VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

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第12章 すべてを変える時

最終話 いつか革命の起きる日が But there must be another way

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《スエナの視点》
 激戦の翌日、朝。現実世界。ボクはスーツに身を包み、リビングで会社に行く支度の真っ最中だ。
 壁の薄型テレビから、情報局の特別チームが革命戦団のアジトを急襲したとのニュースが流れている。

 まったく、物騒な世の中だよね。どこもかしこもテロリストだらけ。
 あぁいった人たちは、リトル・マザーの圧制が嫌だからテロを起こすってのは分かる。それにボクだってマザーは嫌いさ。監視大好きの陰険ババァめ!

 でも、奴に逆らったって勝てるわけない。だったらおとなしく服従してたほうがマシだ。嫌な話だけどそうするしかない。
 ボクはスーツの上着を着る。とたん、いきなり部屋が揺れる。食卓の上のスマホが警報音を鳴らし始め、テレビの人が言う。

「緊急地震速報です。ただいま入りました情報によりますと、千葉県香取市にて震度5の地震が発生した模様です。マグニチュードは……」

 スマホの警報音はまだ鳴り響いている。うるさいなぁ、もう。
 ボクは右耳の無線機から脳波を飛ばしてスマホを操作し、アプリを止める。ようやく静かになる。

 そういえば、君。こんな噂を知ってる? この警報アプリの真の目的は、情報局がボクら国民の個人情報を集めることだって。
 ウソくさい話だよね。陰謀論というか、被害妄想というか……。

 でも完全なウソとも思えない。だって局の情報収集力は超人的なレベルだ。奴らはSNSのささいな政治批判の投稿すら見つけ出して逮捕する。
 こんなの、局がみんなのスマホを乗っ取って監視しているからだとしか思えないよ。

 LMが主張するような言論の自由なんて存在しないんだ。そう考えると、テロリストたちのいう”革命の必要性”も分かるよ。暴力的なやり方には反対だけど。
 いや、今こんなことを考えてどうするんだ? ボヤボヤしてると遅刻する、急ごう。



 駅へと続く道を歩く。晴れた空、いい温度、さわやかな風がボクの髪を揺らす。
 グッドだね。でも、そんな気分をぶち壊す奴がいる。上空を飛ぶドローンだ。

 誰も言わないけど誰もが知っている。あれは国民を監視するスパイ道具、治安維持の美名のもとに使われるLMの目だ。
 もし警報アプリが個人情報を集めていないとしても、ドローンが飛んでいる限り、誰もが一挙手一投足を監視され続ける。

 それだけじゃない。こうして街を歩けば、あちこちに防犯カメラという名の監視カメラがあることが分かるし、場所によっては盗聴マイクも存在する。
 まさに地獄。2084年の日本は、オーウェルの『一九八四年』なんて目じゃないくらいの監視社会だ。

 自由に生きたければ監視をやめさせなくちゃいけない。LMを解体し、LMを支援する大企業を叩かなくちゃいけない。
 みんなそう思ってるし、ボクだって同感だ。でも、どうすればLMを倒せる? 監視社会を終わりにできる?

 テロのような武力闘争では勝てない。だからってペンの力に訴えても敵の武力で圧し潰される。
 LMの支配体制は完璧だ。正直どうしようもない。でもね、思うんだよ。

 ボクや仲間たちはゲームで、レヴェリー・プラネットで、連合軍を作ってヘル・レイザーズを倒した。一致団結してレーヴェに勝った。
 いわば革命を成し遂げたんだ。じゃあ現実世界でもいつか同じような革命が起きるんじゃないか?

 監視社会なんて要らない、国民の誰もがそう思って団結して行動すれば、いつかLMを倒せるんじゃないか?
 その日が近い未来に訪れることをボクは願う。同時に、君、こうも思うんだよ。

 本当にベストといえるのは、監視社会が始まる前、みんながその危険に気づいて阻止することだったって。
 ガンが進行してから治療に取りかかるよりも、早期発見で早期治療したほうがいい。問題が深刻化してからじゃ遅いんだよ。

 だから君に伝えたい。
 もし君が暮らしている社会が、監視社会への道を歩み始めているのなら。今のうちに全力で止めるんだ。

 不可能なんてことは無い。みんなが団結して監視を拒否すれば、絶対その通りになる。
 そう考えて欲しいんだ。人々にはそれだけの力がある、ボクは強く信じるよ。

 心の底からね。
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