人悶々と思い悩む者がいた。
「最近、ここ百数十年程だと思うのだが……女性の失踪がやけに目立っているような気がしてなぁ。
……どう思う?シームフよ」
領主サンゼルは、はぁ……と息をつくと、側近の男に銀色の視線を向ける。
「失踪してはすぐ見つかる……の間違いでは?」
ブロンドを後ろに撫でつけた側近は、主の間違いをしれっとした表情で指摘する。
「えぇぇぇー……本気で?シームフ、それ本気でぇ?」
「本気でございますが……何か?」
「はぁぁ……。これだから堅物ちゃんはさぁ~」
「主が軟派者ですので、私くらいはしっかりしませんと」
「……」
「…………」
「………………ええと、麗しの女性達の失踪の話だけど……」
「はい。失踪してはすぐに見つかる、ですが」
サンゼルは身を乗り出してシームフの目を覗き込む。
サンゼルの瞳に見据えられると、心の奥まで見透かされている気分になる。
「なぁ……シームフよ。本当に本気でそう思っているのか?
……だとしたらもう少ーし、女の子と接したほうが良いぞ?」
「?」
「アレを帰っているとは言わない。
アレは空っぽ、空っぽのお人形さんと言うんだよ。
……可哀想に、苦しいだろうね……彼女達」
「……人形でございますか」
「そうさ、よーく見るんだ。シームフ、心の眼で見るんだ。
彼女達は本当に帰っているのかな?」
「……んんん……」
サンゼルはグラスに注いだ生き血を静かに口に含み、舌の上でころがす。
「…………ん?」
「…………」
「…………っっ!これはっ……サンゼル様」
「気付くの遅ーい」
「申し訳ありません」
「それにしても気に入らないなぁ。一体彼女達は何処にいるのかな?
そして、ボクに隠れて誰がこんな事をしているんだろ。
サブナリスならいざ知らず、ボクの領土でさぁ」
「そうですね。早急に調査いたします」
「ん、そうしてねぇ……」
急ぎ足で部屋を出るシームフを見つめながら、サンゼルはポツリと呟く。
「でもねぇ……何故、彼女達が公に助けを請わないのかを考えないと、どうにもならないんじゃないかな……」
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