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第19話 最大の収入源
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私は質問する。
「動物園の収入源は肉だけですか?」
「もちろん、モサーベさんのような見学者が払うお金もあります」
「それらだけで本当に経営できているのですか」
「お金のことがそんなに気になるんですか?」
「えぇ」
「ふむ。収入源、ですか……。どうやらあれについて説明する時が来たようですね」
彼は腕時計を見る。
「今からなら大丈夫でしょう。それじゃ、とっておきの場所へご案内です! さぁ、行きましょう」
ドアへと歩き出す。今度はどこへ連れていこうというのか。
私も歩き出す。ジャンペンも。
とても豪華なコロシアム。今、私はそこの見学者用の観客席にいる。
場内の様子を見る。あちこちの星から来た宇宙人たちが通常の観客席に座っている。誰もが豪華な服を着ているらしい。
「アリムさん、これは一体どういうことですか」
「ふふふ。これぞ、特別コロシアム! 選ばれた人々だけが入場できる施設なのです」
「と、いうと?」
「お金持ち、政治家、軍隊の高級将校。そういった感じですね」
「成る程」
「掃いて捨てるほどいるグラディエーターたちの中で、トップ・レベルと評価できる者たち。このコロシアムに出場できるのは、そういうエリート中のエリートってわけです」
「ふむ」
「平民エリアのヒューマンたちが見ているような、俗っぽくてくだらない試合。ここのはぜんぜん違いますよ、芸術性すら感じる高度な戦いが繰り広げられるんです」
「分かりました。その上でおたずねしますが、それは動物園の収入とどう結びついているのですか」
「観戦料ですよ。たっぷりお金を払わないとここには入れません。モサーベさんは見学料をたっぷり支払いましたよね? だから特別にこうしてお連れしたんです」
「ありがとうございます」
一礼する。
「えー、それでです、話の続きですが。観客のみなさんも賭けをするわけです、グラディエーターの勝負に。これによる収入ってのもありますね」
「儲かるのですか」
「そりゃもうヤバいくらい。だからこそ、我々はせっせとヒューマンの面倒見てグラディエーターを育成してるんです」
「あの。元々の事業としては、絶滅寸前のヒューマンを保護して繁殖するということではなかったのですか」
「もちろんそうですよ。しかし、物事ってのは何であれお金がかかりますからね。こうやって儲けていかないと続きませんよ」
「はぁ」
「いいじゃないですか。優秀な連中がバリバリ稼ぎ、そのおこぼれが全体に回り、おかげで平凡クラスも底辺も生きていける。世の中そういうもんでしょう」
「まぁそうです」
だがこれでいいのだろうか。私の目から見ると、フェーレはヒューマンを使って商売をしているように思える。
もちろんそれは必要なことだ、少なくともある程度は。しかしここまで大がかりにやるのはなにか違う気がする。
絶滅しかけている生き物で金儲け。許されることなのか。
そう思っている間に場内が小さくどよめき、私は意識を現実世界に戻す。
「何が始まるのですか」
「そんなの一つしかないでしょう。試合ですよ!」
二匹のグラディエーターたちがバトルグラウンドに姿を現す。片方は短髪をしていて、整髪料を使っているのだろうか、それをツンツンに立てている。では残りの一匹はどうか。
見た瞬間に理解する。それは平民エリアの見学の時、そこのコロシアムで戦っていたヒューマンだ。
ナーヴを瞬殺したあのグラディエーター、モヒカン頭のアロガンである。
「動物園の収入源は肉だけですか?」
「もちろん、モサーベさんのような見学者が払うお金もあります」
「それらだけで本当に経営できているのですか」
「お金のことがそんなに気になるんですか?」
「えぇ」
「ふむ。収入源、ですか……。どうやらあれについて説明する時が来たようですね」
彼は腕時計を見る。
「今からなら大丈夫でしょう。それじゃ、とっておきの場所へご案内です! さぁ、行きましょう」
ドアへと歩き出す。今度はどこへ連れていこうというのか。
私も歩き出す。ジャンペンも。
とても豪華なコロシアム。今、私はそこの見学者用の観客席にいる。
場内の様子を見る。あちこちの星から来た宇宙人たちが通常の観客席に座っている。誰もが豪華な服を着ているらしい。
「アリムさん、これは一体どういうことですか」
「ふふふ。これぞ、特別コロシアム! 選ばれた人々だけが入場できる施設なのです」
「と、いうと?」
「お金持ち、政治家、軍隊の高級将校。そういった感じですね」
「成る程」
「掃いて捨てるほどいるグラディエーターたちの中で、トップ・レベルと評価できる者たち。このコロシアムに出場できるのは、そういうエリート中のエリートってわけです」
「ふむ」
「平民エリアのヒューマンたちが見ているような、俗っぽくてくだらない試合。ここのはぜんぜん違いますよ、芸術性すら感じる高度な戦いが繰り広げられるんです」
「分かりました。その上でおたずねしますが、それは動物園の収入とどう結びついているのですか」
「観戦料ですよ。たっぷりお金を払わないとここには入れません。モサーベさんは見学料をたっぷり支払いましたよね? だから特別にこうしてお連れしたんです」
「ありがとうございます」
一礼する。
「えー、それでです、話の続きですが。観客のみなさんも賭けをするわけです、グラディエーターの勝負に。これによる収入ってのもありますね」
「儲かるのですか」
「そりゃもうヤバいくらい。だからこそ、我々はせっせとヒューマンの面倒見てグラディエーターを育成してるんです」
「あの。元々の事業としては、絶滅寸前のヒューマンを保護して繁殖するということではなかったのですか」
「もちろんそうですよ。しかし、物事ってのは何であれお金がかかりますからね。こうやって儲けていかないと続きませんよ」
「はぁ」
「いいじゃないですか。優秀な連中がバリバリ稼ぎ、そのおこぼれが全体に回り、おかげで平凡クラスも底辺も生きていける。世の中そういうもんでしょう」
「まぁそうです」
だがこれでいいのだろうか。私の目から見ると、フェーレはヒューマンを使って商売をしているように思える。
もちろんそれは必要なことだ、少なくともある程度は。しかしここまで大がかりにやるのはなにか違う気がする。
絶滅しかけている生き物で金儲け。許されることなのか。
そう思っている間に場内が小さくどよめき、私は意識を現実世界に戻す。
「何が始まるのですか」
「そんなの一つしかないでしょう。試合ですよ!」
二匹のグラディエーターたちがバトルグラウンドに姿を現す。片方は短髪をしていて、整髪料を使っているのだろうか、それをツンツンに立てている。では残りの一匹はどうか。
見た瞬間に理解する。それは平民エリアの見学の時、そこのコロシアムで戦っていたヒューマンだ。
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