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第五話「魔女の国」
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エネミット王国で聞いていた魔女の国の噂。
サラはそれが本当なのだと実感する。
賑わう港。
見渡す限り女性だけ。
それも系統は色々あるも共通して言えるのは全員が美形だということ。
「本当に女性ばっかりなんだ」
「そうだね。私も男というのは他国でしかお目にかからないかな」
「それに若い人が多いね」
「ユリリア人は短命だからね。一番の高齢でも齢五十にも満たない」
「え~と……こんなこと聞くのもアレなんだけど……どうやって人口維持してるの?」
恥ずかしいけど気になるから聞いてみた。
恥ずかしさを身振り手振りで誤魔化すあたしと対照的に、アリシアはさも当然のことのように答えた。
「人口維持? 移民が認められていない以上、普通に子を産んで増やす以外に方法があるのかい?」
「その、男の人なしでどうやって……子供作るの?」
「君は何を言っているんだい? 子供はキスすれば出来るんだよ?」
「急に知識レベルが下がった!?」
大体それなら“授吻”しまくってる時点でいろいろアウトだよ!?
と、内心ツッコミつつ、あたしは恥ずかしくてこれ以上深掘りするのはやめた。
用意された豪奢な馬車に乗り、整備された街道を走って数十分。
アリシアの家に到着したあたしは馬車から降りて見渡した。
伯爵家で仕えていたあたしとしては屋敷の広さはそれほど驚くものじゃない。
それでも、立派な屋敷を見せられてアリシアがそれなりの出自だと実感した。
「アリシアの家って結構やっぱりお金持ち?」
「まぁね」
やはり使用人はメイドさんばかり。
お風呂や食事でお世話になり、あたしは案内されてアリシアの部屋に言った。
ブロンドの髪を纏め、過ごしやすい格好で本を読んでいるアリシアは、あたしを確認すると本を閉じて机に置いた。
「いらっしゃい。もてなしは満足してもらえたかな?」
「何もかもお世話になっちゃって……ほんとありがとう」
「構わないさ。君は一応ゲストだからね。さて、明日からでも良いかと思ったんだけれど、二週間しか時間もないし始めようか」
「始めるって?」
「話しただろう? 君はこれから毎日私と“授吻”してもらうと。自身の中に内包する魔力を感じてもらわなくちゃいけないからね」
「あ~……ほんとに? 今から?」
「そう、今から」
アリシアは立ち上がってあたしとの距離を詰めてくる。
腰に手をやり、あたしの顎に手を添える。
「いいかい? 魔力はヘソの下あたりにある“魔力葯”に内包されている。そこから口に移動する魔力を感じ取るんだ」
鼻先が触れるほどの距離でアリシアは解説する。
あたしは胸の鼓動と恥ずかしさに耐えながら、アリシアのいう魔力の流れを感じ取ろうと意識を巡らせる。
そっと、アリシアの柔らかい唇が触れる。
あたしを助けてくれた時と同じく、優しく導くように唇を重ねる。
目を閉じてるあたしにアリシアの表情は見えないけど、多分何も気にせずあたしとキスしている気がする。
ヘソの下から、上に上にと熱のようなものが迫り上がってくる。
鼓動が早くなり、身体に熱を帯びていく。
全身のイレギュラーな感覚の中、微かに感じるそれを脳裏に覚えようと試みる。
あたしの意識が少しずつ熱の中に溶けていく気がする。
寝起きの夢と現実の間のような心地よさ。
徐々に意識が鋭く、深く、深く…………――――。
あ、これヤバ…………。
あたしの意識はプツリと途絶えた。
□◆□◆□◆□◆□◆□
気がつくと朝だった。
目を開けると知らない天蓋が真っ先に飛び込み、カーテンが閉じられている窓から漏れるように部屋に日が差し込んでいる。
上質なベッドと、柔らかくも包み込むような安心を与える重量感の毛布を肌全体で感じ取る。
「ん?」
あたしはこの感覚に違和感を覚えた。
シーツの感触を直に感じるこの感触。
「え……何であたし下着姿?」
動きやすく楽な下着だけ着て、それ以外は肌が完全に露出されていた。
寝起きで思考が鈍っているからか、意外とあたしは冷静だった。
人が来る前に服を着ようと思ったその時、あたしにまとわりつくように伸びる腕に心臓が飛び跳ねる。
驚嘆と恐怖で声を上げようとして喉元で突っかかる。
恐る恐るあたしは隣に視線を流すと、そこにはアリシアが気持ちよさそうに眠っていた。
あたしは思わずアリシアに背を向ける。
後ろでアリシアの気配、吐息を感じて早朝から心臓を早く鳴らしていた。
この状況、はたから見れば完全に事後。
幸いまだアリシアは眠っている。
起こさないようにゆっくりとベッドから抜けようとすると、
「んん…………」
「え、ちょっ!?」
グッと、抱き寄せるようにアリシアの腕があたしをホールドする。
お気に入りのぬいぐるみを抱えるように、アリシアはあたしに抱きついてきた。
加えて、肌の感触的にアリシアもあたしと同じく下着姿。
「ちょっと!? これはいろいろマズイ!」
起こすのも悪い。かといってこのままってのもマズイ。
なんとか抜け出そうとするけど、アリシアはしっかりとあたしを捕まえて離してくれない。
優しく腕を外そうとしても、本当に寝てるのか疑いたくなるくらい外れない。
アリシアの肌はスベスベで、ほのかに良い香りがしてくる。
もういっそ、このまま受け入れた方が…………
「って! ダメだから!!」
「んぁ?」
飛び跳ねるようにベッドから離脱する。
流石のアリシアも目を覚まし、まだ眠気が残る瞼を擦りながら起き上がった。
「おはようサラ」
「おはようアリシア……じゃなくて! なんであたし下着姿なの!?」
「なぜって……昨日の“授吻”で魔力を失って気絶してしまったからね。私のベッドで寝かせたんだ」
「服を脱がす必要性は?」
「寝る時は服を着ないものだろう?」
「カルチャーショックだよ!!」
女の人しかいない国だからその辺の羞恥心がないんだろうか。
とりあえずあたしは用意されていた服を着た。
アリシアは下着姿のままベッドの上で寛いでいる。
アリシアは奇麗に引き締まった体を持ちながらも女性らしい特徴は顕著に残る抜群のプロポーション。
あたしもエネミット王国では羨ましがられるくらいには体のラインに自信はあったけど、これが世界の広さかと圧倒されるほどの美しさにドキッとしてしまう、。
「さて、昨日の“授吻”で魔力の流れは分かったかな?」
「体のなかで熱いものを感じたけど……」
「今は私が無理やりサラの魔力を引っ張って来てるけど、本来はサラが供給する魔力を調整しないといけない。足りないと“ブレイド”が十分に魔法を使えないし、与えすぎると“シース”が魔力を練るのに時間を要してしまう」
「魔力を練る……」
「一度魔力を空にすると回復するのに時間がかかるんだ。だから“シース”は適度に魔力を残し、次の“授吻”に向けて魔力を練り上げる。とりあえずは魔力を失っても気を失わないようにしないといけないね」
「ハハ……精進します……」
「では時間も惜しいし、朝食を済ましたら早速“授吻”しようか」
“授吻”して気絶して休憩してまた“授吻”して。
そうして、アリシアの屋敷にお世話になってから二週間が経った。
サラはそれが本当なのだと実感する。
賑わう港。
見渡す限り女性だけ。
それも系統は色々あるも共通して言えるのは全員が美形だということ。
「本当に女性ばっかりなんだ」
「そうだね。私も男というのは他国でしかお目にかからないかな」
「それに若い人が多いね」
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「え~と……こんなこと聞くのもアレなんだけど……どうやって人口維持してるの?」
恥ずかしいけど気になるから聞いてみた。
恥ずかしさを身振り手振りで誤魔化すあたしと対照的に、アリシアはさも当然のことのように答えた。
「人口維持? 移民が認められていない以上、普通に子を産んで増やす以外に方法があるのかい?」
「その、男の人なしでどうやって……子供作るの?」
「君は何を言っているんだい? 子供はキスすれば出来るんだよ?」
「急に知識レベルが下がった!?」
大体それなら“授吻”しまくってる時点でいろいろアウトだよ!?
と、内心ツッコミつつ、あたしは恥ずかしくてこれ以上深掘りするのはやめた。
用意された豪奢な馬車に乗り、整備された街道を走って数十分。
アリシアの家に到着したあたしは馬車から降りて見渡した。
伯爵家で仕えていたあたしとしては屋敷の広さはそれほど驚くものじゃない。
それでも、立派な屋敷を見せられてアリシアがそれなりの出自だと実感した。
「アリシアの家って結構やっぱりお金持ち?」
「まぁね」
やはり使用人はメイドさんばかり。
お風呂や食事でお世話になり、あたしは案内されてアリシアの部屋に言った。
ブロンドの髪を纏め、過ごしやすい格好で本を読んでいるアリシアは、あたしを確認すると本を閉じて机に置いた。
「いらっしゃい。もてなしは満足してもらえたかな?」
「何もかもお世話になっちゃって……ほんとありがとう」
「構わないさ。君は一応ゲストだからね。さて、明日からでも良いかと思ったんだけれど、二週間しか時間もないし始めようか」
「始めるって?」
「話しただろう? 君はこれから毎日私と“授吻”してもらうと。自身の中に内包する魔力を感じてもらわなくちゃいけないからね」
「あ~……ほんとに? 今から?」
「そう、今から」
アリシアは立ち上がってあたしとの距離を詰めてくる。
腰に手をやり、あたしの顎に手を添える。
「いいかい? 魔力はヘソの下あたりにある“魔力葯”に内包されている。そこから口に移動する魔力を感じ取るんだ」
鼻先が触れるほどの距離でアリシアは解説する。
あたしは胸の鼓動と恥ずかしさに耐えながら、アリシアのいう魔力の流れを感じ取ろうと意識を巡らせる。
そっと、アリシアの柔らかい唇が触れる。
あたしを助けてくれた時と同じく、優しく導くように唇を重ねる。
目を閉じてるあたしにアリシアの表情は見えないけど、多分何も気にせずあたしとキスしている気がする。
ヘソの下から、上に上にと熱のようなものが迫り上がってくる。
鼓動が早くなり、身体に熱を帯びていく。
全身のイレギュラーな感覚の中、微かに感じるそれを脳裏に覚えようと試みる。
あたしの意識が少しずつ熱の中に溶けていく気がする。
寝起きの夢と現実の間のような心地よさ。
徐々に意識が鋭く、深く、深く…………――――。
あ、これヤバ…………。
あたしの意識はプツリと途絶えた。
□◆□◆□◆□◆□◆□
気がつくと朝だった。
目を開けると知らない天蓋が真っ先に飛び込み、カーテンが閉じられている窓から漏れるように部屋に日が差し込んでいる。
上質なベッドと、柔らかくも包み込むような安心を与える重量感の毛布を肌全体で感じ取る。
「ん?」
あたしはこの感覚に違和感を覚えた。
シーツの感触を直に感じるこの感触。
「え……何であたし下着姿?」
動きやすく楽な下着だけ着て、それ以外は肌が完全に露出されていた。
寝起きで思考が鈍っているからか、意外とあたしは冷静だった。
人が来る前に服を着ようと思ったその時、あたしにまとわりつくように伸びる腕に心臓が飛び跳ねる。
驚嘆と恐怖で声を上げようとして喉元で突っかかる。
恐る恐るあたしは隣に視線を流すと、そこにはアリシアが気持ちよさそうに眠っていた。
あたしは思わずアリシアに背を向ける。
後ろでアリシアの気配、吐息を感じて早朝から心臓を早く鳴らしていた。
この状況、はたから見れば完全に事後。
幸いまだアリシアは眠っている。
起こさないようにゆっくりとベッドから抜けようとすると、
「んん…………」
「え、ちょっ!?」
グッと、抱き寄せるようにアリシアの腕があたしをホールドする。
お気に入りのぬいぐるみを抱えるように、アリシアはあたしに抱きついてきた。
加えて、肌の感触的にアリシアもあたしと同じく下着姿。
「ちょっと!? これはいろいろマズイ!」
起こすのも悪い。かといってこのままってのもマズイ。
なんとか抜け出そうとするけど、アリシアはしっかりとあたしを捕まえて離してくれない。
優しく腕を外そうとしても、本当に寝てるのか疑いたくなるくらい外れない。
アリシアの肌はスベスベで、ほのかに良い香りがしてくる。
もういっそ、このまま受け入れた方が…………
「って! ダメだから!!」
「んぁ?」
飛び跳ねるようにベッドから離脱する。
流石のアリシアも目を覚まし、まだ眠気が残る瞼を擦りながら起き上がった。
「おはようサラ」
「おはようアリシア……じゃなくて! なんであたし下着姿なの!?」
「なぜって……昨日の“授吻”で魔力を失って気絶してしまったからね。私のベッドで寝かせたんだ」
「服を脱がす必要性は?」
「寝る時は服を着ないものだろう?」
「カルチャーショックだよ!!」
女の人しかいない国だからその辺の羞恥心がないんだろうか。
とりあえずあたしは用意されていた服を着た。
アリシアは下着姿のままベッドの上で寛いでいる。
アリシアは奇麗に引き締まった体を持ちながらも女性らしい特徴は顕著に残る抜群のプロポーション。
あたしもエネミット王国では羨ましがられるくらいには体のラインに自信はあったけど、これが世界の広さかと圧倒されるほどの美しさにドキッとしてしまう、。
「さて、昨日の“授吻”で魔力の流れは分かったかな?」
「体のなかで熱いものを感じたけど……」
「今は私が無理やりサラの魔力を引っ張って来てるけど、本来はサラが供給する魔力を調整しないといけない。足りないと“ブレイド”が十分に魔法を使えないし、与えすぎると“シース”が魔力を練るのに時間を要してしまう」
「魔力を練る……」
「一度魔力を空にすると回復するのに時間がかかるんだ。だから“シース”は適度に魔力を残し、次の“授吻”に向けて魔力を練り上げる。とりあえずは魔力を失っても気を失わないようにしないといけないね」
「ハハ……精進します……」
「では時間も惜しいし、朝食を済ましたら早速“授吻”しようか」
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