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第12章 すべてを変える時

第215話 攻撃的防御 Counter-attack

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《レーヴェの視点》
 いよいよ来たか!

(撃て! なんとしてでも食い止めろっ!)

 あちらこちらで銃声が鳴り始める。しばらくは前衛部隊が踏ん張るはずだ、私はその間に状況を確かめよう。情報ウィンドウを開く。
 まずは敵と味方の戦力差だ。大雑把にみて4対1……なかなか苦しい。だが個人個人の戦闘力は格段にこちらが上だ、そこまで悪い戦況ではない。

 とはいえ敵の強引な突撃を止められるほど余裕があるわけでもない。ならば積極策を採ろう。私は周囲の人々に告げる。

「これより全員で味方を支援し、敵を叩く! 出撃だ!」

 ドレッド・ヘアーの黒人男性が陽気な調子で私に聞く。

「メンバーの割り振りは?」
「パワーが3億5000万未満の者はポイントAへ。それ以外は私と共にBへ」
「了ょー解っ!」

 もしBの敵を倒せれば、そのままAの背後を攻めて挟み撃ちにできる。そうなれば奴らなど一瞬で全滅だ。
 ならば私みずからの指揮で必ずBを制圧する。スエナのウサギ王国がいかに多数であろうと、ライオンたるレイザーズと戦えば死ぬだけだと教えてやる!


《スエナの視点》
 ボクと仲間が隠れている柱のずっと向こうには、5人前後の敵がいる。奴らはコンテナ数個を盾にして籠城し、すさまじい勢いで弾幕を張っている。
 これじゃ近づけないよ。バリアして突っこもうとしても一瞬でエナジーが尽きるし、いったいどうしたらいいんだ?

 とりあえず誰かに相談してみよう。チーム内チャットを開く。

(ねぇ、何かいいアイデアはない?)

 グレーの迷彩服を着た男性が答える。

(俺に聞かれても……。敵に繋がる通路はあの一本道だけ、でもあんな弾幕の濃いとこ、進めませんよ!)

 まさにその通り。あそこに飛びこむのは自殺行為としかいいようがない。
 じゃあ迂回して別の所を攻めたほうがいいか? いや、そんなのん気なことをしてる場合じゃない。どれだけ犠牲を払ってもここを攻略すべきだ。

 こうして悩んでいても仕方ない。このまま時間切れで負けるくらいなら、いっそイチかバチかで突撃しよう。
 そう思った直後、通路の奥から何か小さな物体が投げこまれる。1つ、2つ、3つ……これは?

 しまったっ!


《レーヴェの視点》
 バァンと派手な音が響く。先ほど味方が投げこんだ手りゅう弾が炸裂したのだ。レーダー画面から多くの敵影が消滅していく。
 この程度の攻撃でこんなに死人が出るとは、敵は予想以上に弱いらしい。楽勝だ! 号令!

「突撃ーッ! 私に続け!」

 数人の仲間を率い、私は通路を突き進む。全員でためらわずに飛び出して銃を構える。発射!

「地獄に落ちろッ!」

 我々はマフィア映画の抗争シーンのように撃ちまくる。弾丸が乱れ飛び、敵が次々に死んでゆく……まさに大量虐殺だ!
 ハハハッ! 思わず私は笑ってしまう。それとは対照的にスエナたちは混乱し、悲鳴をあげて右往左往する。

「きゃああぁぁああぁぁぁぁーーーっ!」
「逃げろ!」
「いや、隠れるんだ!」
「みんな、落ち着いて!」
「どこに!?」
「ワァァァァァァーーーッ!」
「スエナ、こっち!」

 私は叫ぶ。

「どうした、雑魚ども! かかってこい! 臆したか!」

 そう言いながら死にぞこないたちを撃ち殺す。キル・カウントが増えるたびに喜びがこみあげ、現実世界では決して得られない充足感が心を満たしていく。
 これだ! これのために私は重課金し、このゲームを遊んでいる! レヴェリー・プラネット万歳!

 やがてほとんどの敵が倒れ、どうにか生き延びた数人があちこちの障害物の陰に逃げこんでいく。ドレッド・ヘアーの男性が私にたずねる。

「さて、残りカスはどうするよ。放置か、それとも全部お掃除か」
「後者に決まっているだろう? ヘル・レイザーズに逆らった者は皆殺し、それが掟だ」
「オッケィ! じゃ、みんなで手分けしてぶっ殺してこう!」

 彼はそう言って右へ歩き出す。他の仲間たちも思い思いの方向に散っていく。では、私は正面の赤錆色の鉄骨を攻略するとしよう。
 予想が正しければ、あそこの裏にやつがいるはずだ。今回の事件の首謀者、八つ裂きの刑に処すべきゴミクズが!
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