クレハンの涙

藤枝ゆみ太

文字の大きさ
上 下
145 / 149
【クレハンの涙】第三章

145話

しおりを挟む
 フェグのギリッと歯噛みした音が生々しく響く。

「私はその頃から全身全霊で呪いの調査や自身の医術、魔術の技術向上を試みていたのだ。
力をつけなければやられるのはこちらだと考えていたし、何よりこの呪いを解くには謎の術者と同等、いや、それ以上でなくてはならない。
その為に、そのために私は失われた錬金さえも身に付けたのだ。だのに……だのに、こんな落とし穴があったなんて……くそっ!」

「フェグ……」

「恐ろしく用意周到な……"人間の"仕業なのだと、誰もが思ったいた。私でさえ、あれを……あれを見るまでは」

「あれ?あれってなんなの??」

「この、この、遺跡の土台だっ!」

「??」

「私が死ぬ少し前、三十五の時にようやっと確立出来たイムスージャ召喚魔術という技術があったのだが」

「し、死ぬってあんたね」

「当時の……だ。私も、三十六で呪いによって死んでいる」

「え、そんな……」

「そう言えば、王族は私が最後だったな。結局、私は誰も助ける事が出来なかった。
確立したその技術を使えば、あるいはどうにかなったのかもしれないが、あまりにおぞましかったので封印せざるをえなかった」

「自分が死ぬかもしれない、そんな状況でも?」

「勿論だ。……だのに、この城の土台を見た時には、震えが止まらなくなってしまった。
私が封印したあの陣の形とまったく同じものが、どう言うわけかこの城の基礎工事に使われていたのだから」

「それってつまり、誰かが悪用したって事?」

「……いや、それは絶対ない」

「なんでよ?」

「この城は私が本当に幼い時に一度、大きな改装工事をしてな。殆ど立て替えと言ってもいい。
その時には既に、土台や周囲がガラリと変わったらしい。
何かを悪用し、土台とするのなら工事中しかないだろう?そして当時私は生まれたばかりだ。
イムスージャ召喚魔術は三十五の時のもの。まるで時期が合わない」

「そっかー」

「だが、この城の構造、立地、土台。全てを目にして私は確信した」

「犯人を?」

「犯人、か。そうだな、そう言えるのかもしれない。
…………私の家族の命を奪い去ったのは、偶然から始まった……事故だ」

「偶然?事故?え、どうしてそうなるの?」

「偶然、封印の陣と同じ形の土台で改装工事をして、偶然左右に配置された医術棟に魔術棟。
それが偶然力を何倍にも、何十倍にも、何百倍にも増幅してしまい、そこに詰める医師、魔術師の存在、数、諸々の理由で偶然にも中心部の王宮に暮らしている王族達に恐ろしい二つからなる呪い『混合呪』がかかってしまった」

「ちょっ、そんなのってっ!そんなのってあり得ないでしょっ!」

「あり得ないと思うだろう?私だって思ったさ。
そんな、奇跡に近い偶然あるわけがない。絶対誰かが仕組んだに違いないってな。
しかし、しかしどうしてもこの答えに行き着いてしまうのだっ!
どんなに考えを巡らせてもっ、どんなに沢山の解決法を導き出してもっ!
あの頃の悲惨な出来事と、その頃には分かるはずもなかったこの城の構造を理解した今っ!
どうしても『混合呪』が自然発動したとしか考えられないっ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

深き安眠は終わり、始まるは道無き道

takosuke3
ファンタジー
"プラナダ"と呼ばれるその惑星には、太古の超文明の遺跡が点在している。その発掘調査を生業とするソーディス一家の一員であるレイヤは、海底で眠る巨大沈没船に足を踏み入れ、その最奥にて眠っていた白い少女━━あるいは少年━━を発見し、覚醒させる。 太古の生き証人である少女は、ソーディス一家にとっては宝の地図も同然。強大で埒外な力、完全で異質な肉体、現在とは異なる知識常識━━その存在に戸惑いつつも、少女の案内で遺跡を目指すソーディス一家だったが・・・・・ 〈2019年2月3日告知〉 本日より、連載を開始します。 更新は不定期になりますが、可能な限り週イチを心掛けるつもりです。 長い目と広い心でもってお付き合いください・・・・ 〈2019年8月19日告知〉 本日の更新をもちまして、本編は完結と致します。 以降は人物紹介を掲載していきます 〈2019年8月27日告知〉 本日の更新をもちまして、完結タグに切り替えます。 短い間でしたが、拙作にお付き合い下さり、ありがとうございました

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜

ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。 けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。 ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。 大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。 子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。 素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。 それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。 夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。 ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。 自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。 フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。 夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。 新たに出会う、友人たち。 再会した、大切な人。 そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。 フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。 ★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。 ※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。 ※一話あたり二千文字前後となります。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

処理中です...