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第十六話「訓練開始」
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交流訓練当日。
あたしを含め交流訓練に参加するクワッドペタル以下の生徒は、学園の東部に位置する第三演習所に集合した。
第三演習所は広大な森林区域で、毎度のことながら本当に学園施設内なのか疑ってしまう。
集合と言っても整列して先生の話を聞くとかは一切ない。
事前に配られたプリントにルールや注意事項などが書いてあり、演習所に着いた生徒は続々と森林区域に入って行った。
交流訓練の内容は簡単に言うとドロケイ。
追跡側と逃亡側に分かれ、逃亡側は制限時間内で逃げ切るか、演習所の端に四箇所設置された安全区域に辿り着くことが勝利条件。
反対に追跡側は制限時間内に逃亡側の生徒を全員捕まえるか、安全区域に逃げ込まれないようにすることが勝利条件。
制限時間は七時間。
逃亡側は追跡側が持ってる手錠に掛けられると失格になるけど、逮捕後一時間以内に追跡側が持ってる鍵を手に入れれば救出することは可能。
数十名の先生が監視をしているけれど、基本的に演習中に介入することはないみたい。
あたしはクレアさんと合流して演習所である森の中に入ろうとした時、気まずいから会いたくない人に会ってしまった。
「おはよう二人とも。上手く別チームになって良かった。あれほどの啖呵を切られて同じチームだったら気まずいからね」
「ホントにね。でも訓練中まったく遭遇せず終わるなんてこともあるからまだ安心できないけど」
爽やかに挨拶するアリシアとクレアさん。
あたしはクレアさんの後ろに隠れるように移動するも、天然か意地悪か、アリシアはそれを見逃さない。
「サラも、今日はよろしく。お互い楽しんでいこう」
「え……あ、うん」
何やってんだろあたし。
なんかもう自分が惨めになってきた。
「ところでアンタ、パートナーはどうしたのよ? サラはアタシのパートナーだし、以前の子はまだ休学中でしょ?」
「ちょうどフリーの子がいてね。おっと、丁度来たみたいだ」
合流してきたのはなんとメイリーだった。
「メイリー!?」
「あ、サラちゃん。おはよう。皆さんお揃いでどうしたんですか?」
「いや何、挨拶してたところでね」
「……え、ちょっと待って。メイリー、アリシアと組むの?」
「成り行きで……」
「ってことはメイリーと別チームってこと? 余計にやり辛い……」
まさかあたしのメイリーが敵になるなんて。
「まーこれはあくまで訓練だし、お互い頑張ろっか」
「そうだね。怪我しないように気を付けてね」
メイリーが怪我したらチームの垣根を越えて助けちゃうだろうし、ホントに怪我だけはしないでほしい。
まーアリシアがいるから大丈夫だろうけど。
「それじゃあ時間もないしそろそろ行こうか。サラ、クレア……また後で」
そう言って、アリシアとメイリーは森の中へと入って行った。
逃亡チームは演習所の中心部。
追跡チームは中心部を囲う様に配置される。
あたしとクレアさんも所定の位置に待機する。
訓練には三千人以上参加しているはずだけど周りに声や気配はなく、クレアさんと二人、ポツンと森の中に置いて行かれたみたいだ。
「開始の信号が打ちあがったら訓練開始。“授吻”もその合図が出てからよ」
「はい……。ちなみにクレアさんはあたしの特性は知ってるんですか?」
「アリシアの試験を見てたからね。ただアタシに必要なのは魔力の回復力よりも質――濃度よ」
「濃度……ですか?」
「“ブレイド”が一度に放出出来る魔力の量は限られてるわ。アリシアの魔法は常時魔力をすり減らすから、魔力量や魔力の練度、つまりは魔力の練り上がる速度が問われる。対してアタシは一撃の爆発力が売りの魔法。さっきも言ったけど、“ブレイド”が一度に放出出来る魔力量に限りがある。つまりアタシの場合魔力の濃度が濃ければ濃いほど効果を発揮する。組む“ブレイド”によって何を重視するかは“シース”のセンスが問われるわよ」
「な、なるほど……」
全てを求めればキリがない。
相手に合わせて、魔力の練り方も工夫しなくちゃいけない。
「そろそろ始まるわ。いい? いくら魔力の回復が早いと言っても、こういういつ戦闘が始まるか分からない場合、最初の“授吻”では五割の魔力を渡すのがセオリーよ。最初に渡し過ぎると、戦闘が行われない場合無駄に魔力を失うし、少ないと戦闘になった時にすぐに対応できない」
アリシアのペタル試験のような相手がわかっている状態では、パートナーが最初から本気で戦えるように九割ほどの魔力を渡すらしい。
ただ今回はいつ戦闘になるか分からない。
“授吻”で渡した魔力が“ブレイド”の中で自然消滅する以上、こまめに魔力を渡す必要がある。
「…………ってことはクレアさんと何度も“授吻”するってこと!?」
「なに急に大声出してんのよ」
慌てふためくあたしを待たず、訓練開始の花火が派手に打ち上げられた――――。
あたしを含め交流訓練に参加するクワッドペタル以下の生徒は、学園の東部に位置する第三演習所に集合した。
第三演習所は広大な森林区域で、毎度のことながら本当に学園施設内なのか疑ってしまう。
集合と言っても整列して先生の話を聞くとかは一切ない。
事前に配られたプリントにルールや注意事項などが書いてあり、演習所に着いた生徒は続々と森林区域に入って行った。
交流訓練の内容は簡単に言うとドロケイ。
追跡側と逃亡側に分かれ、逃亡側は制限時間内で逃げ切るか、演習所の端に四箇所設置された安全区域に辿り着くことが勝利条件。
反対に追跡側は制限時間内に逃亡側の生徒を全員捕まえるか、安全区域に逃げ込まれないようにすることが勝利条件。
制限時間は七時間。
逃亡側は追跡側が持ってる手錠に掛けられると失格になるけど、逮捕後一時間以内に追跡側が持ってる鍵を手に入れれば救出することは可能。
数十名の先生が監視をしているけれど、基本的に演習中に介入することはないみたい。
あたしはクレアさんと合流して演習所である森の中に入ろうとした時、気まずいから会いたくない人に会ってしまった。
「おはよう二人とも。上手く別チームになって良かった。あれほどの啖呵を切られて同じチームだったら気まずいからね」
「ホントにね。でも訓練中まったく遭遇せず終わるなんてこともあるからまだ安心できないけど」
爽やかに挨拶するアリシアとクレアさん。
あたしはクレアさんの後ろに隠れるように移動するも、天然か意地悪か、アリシアはそれを見逃さない。
「サラも、今日はよろしく。お互い楽しんでいこう」
「え……あ、うん」
何やってんだろあたし。
なんかもう自分が惨めになってきた。
「ところでアンタ、パートナーはどうしたのよ? サラはアタシのパートナーだし、以前の子はまだ休学中でしょ?」
「ちょうどフリーの子がいてね。おっと、丁度来たみたいだ」
合流してきたのはなんとメイリーだった。
「メイリー!?」
「あ、サラちゃん。おはよう。皆さんお揃いでどうしたんですか?」
「いや何、挨拶してたところでね」
「……え、ちょっと待って。メイリー、アリシアと組むの?」
「成り行きで……」
「ってことはメイリーと別チームってこと? 余計にやり辛い……」
まさかあたしのメイリーが敵になるなんて。
「まーこれはあくまで訓練だし、お互い頑張ろっか」
「そうだね。怪我しないように気を付けてね」
メイリーが怪我したらチームの垣根を越えて助けちゃうだろうし、ホントに怪我だけはしないでほしい。
まーアリシアがいるから大丈夫だろうけど。
「それじゃあ時間もないしそろそろ行こうか。サラ、クレア……また後で」
そう言って、アリシアとメイリーは森の中へと入って行った。
逃亡チームは演習所の中心部。
追跡チームは中心部を囲う様に配置される。
あたしとクレアさんも所定の位置に待機する。
訓練には三千人以上参加しているはずだけど周りに声や気配はなく、クレアさんと二人、ポツンと森の中に置いて行かれたみたいだ。
「開始の信号が打ちあがったら訓練開始。“授吻”もその合図が出てからよ」
「はい……。ちなみにクレアさんはあたしの特性は知ってるんですか?」
「アリシアの試験を見てたからね。ただアタシに必要なのは魔力の回復力よりも質――濃度よ」
「濃度……ですか?」
「“ブレイド”が一度に放出出来る魔力の量は限られてるわ。アリシアの魔法は常時魔力をすり減らすから、魔力量や魔力の練度、つまりは魔力の練り上がる速度が問われる。対してアタシは一撃の爆発力が売りの魔法。さっきも言ったけど、“ブレイド”が一度に放出出来る魔力量に限りがある。つまりアタシの場合魔力の濃度が濃ければ濃いほど効果を発揮する。組む“ブレイド”によって何を重視するかは“シース”のセンスが問われるわよ」
「な、なるほど……」
全てを求めればキリがない。
相手に合わせて、魔力の練り方も工夫しなくちゃいけない。
「そろそろ始まるわ。いい? いくら魔力の回復が早いと言っても、こういういつ戦闘が始まるか分からない場合、最初の“授吻”では五割の魔力を渡すのがセオリーよ。最初に渡し過ぎると、戦闘が行われない場合無駄に魔力を失うし、少ないと戦闘になった時にすぐに対応できない」
アリシアのペタル試験のような相手がわかっている状態では、パートナーが最初から本気で戦えるように九割ほどの魔力を渡すらしい。
ただ今回はいつ戦闘になるか分からない。
“授吻”で渡した魔力が“ブレイド”の中で自然消滅する以上、こまめに魔力を渡す必要がある。
「…………ってことはクレアさんと何度も“授吻”するってこと!?」
「なに急に大声出してんのよ」
慌てふためくあたしを待たず、訓練開始の花火が派手に打ち上げられた――――。
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