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第2話 アリムとジャンペン
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ヒューマン動物園についての話をする前に、地球に降り立った私の行動について少し話そう。
といっても、特別なことは何もない。宇宙船を修理会社に預け、ホテルに宿泊し、明日からのプランについて計画を練っただけだ。
宇宙船が直るまでの間をどう過ごすべきか。答えは決まっている、ヒューマン動物園へ行くのだ。
この星で面白そうなところはそこしかないし、それに、暇だけでなく金も余っているのだ。いい機会と思って見学していくのもいい。
そう考えた私はさっそく動物園に連絡し、明日からガイドに案内してもらうことにした。
ヒューマン動物園は野球のドーム球場を何百倍にも大きくしたような施設である。それはそうだろう、なにせ幾つもの都市を併合して作ったのだから。
武力でヒューマンたちを制圧したフェーレたちは、全ての争いをやめさせた後、こういったものを何か所かに建設してヒューマンたちを収容し、徹底的に管理することを始めた。
薬やマインド・コントロールなどでヒューマンたちの性質を操作し、飼育に適した状態へと導く。それから少しずつ少しずつ研究を重ね、どうすれば彼らをうまく扱えるか、その理論を確立していく。
そういった努力の末のヒューマン動物園である。いわばフェーレの英知の結晶だ。
このような偉大な施設に暮らすヒューマンとは果たしてどういう生物なのか。それほどのコストを払うに値するものなのか。
そんなことを考えながら待合室でぼんやりしていると、雇ったガイド一人に加えてもう一人の計二人がやって来て私に挨拶した。ガイドの方が喋る。
「こんにちは、モサーベさん。僕はアリムと申します」
「こんにちは。よろしくお願いします」
アリムはフェーレの男性である。歳は四十ほどらしい。
フェーレの平均寿命からみた場合、中年の少し手前というところだろうか。知性を感じさせるきれいな緑の目が印象的だ。
それにしても、彼の横にいる人物は誰なのか。
「アリムさん、そのお方は……」
「彼女はガイノイド(女性型の人型ロボット)のジャンペンですよ。見学の間、僕らを護衛するのが仕事です」
「失礼ですが、護衛を雇った記憶はないのですが」
「安心してください、無料サービスですから」
「はぁ……」
「ジャンペン、挨拶を」
「こんにちは。よろしくお願いします」
言って、彼女は頭を下げる。なるほど、洗練された動きだ。ガイノイドによくあるぎこちなさが殆どない。これほどのものを作れるとは、フェーレの技術力は想像以上らしい。
感心していると、アリムが話しかけてくる。
「では、行きましょうか。言うまでもありませんが、一日ですべてを見学するのはまず無理です。それに、いきなりヒューマンを見るといろいろショックを受けるかと思います。とりあえずは視聴覚室で動画を見て、基礎的な知識を手に入れましょう」
アリムはどこかへと歩き出す。私もジャンペンもついていく。
といっても、特別なことは何もない。宇宙船を修理会社に預け、ホテルに宿泊し、明日からのプランについて計画を練っただけだ。
宇宙船が直るまでの間をどう過ごすべきか。答えは決まっている、ヒューマン動物園へ行くのだ。
この星で面白そうなところはそこしかないし、それに、暇だけでなく金も余っているのだ。いい機会と思って見学していくのもいい。
そう考えた私はさっそく動物園に連絡し、明日からガイドに案内してもらうことにした。
ヒューマン動物園は野球のドーム球場を何百倍にも大きくしたような施設である。それはそうだろう、なにせ幾つもの都市を併合して作ったのだから。
武力でヒューマンたちを制圧したフェーレたちは、全ての争いをやめさせた後、こういったものを何か所かに建設してヒューマンたちを収容し、徹底的に管理することを始めた。
薬やマインド・コントロールなどでヒューマンたちの性質を操作し、飼育に適した状態へと導く。それから少しずつ少しずつ研究を重ね、どうすれば彼らをうまく扱えるか、その理論を確立していく。
そういった努力の末のヒューマン動物園である。いわばフェーレの英知の結晶だ。
このような偉大な施設に暮らすヒューマンとは果たしてどういう生物なのか。それほどのコストを払うに値するものなのか。
そんなことを考えながら待合室でぼんやりしていると、雇ったガイド一人に加えてもう一人の計二人がやって来て私に挨拶した。ガイドの方が喋る。
「こんにちは、モサーベさん。僕はアリムと申します」
「こんにちは。よろしくお願いします」
アリムはフェーレの男性である。歳は四十ほどらしい。
フェーレの平均寿命からみた場合、中年の少し手前というところだろうか。知性を感じさせるきれいな緑の目が印象的だ。
それにしても、彼の横にいる人物は誰なのか。
「アリムさん、そのお方は……」
「彼女はガイノイド(女性型の人型ロボット)のジャンペンですよ。見学の間、僕らを護衛するのが仕事です」
「失礼ですが、護衛を雇った記憶はないのですが」
「安心してください、無料サービスですから」
「はぁ……」
「ジャンペン、挨拶を」
「こんにちは。よろしくお願いします」
言って、彼女は頭を下げる。なるほど、洗練された動きだ。ガイノイドによくあるぎこちなさが殆どない。これほどのものを作れるとは、フェーレの技術力は想像以上らしい。
感心していると、アリムが話しかけてくる。
「では、行きましょうか。言うまでもありませんが、一日ですべてを見学するのはまず無理です。それに、いきなりヒューマンを見るといろいろショックを受けるかと思います。とりあえずは視聴覚室で動画を見て、基礎的な知識を手に入れましょう」
アリムはどこかへと歩き出す。私もジャンペンもついていく。
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