ヒューマン動物園

夏野かろ

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第1話 汚い水の惑星

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 これは、私(名はモサーベ)がまだ若かった頃の話である。




 ある時、宇宙を旅していた私は、宇宙船の調子がおかしいことに気づいた。
 調べてみたところ、それは今すぐトラブルを引き起こすようなものではなかったが、だからといって放置していい性質のものではない。

 私はどうすべきかを思案したが、幸いなことに、近くの星に修理できそうなところがあった。
 そういうわけで、水や食料といった物資を補給する必要もあり、私はその星にしばらく滞在することにした。



 そこは、現地の知的生命体の言葉では「地球」と呼ばれているようだった。
 地球。地面が多く存在する球体という意味なのだろうか。しかし、宇宙から見た地球の様子は、地面よりも水が多いように思えた。

 汚い水だった。かつては青く澄んで美しかったらしいが、とてもそうは思えなかった。
 あれが地球の海ということだが、最初、私は信じられなかった。悪い冗談とすら感じた。しかし事実だ。

 宇宙船のコンピューターによると、あれは現地の知的生命体が環境を破壊した結果なのだという。
 自分たちの住む星をこんなにまで汚すとは、知性ある生き物のすることではない。だがそうなのだ。

 いったい彼らは何を考えてこのような結果を引き起こしたのか。
 それを知るためには、まず彼らについて語る必要がある。



 彼らはヒューマンという名で呼ばれている、二足歩行型の生物である。
 なかなか優れた知性を持ち、かつては科学力によって宇宙進出を果たした。そして非常に好戦的で、それほどの力を同胞に向け、大戦争を行い、原始的な核兵器や毒ガスなどで大量殺りくを実行した。

 そういったことは当然のように環境を汚染する。また、彼らの文明は電気に大きく依存したものであったため、維持するためには多くの火力発電所や原子力発電所が必要だった。
 いうまでもなく、それらは環境汚染を助長する。こういったことが積み重なり、彼らが気づいた時、地球は疲労の限界に達しつつあった。



 フェーレと呼ばれる宇宙人たちが地球を発見した時、星は死に始めていた。フェーレは、ヒューマン風にいうなら猫の顔をした人間だが、知性はずっと上である。そして生き物を愛する心もだ。
 フェーレたちは考えた。「我々がヒューマンを保護しなければ、いずれ彼らは絶滅してしまうだろう」。だから決心した、その運命から救おうと。

 ヒューマンを救うことは環境破壊を食い止めることと同じであり、また、地球の死を阻止することとも同じである。地球が生きればヒューマン以外の生き物たちも生きる。つまり、ヒューマンを救うことは全てを救うことなのだ。
 この大義名分の元にフェーレたちは熱心に活動し、長い歳月と多大な労力、費用を投じた末に作り上げた。

 この、ヒューマン動物園を。
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