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【クレハンの涙】第三章
145話
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フェグのギリッと歯噛みした音が生々しく響く。
「私はその頃から全身全霊で呪いの調査や自身の医術、魔術の技術向上を試みていたのだ。
力をつけなければやられるのはこちらだと考えていたし、何よりこの呪いを解くには謎の術者と同等、いや、それ以上でなくてはならない。
その為に、そのために私は失われた錬金さえも身に付けたのだ。だのに……だのに、こんな落とし穴があったなんて……くそっ!」
「フェグ……」
「恐ろしく用意周到な……"人間の"仕業なのだと、誰もが思ったいた。私でさえ、あれを……あれを見るまでは」
「あれ?あれってなんなの??」
「この、この、遺跡の土台だっ!」
「??」
「私が死ぬ少し前、三十五の時にようやっと確立出来たイムスージャ召喚魔術という技術があったのだが」
「し、死ぬってあんたね」
「当時の……だ。私も、三十六で呪いによって死んでいる」
「え、そんな……」
「そう言えば、王族は私が最後だったな。結局、私は誰も助ける事が出来なかった。
確立したその技術を使えば、あるいはどうにかなったのかもしれないが、あまりにおぞましかったので封印せざるをえなかった」
「自分が死ぬかもしれない、そんな状況でも?」
「勿論だ。……だのに、この城の土台を見た時には、震えが止まらなくなってしまった。
私が封印したあの陣の形とまったく同じものが、どう言うわけかこの城の基礎工事に使われていたのだから」
「それってつまり、誰かが悪用したって事?」
「……いや、それは絶対ない」
「なんでよ?」
「この城は私が本当に幼い時に一度、大きな改装工事をしてな。殆ど立て替えと言ってもいい。
その時には既に、土台や周囲がガラリと変わったらしい。
何かを悪用し、土台とするのなら工事中しかないだろう?そして当時私は生まれたばかりだ。
イムスージャ召喚魔術は三十五の時のもの。まるで時期が合わない」
「そっかー」
「だが、この城の構造、立地、土台。全てを目にして私は確信した」
「犯人を?」
「犯人、か。そうだな、そう言えるのかもしれない。
…………私の家族の命を奪い去ったのは、偶然から始まった……事故だ」
「偶然?事故?え、どうしてそうなるの?」
「偶然、封印の陣と同じ形の土台で改装工事をして、偶然左右に配置された医術棟に魔術棟。
それが偶然力を何倍にも、何十倍にも、何百倍にも増幅してしまい、そこに詰める医師、魔術師の存在、数、諸々の理由で偶然にも中心部の王宮に暮らしている王族達に恐ろしい二つからなる呪い『混合呪』がかかってしまった」
「ちょっ、そんなのってっ!そんなのってあり得ないでしょっ!」
「あり得ないと思うだろう?私だって思ったさ。
そんな、奇跡に近い偶然あるわけがない。絶対誰かが仕組んだに違いないってな。
しかし、しかしどうしてもこの答えに行き着いてしまうのだっ!
どんなに考えを巡らせてもっ、どんなに沢山の解決法を導き出してもっ!
あの頃の悲惨な出来事と、その頃には分かるはずもなかったこの城の構造を理解した今っ!
どうしても『混合呪』が自然発動したとしか考えられないっ!」
「私はその頃から全身全霊で呪いの調査や自身の医術、魔術の技術向上を試みていたのだ。
力をつけなければやられるのはこちらだと考えていたし、何よりこの呪いを解くには謎の術者と同等、いや、それ以上でなくてはならない。
その為に、そのために私は失われた錬金さえも身に付けたのだ。だのに……だのに、こんな落とし穴があったなんて……くそっ!」
「フェグ……」
「恐ろしく用意周到な……"人間の"仕業なのだと、誰もが思ったいた。私でさえ、あれを……あれを見るまでは」
「あれ?あれってなんなの??」
「この、この、遺跡の土台だっ!」
「??」
「私が死ぬ少し前、三十五の時にようやっと確立出来たイムスージャ召喚魔術という技術があったのだが」
「し、死ぬってあんたね」
「当時の……だ。私も、三十六で呪いによって死んでいる」
「え、そんな……」
「そう言えば、王族は私が最後だったな。結局、私は誰も助ける事が出来なかった。
確立したその技術を使えば、あるいはどうにかなったのかもしれないが、あまりにおぞましかったので封印せざるをえなかった」
「自分が死ぬかもしれない、そんな状況でも?」
「勿論だ。……だのに、この城の土台を見た時には、震えが止まらなくなってしまった。
私が封印したあの陣の形とまったく同じものが、どう言うわけかこの城の基礎工事に使われていたのだから」
「それってつまり、誰かが悪用したって事?」
「……いや、それは絶対ない」
「なんでよ?」
「この城は私が本当に幼い時に一度、大きな改装工事をしてな。殆ど立て替えと言ってもいい。
その時には既に、土台や周囲がガラリと変わったらしい。
何かを悪用し、土台とするのなら工事中しかないだろう?そして当時私は生まれたばかりだ。
イムスージャ召喚魔術は三十五の時のもの。まるで時期が合わない」
「そっかー」
「だが、この城の構造、立地、土台。全てを目にして私は確信した」
「犯人を?」
「犯人、か。そうだな、そう言えるのかもしれない。
…………私の家族の命を奪い去ったのは、偶然から始まった……事故だ」
「偶然?事故?え、どうしてそうなるの?」
「偶然、封印の陣と同じ形の土台で改装工事をして、偶然左右に配置された医術棟に魔術棟。
それが偶然力を何倍にも、何十倍にも、何百倍にも増幅してしまい、そこに詰める医師、魔術師の存在、数、諸々の理由で偶然にも中心部の王宮に暮らしている王族達に恐ろしい二つからなる呪い『混合呪』がかかってしまった」
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「あり得ないと思うだろう?私だって思ったさ。
そんな、奇跡に近い偶然あるわけがない。絶対誰かが仕組んだに違いないってな。
しかし、しかしどうしてもこの答えに行き着いてしまうのだっ!
どんなに考えを巡らせてもっ、どんなに沢山の解決法を導き出してもっ!
あの頃の悲惨な出来事と、その頃には分かるはずもなかったこの城の構造を理解した今っ!
どうしても『混合呪』が自然発動したとしか考えられないっ!」
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