クレハンの涙

藤枝ゆみ太

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【クレハンの涙】第二章

112話

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 ……これは、夢?


 フェグは、巨大な城の中にいた。

 そこには大勢の人達がいて、皆で幸せそうに語り合い、笑い合っている。

 フェグは少し離れた所からその様子を眺めていたが、中央に腰掛けている人物に気付くと、ピクンと震えた。

「……あの、方は……まさか……父上?」

 そう、あれは父上だ。

 それに兄上達も、小さな弟までいる。

 自分を煙たがっていた、母上も。

 ……あそこにいる人達は、皆自分の家族ではないか。

 フェグはそう確信して駆け寄った。

 込み上げる懐かしさ。

 暖かい家族の笑顔。

 あそこに自分も加わらなくては。

 大切な家族の元に、帰らなくては。

 しかし、彼が手を伸ばした瞬間……


 ……ダ……メ……


 その瞬間、幸せそうな家族の姿はかき消え、代わりに目の前に現れたのは、累々るいるいと横たわる死体の山、山、山。

 赤黒く染まる空間には、誰の吐息も聞こえない。

「うわあ、うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 フェグは呼吸することさえ忘れて飛び起きた。

「はっ……あっ……今のは…………夢?」

 止めどなく流れる涙と汗を抑える事が出来ない。

「そうだ、ただの夢さ。……そうに決まっているだろうが。……だのに……だのに何だっ、この涙はっ!何なのだっ!……この……胸の苦しさはっ……ううぅぅ……ぅううぅーっ」
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