142 / 149
【クレハンの涙】第三章
142話
しおりを挟む
ラビは自分の腹が引きつる感覚で目が覚めた。
「……っん~」
寝ぼけながらも引きつる腹をさすろうとすると、フェグが使っていた毛布が体から滑り落ちた。
「?」
不思議に思い、ベッドを見るがそこには誰もいない。
「……フェグ?」
痛い程の沈黙に、寝ぼろけだったラビの頭は覚醒する。
部屋のどこを探しても彼は居らず、それでも声を出してフェグを呼んだ。
「フェグーッ!どこにいるのよあのバカッ」
部屋を飛び出しホテルの外を探そうとすると、腹の引きつりがより激しくなる。
「いたたっ!もうっ、こんな時にっ!」
イライラしつつもラビは暗闇の中を走る。
広がる不安を蹴散らしたいから。
「もしかしたら博物館に行ったのかも」
そう思い立ち博物館の方向に行こうとするが、そっちでは無いと言わんばかりに引きつりが強まる。
痛くてとても前に進めない。
「いたたたたっ」
彼が生まれ出た部分の腹をおさえて、ラビは必死にフェグの行きそうな場所を考え続けた。
「……まさか……遺跡?」
途端にピタリと止んだ引きつりに驚いている暇なんてない。
駆け出した足はもうそこしか無いと言わんばかりに突き進む。
「こんな暗い中何考えてるのよっ、あいつ!」
怒りながらも何か恐ろしい予感がラビの胸を締め付けていた。
ここの所のフェグの状態を見続けていたので、何より不安だったのだ。
フェグがどこか、自分の想像を絶するような所に行ってしまうのではないかと……
「フェグ」
ラビは自分が迷うのではと言う考えを打ち捨てて城塞遺跡に向かった。
昼間とは打って変わって、広野は闇に包まれている。
唯一の光源と言えば、青白く浮かぶ巨大な月だけだ。
「おかしいな。何だか今日の月は、薄気味悪い気がする」
首を傾げつつも、一時間ほどその月明かりで進み続けることが出来た。
しかし……
「どうしよう。どっちがどっちか分かんない」
暗く広い荒野に月明かりだけが頼りではここまでが限界で、ノンストップて走り続けて来たラビの足が止まる。
「ああ、どうしよう。どうすれば……」
大いに混乱しつつも、何か目印は無いかと遠くにまで目を凝らす。
すると、何かが遠くで一瞬光った。
「?」
光った方向を更によく見つめると、むたキラッと何かが光る。
「何かしら?」
ラビは不安だったが他に目印も無いので、あの光の元へと走り出す。
「はぁっ、はぁっ……はぁっ……」
体力も限界に近づいていたが、走る速度を緩めようとは考えていなかった。
時折キラッとするその光に導かれ、ラビはようやく見つけた。
「……あれ、フェグだわっ!……そうか、月に反射してブレスレットが光っていたのね」
ラビの少し先を、何の目印も無くよろよろ進んで行くのは、紛れもなく追いかけていたフェグ本人だった。
「……」
ラビは声を掛けようとしたが、やめておいた。
何となく現状を見守らないといけないような気がしたのだ。
今はただ、遺跡に着くまで彼を見失わないように見守るだけだった。
「……っん~」
寝ぼけながらも引きつる腹をさすろうとすると、フェグが使っていた毛布が体から滑り落ちた。
「?」
不思議に思い、ベッドを見るがそこには誰もいない。
「……フェグ?」
痛い程の沈黙に、寝ぼろけだったラビの頭は覚醒する。
部屋のどこを探しても彼は居らず、それでも声を出してフェグを呼んだ。
「フェグーッ!どこにいるのよあのバカッ」
部屋を飛び出しホテルの外を探そうとすると、腹の引きつりがより激しくなる。
「いたたっ!もうっ、こんな時にっ!」
イライラしつつもラビは暗闇の中を走る。
広がる不安を蹴散らしたいから。
「もしかしたら博物館に行ったのかも」
そう思い立ち博物館の方向に行こうとするが、そっちでは無いと言わんばかりに引きつりが強まる。
痛くてとても前に進めない。
「いたたたたっ」
彼が生まれ出た部分の腹をおさえて、ラビは必死にフェグの行きそうな場所を考え続けた。
「……まさか……遺跡?」
途端にピタリと止んだ引きつりに驚いている暇なんてない。
駆け出した足はもうそこしか無いと言わんばかりに突き進む。
「こんな暗い中何考えてるのよっ、あいつ!」
怒りながらも何か恐ろしい予感がラビの胸を締め付けていた。
ここの所のフェグの状態を見続けていたので、何より不安だったのだ。
フェグがどこか、自分の想像を絶するような所に行ってしまうのではないかと……
「フェグ」
ラビは自分が迷うのではと言う考えを打ち捨てて城塞遺跡に向かった。
昼間とは打って変わって、広野は闇に包まれている。
唯一の光源と言えば、青白く浮かぶ巨大な月だけだ。
「おかしいな。何だか今日の月は、薄気味悪い気がする」
首を傾げつつも、一時間ほどその月明かりで進み続けることが出来た。
しかし……
「どうしよう。どっちがどっちか分かんない」
暗く広い荒野に月明かりだけが頼りではここまでが限界で、ノンストップて走り続けて来たラビの足が止まる。
「ああ、どうしよう。どうすれば……」
大いに混乱しつつも、何か目印は無いかと遠くにまで目を凝らす。
すると、何かが遠くで一瞬光った。
「?」
光った方向を更によく見つめると、むたキラッと何かが光る。
「何かしら?」
ラビは不安だったが他に目印も無いので、あの光の元へと走り出す。
「はぁっ、はぁっ……はぁっ……」
体力も限界に近づいていたが、走る速度を緩めようとは考えていなかった。
時折キラッとするその光に導かれ、ラビはようやく見つけた。
「……あれ、フェグだわっ!……そうか、月に反射してブレスレットが光っていたのね」
ラビの少し先を、何の目印も無くよろよろ進んで行くのは、紛れもなく追いかけていたフェグ本人だった。
「……」
ラビは声を掛けようとしたが、やめておいた。
何となく現状を見守らないといけないような気がしたのだ。
今はただ、遺跡に着くまで彼を見失わないように見守るだけだった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
深き安眠は終わり、始まるは道無き道
takosuke3
ファンタジー
"プラナダ"と呼ばれるその惑星には、太古の超文明の遺跡が点在している。その発掘調査を生業とするソーディス一家の一員であるレイヤは、海底で眠る巨大沈没船に足を踏み入れ、その最奥にて眠っていた白い少女━━あるいは少年━━を発見し、覚醒させる。
太古の生き証人である少女は、ソーディス一家にとっては宝の地図も同然。強大で埒外な力、完全で異質な肉体、現在とは異なる知識常識━━その存在に戸惑いつつも、少女の案内で遺跡を目指すソーディス一家だったが・・・・・
〈2019年2月3日告知〉
本日より、連載を開始します。
更新は不定期になりますが、可能な限り週イチを心掛けるつもりです。
長い目と広い心でもってお付き合いください・・・・
〈2019年8月19日告知〉
本日の更新をもちまして、本編は完結と致します。
以降は人物紹介を掲載していきます
〈2019年8月27日告知〉
本日の更新をもちまして、完結タグに切り替えます。
短い間でしたが、拙作にお付き合い下さり、ありがとうございました
元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。
追い出された万能職に新しい人生が始まりました
東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」
その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。
『万能職』は冒険者の最底辺職だ。
冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。
『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。
口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。
要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。
その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。
召喚されたけど不要だと殺され、神様が転生さしてくれたのに女神様に呪われました
桜月雪兎
ファンタジー
召喚に巻き込まれてしまった沢口香織は不要な存在として殺されてしまった。
召喚された先で殺された為、元の世界にも戻れなく、さ迷う魂になってしまったのを不憫に思った神様によって召喚された世界に転生することになった。
転生するために必要な手続きをしていたら、偶然やって来て神様と楽しそうに話している香織を見て嫉妬した女神様に呪いをかけられてしまった。
それでも前向きに頑張り、楽しむ香織のお話。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
僕はただの平民なのに、やたら敵視されています
カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。
平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。
真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる