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第十四話「交流訓練」
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やってしまった……。
「やってしまったぁあぁ!!」
クレアさんとメイリーを連れてあたしは机に突っ伏したまま叫んだ。
「アタシとアリシアの話だったのに、なんで最終的にアンタとアリシアが喧嘩してんのよ」
「喧嘩というかあたしが一方的に理不尽ギレしただけなんですけど」
あたしがやったのはただのヒステリックだ。
今のあたしとアリシアの間にちゃんとした約束があるわけでもない。
けど、あんなに簡単にあたしがクレアさんとパートナーになることを許したのが何故か気に入らなくて、感情任せに怒っただけ。
「サラちゃん、今からでもアリシアさんに謝ってきたら?」
「それは……そうなんだけど」
いくら人の良いアリシアでもあれはさすがに怒っただろうし謝りに行きたいのは山々だ。
けどやっぱり怖い。
「安心しなさい。アリシアは頭は良いけど天然だから。今頃、何が気に障ったんだろうかとか呑気に考えながら紅茶でも飲んでるわよ。そんなことより、問題はどうやってアリシアに目に物言わせるかよ」
「そんなことって……。で、何か案はあるんですか?」
まぁアリシアには後で謝ろ。
経緯はどうであれ今のあたしはクレアさんのパートナーのわけだし、クレアさんの力になれるように頑張らないと。
今回は事情を知ってるアリシアと組んでいる時とは訳が違う。
役立たずのレッテルを貼られれば今後の学園生活が危うい。
「シンプルに考えるならアリシアと決闘でもするのが一番手っ取り早いわ。けど学園への申請もしないといけないし、成績にも大きく響く。当然、ギャラリーも増えるでしょうね。それはアンタが嫌でしょ?」
「そりゃ嫌ですけど……」
もうあんな見せ物みたいなのは極力避けたい。
特に決闘――学園で正式に認可された勝負は、教師が立ち会う為、成績や評価に大きく影響を受ける。
“煌輝姫”と“煉燦姫”の決闘なんか注目の的だ。
クレアさんは大衆の目なんか今更だろうし、絶対に勝つ気でいるから決闘でも構わないだろう。
けどあたしを気遣ってクレアさんは別の案を用意してくれた。
「そこで目をつけたのが交流訓練よ」
「交流訓練……ですか?」
なんだろうそれと思っていると、アタシの境遇を知っているメイリーが教えてくれた。
「交流訓練はシングル、ダブルペタルの人がトリプル、クワッドペタルの人と組んで行う訓練だよ。実力の差がある二人でパートナーになることで互いに学びを得る訓練でもあり、今年入学したシングル生徒にとっては先輩と交流する機会でもあるの」
「そう。交流訓練ならあくまで授業と同じ評価がされるだけだし、周りも自分のことに集中してて他人の動向なんて気にしてない。いろいろと都合がいいのよ」
「ちなみに交流訓練って何するんですか?」
「ドロケイよ」
「ドロケイ……ドロケイ!? それって泥棒と警察に分かれてする鬼ごっこですよね!?」
「そうよ。もちろん魔法での妨害はあり。簡単な目的としては追う側は索敵技術を学び、逃げる側は退避術を学ぶ。ドロケイなんて言い方をすれば楽しそうだけど結構過酷よ。泥棒警察合わせて三千人以上が参加するわけだから」
去年参加したであろうクレアさんは落ち着いているが、今回が初参戦のあたしとメイリーは過酷と言われて怖気付いてしまう。
「ま、アンタは大船に乗った気でいなさい。アリシアのあの飄々とした顔を真っ青にしてあげるから」
「は、はぁ……」
自信満々に言うクレアさん。
複雑な心境を抱えたまま、あたしは交流訓練の日を迎えた――――。
「やってしまったぁあぁ!!」
クレアさんとメイリーを連れてあたしは机に突っ伏したまま叫んだ。
「アタシとアリシアの話だったのに、なんで最終的にアンタとアリシアが喧嘩してんのよ」
「喧嘩というかあたしが一方的に理不尽ギレしただけなんですけど」
あたしがやったのはただのヒステリックだ。
今のあたしとアリシアの間にちゃんとした約束があるわけでもない。
けど、あんなに簡単にあたしがクレアさんとパートナーになることを許したのが何故か気に入らなくて、感情任せに怒っただけ。
「サラちゃん、今からでもアリシアさんに謝ってきたら?」
「それは……そうなんだけど」
いくら人の良いアリシアでもあれはさすがに怒っただろうし謝りに行きたいのは山々だ。
けどやっぱり怖い。
「安心しなさい。アリシアは頭は良いけど天然だから。今頃、何が気に障ったんだろうかとか呑気に考えながら紅茶でも飲んでるわよ。そんなことより、問題はどうやってアリシアに目に物言わせるかよ」
「そんなことって……。で、何か案はあるんですか?」
まぁアリシアには後で謝ろ。
経緯はどうであれ今のあたしはクレアさんのパートナーのわけだし、クレアさんの力になれるように頑張らないと。
今回は事情を知ってるアリシアと組んでいる時とは訳が違う。
役立たずのレッテルを貼られれば今後の学園生活が危うい。
「シンプルに考えるならアリシアと決闘でもするのが一番手っ取り早いわ。けど学園への申請もしないといけないし、成績にも大きく響く。当然、ギャラリーも増えるでしょうね。それはアンタが嫌でしょ?」
「そりゃ嫌ですけど……」
もうあんな見せ物みたいなのは極力避けたい。
特に決闘――学園で正式に認可された勝負は、教師が立ち会う為、成績や評価に大きく影響を受ける。
“煌輝姫”と“煉燦姫”の決闘なんか注目の的だ。
クレアさんは大衆の目なんか今更だろうし、絶対に勝つ気でいるから決闘でも構わないだろう。
けどあたしを気遣ってクレアさんは別の案を用意してくれた。
「そこで目をつけたのが交流訓練よ」
「交流訓練……ですか?」
なんだろうそれと思っていると、アタシの境遇を知っているメイリーが教えてくれた。
「交流訓練はシングル、ダブルペタルの人がトリプル、クワッドペタルの人と組んで行う訓練だよ。実力の差がある二人でパートナーになることで互いに学びを得る訓練でもあり、今年入学したシングル生徒にとっては先輩と交流する機会でもあるの」
「そう。交流訓練ならあくまで授業と同じ評価がされるだけだし、周りも自分のことに集中してて他人の動向なんて気にしてない。いろいろと都合がいいのよ」
「ちなみに交流訓練って何するんですか?」
「ドロケイよ」
「ドロケイ……ドロケイ!? それって泥棒と警察に分かれてする鬼ごっこですよね!?」
「そうよ。もちろん魔法での妨害はあり。簡単な目的としては追う側は索敵技術を学び、逃げる側は退避術を学ぶ。ドロケイなんて言い方をすれば楽しそうだけど結構過酷よ。泥棒警察合わせて三千人以上が参加するわけだから」
去年参加したであろうクレアさんは落ち着いているが、今回が初参戦のあたしとメイリーは過酷と言われて怖気付いてしまう。
「ま、アンタは大船に乗った気でいなさい。アリシアのあの飄々とした顔を真っ青にしてあげるから」
「は、はぁ……」
自信満々に言うクレアさん。
複雑な心境を抱えたまま、あたしは交流訓練の日を迎えた――――。
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