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第四十話「ダブルペタル試験初日終了、そして二日目」
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月が輝き、どこも野営しているのか騒ぎは小さい。遠くの方で聞こえなくはないけど。
あたし達は奪取する文書が保管されている場所に戻った。
やはりさっきここにいたのがバレたせいか、最初に来た時より警戒心が強くなっていた。
でもあたし達には時間がない。
いくら丁寧に魔力を練ったからといっても時間が経てばイリスの中の魔力は消えてしまう。
だから――――
「種器――氷鉞、流氷群ッ!!」
種器を取り出したイリスは正面から特攻する。
ピッケルのような種器、氷鉞を振り下ろすと、空中に浮かんだ魔法陣から人の頭一つ分くらいの大きさの氷塊が降り注ぐ。
「正面からなんて舐められたものね!!」
相手もそう簡単にはやられない。
相手は槍状の種器で攻撃を弾く。
「――七氷剣」
氷の剣が七本現れて相手に向かって飛んでいく。
イリスの魔法は氷を生み出し操ることが出来る。
イリスのお姉さんの魔法、魔力を氷に変える魔法も使えるようだけど、今は無理みたい。
宙を動き回る氷の剣を相手は槍で捌ききる。
一本が相手のシースに向かうもそれも対処。
意外と実力は拮抗しているのかと思ったけど、
「ちょっとそれは飛ばしすぎでしょ……」
相手はそれを見て引いていた。
夜空を覆うような巨大な氷塊が、今にも落ちようとしているからだ。
「天隕氷塊」
ここは無暗な破壊が推奨されない非損壊エリアだから冷静に考えればあれほど大きい氷の塊を落とすわけがないけど、視界に移るインパクトがその思考を相手から奪っている。
正直、相手がそうなるのも無理はない。
攻撃規模が大きすぎて後のことを一切考えていない魔力運用、でもそれでいい。
あたし達の作戦は授吻して特攻して逃げるやり逃げ戦法(イリス曰く一撃離脱戦法)。
初回の落ち着いた時しか授吻出来ないから解花になれないので、相手が解花状態になる前に終わらせる。
イリスの役割は魔力の消費なんて考えずとにかく目立つこと。
その間に裏手に回ったあたしが文書を回収する。
「ちょっと!! 文書が――――」
「しまった! そっちが本命か」
相手のシースがあたしに気づいて、ブレイドも反応してこっちに来るけどイリスがそれを阻止する。
創造型魔法の利点は生み出す過程以外はそれほど魔力を使わないことと遠隔で操作できること。
つまり少量の魔力でも距離を取って戦える。
「あばよとっつぁん!」
あたしは全速力で逃げる。
イリスの作り出した巨大な氷は中身スッカスカの見掛け倒しなのですぐさま消え、氷の剣が相手を足止めしてその間にイリスも撤退。
こうして任務の一つは無事に完了した。
文書奪取任務は奪うことが目的なので向こうも今から取り返そうとはしてこない。
取った文書は指定された場所に届けて報告する。
イリスの魔力はぎりぎりだったようで、少し疲れている風だった。
「いやーなんとかなったね」
「そうだな」
もう夜も遅く野営の準備をして一息つくあたし達。
これでこっちから攻める任務はないからあとはひっそり行動すれば問題ない。
最初はどうなることかと思ったけど、魔力さえ持てばイリスは十分強い。
「やれば出来る子なんだねー」
「バカにしてる?」
おっと、心の声が漏れてた。
「あしたも同じように動く前に授吻して行動して魔力が少なくなったら身を隠す。これでいいよね?」
「あぁ。明日からは損壊エリアだから戦闘が増える。敵に見つかる=逃げるでいくしかない」
「オッケー。とりあえず今日はもう寝よっか」
「そうだな」
非損壊エリアの民家の中。
あたしは明日に備えて眠ることにした。
□◆□◆□◆□◆□◆□
翌朝。
やや埃っぽい部屋だったけど、あたしはぐっすりと眠って固まった体を伸ばす。
「ふぁ~よく寝た」
「お前……よくあんなに爆睡出来るな」
「どこでも寝られるのが特技ですので」
自慢げに答えるもイリスは呆れた感じだ。
「いやそうじゃなくって、寝てる時でもほかの生徒が襲ってくる可能性があるだろ。こういうキャンプ中は深くは眠らないのがセオリーなんだよ」
「あ、そっか……」
言われてみれば今が試験中であることには変わりない。
寝てる最中に襲われても対処できるようにしないといけないのはよくよく考えれば当たり前だ。
「ゴメン、完全に気が抜けてた。イリスは休めた? もしあたしを気にして寝てないなら今からでも……」
「問題ない。時間もないし早く今日の分の魔力を練って」
イリスは本日最初の授粉を要求する。
「あのイリスが自分から……あたしゃ嬉しいよ」
「アホやってねぇではよせい」
しみじみと目じりの涙を指で拭うふりをしてみるあたしをイリスは呆れ顔で一蹴する。
あたしは昨日と同じようにゆっくりと魔力を練り上げてイリスと授吻する。
今日から損壊エリアに向かい怪我人を模した人形保護任務に取り掛かる。
損壊エリアは非損壊エリアと違いすでに建物がボロボロになっており、そこでは激しい戦闘も認められている。
つまり損壊エリアでの戦いは遠慮なしの戦いになる。
「なるべく見つからないようにしないとね」
「初日のお前を見てるとその発言はフラグにしか聞こえねぇけどな」
「やだなーイリスったら……返す言葉もございません」
そんなこんなで、あたし達は損壊エリアへと向かった――――。
あたし達は奪取する文書が保管されている場所に戻った。
やはりさっきここにいたのがバレたせいか、最初に来た時より警戒心が強くなっていた。
でもあたし達には時間がない。
いくら丁寧に魔力を練ったからといっても時間が経てばイリスの中の魔力は消えてしまう。
だから――――
「種器――氷鉞、流氷群ッ!!」
種器を取り出したイリスは正面から特攻する。
ピッケルのような種器、氷鉞を振り下ろすと、空中に浮かんだ魔法陣から人の頭一つ分くらいの大きさの氷塊が降り注ぐ。
「正面からなんて舐められたものね!!」
相手もそう簡単にはやられない。
相手は槍状の種器で攻撃を弾く。
「――七氷剣」
氷の剣が七本現れて相手に向かって飛んでいく。
イリスの魔法は氷を生み出し操ることが出来る。
イリスのお姉さんの魔法、魔力を氷に変える魔法も使えるようだけど、今は無理みたい。
宙を動き回る氷の剣を相手は槍で捌ききる。
一本が相手のシースに向かうもそれも対処。
意外と実力は拮抗しているのかと思ったけど、
「ちょっとそれは飛ばしすぎでしょ……」
相手はそれを見て引いていた。
夜空を覆うような巨大な氷塊が、今にも落ちようとしているからだ。
「天隕氷塊」
ここは無暗な破壊が推奨されない非損壊エリアだから冷静に考えればあれほど大きい氷の塊を落とすわけがないけど、視界に移るインパクトがその思考を相手から奪っている。
正直、相手がそうなるのも無理はない。
攻撃規模が大きすぎて後のことを一切考えていない魔力運用、でもそれでいい。
あたし達の作戦は授吻して特攻して逃げるやり逃げ戦法(イリス曰く一撃離脱戦法)。
初回の落ち着いた時しか授吻出来ないから解花になれないので、相手が解花状態になる前に終わらせる。
イリスの役割は魔力の消費なんて考えずとにかく目立つこと。
その間に裏手に回ったあたしが文書を回収する。
「ちょっと!! 文書が――――」
「しまった! そっちが本命か」
相手のシースがあたしに気づいて、ブレイドも反応してこっちに来るけどイリスがそれを阻止する。
創造型魔法の利点は生み出す過程以外はそれほど魔力を使わないことと遠隔で操作できること。
つまり少量の魔力でも距離を取って戦える。
「あばよとっつぁん!」
あたしは全速力で逃げる。
イリスの作り出した巨大な氷は中身スッカスカの見掛け倒しなのですぐさま消え、氷の剣が相手を足止めしてその間にイリスも撤退。
こうして任務の一つは無事に完了した。
文書奪取任務は奪うことが目的なので向こうも今から取り返そうとはしてこない。
取った文書は指定された場所に届けて報告する。
イリスの魔力はぎりぎりだったようで、少し疲れている風だった。
「いやーなんとかなったね」
「そうだな」
もう夜も遅く野営の準備をして一息つくあたし達。
これでこっちから攻める任務はないからあとはひっそり行動すれば問題ない。
最初はどうなることかと思ったけど、魔力さえ持てばイリスは十分強い。
「やれば出来る子なんだねー」
「バカにしてる?」
おっと、心の声が漏れてた。
「あしたも同じように動く前に授吻して行動して魔力が少なくなったら身を隠す。これでいいよね?」
「あぁ。明日からは損壊エリアだから戦闘が増える。敵に見つかる=逃げるでいくしかない」
「オッケー。とりあえず今日はもう寝よっか」
「そうだな」
非損壊エリアの民家の中。
あたしは明日に備えて眠ることにした。
□◆□◆□◆□◆□◆□
翌朝。
やや埃っぽい部屋だったけど、あたしはぐっすりと眠って固まった体を伸ばす。
「ふぁ~よく寝た」
「お前……よくあんなに爆睡出来るな」
「どこでも寝られるのが特技ですので」
自慢げに答えるもイリスは呆れた感じだ。
「いやそうじゃなくって、寝てる時でもほかの生徒が襲ってくる可能性があるだろ。こういうキャンプ中は深くは眠らないのがセオリーなんだよ」
「あ、そっか……」
言われてみれば今が試験中であることには変わりない。
寝てる最中に襲われても対処できるようにしないといけないのはよくよく考えれば当たり前だ。
「ゴメン、完全に気が抜けてた。イリスは休めた? もしあたしを気にして寝てないなら今からでも……」
「問題ない。時間もないし早く今日の分の魔力を練って」
イリスは本日最初の授粉を要求する。
「あのイリスが自分から……あたしゃ嬉しいよ」
「アホやってねぇではよせい」
しみじみと目じりの涙を指で拭うふりをしてみるあたしをイリスは呆れ顔で一蹴する。
あたしは昨日と同じようにゆっくりと魔力を練り上げてイリスと授吻する。
今日から損壊エリアに向かい怪我人を模した人形保護任務に取り掛かる。
損壊エリアは非損壊エリアと違いすでに建物がボロボロになっており、そこでは激しい戦闘も認められている。
つまり損壊エリアでの戦いは遠慮なしの戦いになる。
「なるべく見つからないようにしないとね」
「初日のお前を見てるとその発言はフラグにしか聞こえねぇけどな」
「やだなーイリスったら……返す言葉もございません」
そんなこんなで、あたし達は損壊エリアへと向かった――――。
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