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第12章 すべてを変える時

第185話 秋霜烈日の制裁を! Gross address

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《レーヴェの視点》
 私は、我がヘル・レイザーズが保有するグレート・ベースの大ホールにいる。そこの演壇に立っている。
 眼下へ視線をやると、集合したレイザーズのメンバーがひしめき合い、私の話が始まるのを待っているのが分かる。

 私は内心で苦笑する。(今の自分は、ゲティスバーグの演説を行うリンカーン大統領だな)。あるいは、出師の表を奉じようとする諸葛孔明か。
 演壇からやや離れたところに立っているホワイト・ウィッチが、個人用のチャット回線を使い、私に言う。

(ほら~、さっさと始めなよ! みんな待ちくたびれてんだからさ~)
(あぁ……)

 一度だけ深呼吸して心を落ち着け、用意していた原稿用紙を宙に浮かべ、読み始める。

「諸君。この12号サーバーに蔓延する我らへの悪意と敵意、激しい憎しみは、我らを滅ぼさんと望む者たちの連合軍を生み出し、連合軍は宣戦を布告した。
 問うまでもないことを敢えて問おう、なぜ我らはこのような苦しみを甘んじて受けねばならないか?
 我らが偉大だからだ。強大だからだ。弱き者どもはしばしば嫉妬の心に駆られ、いたずらに強者の不幸を望む。彼ら彼女らは自分より幸福な人間が許せない。
 このような種類の人間は、ルサンチマンの奴隷にして怒りの奴隷である。健全な精神、即ち向上心を持たぬ愚か者である。人を軽蔑する楽しみに溺れる、狂った猿だ。
 かくの如き災いに狙われている我らは、ではいかにこれを振り払うべきか。
 撃滅が答えである。身の程を知らぬ豚たちを一匹残らず駆逐せよ。奴らが望む革命、下剋上の夢が幻に過ぎぬことを、言葉ではなく痛みによって奴らに教育せよ。
 殺せ! 殴り、叩き、踏み潰し、切り刻み、刃と銃で打ちのめせ! 害虫ことごとく死すべし、すべての敵を殲滅せよ!
 ヘル・レイザーズに敗北無し! 叫べ、唱和! 秋霜烈日! 我らに仇なす者どもに制裁を!」

 群衆の誰かが怒鳴る。

「秋霜烈日! 制裁!」

 さらに誰かが怒鳴る。

「秋霜烈日、制裁! 制裁、制裁!」

 これが呼び水となったのだろうか、唱和の声は加速度的に増大してゆく。

「制裁!」「制裁!」
「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」
「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」
「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」「制裁!」

 圧倒的な熱が場に満ち溢れる。そうだ、これでいい。これこそ私が求めていた結果、士気高揚と団結だ。
 それにしても、ここまで盛り上げられるとは。私には弁士としての才能があるのかもしれないな。


《白木/ホワイト・ウィッチの視点》
 おー、いいんじゃない、いいんじゃない? 思った以上にウケてるねぇ。
 そっとレーヴェの顔を見ると、ずいぶん満足そうな顔をしている。これあれだな、自分は凄い才能を秘めてるとか、そーゆーカンチガイをしてうぬぼれてるな。

 おバカさんよのぉ。だって、演説が成功したのはこいつの実力が原因じゃないもん。あたしが前もって工作しといたおかげだもん。
 レーヴェの演説に合わせてタイミングよく騒ぎ出す連中、いわゆるサクラを群衆にまぎれこませ、あたしが個人チャットで指示すると同時に「制裁!」と叫ばせる。

 演説ってのは、何人かが唱和を始めると他の連中もつられて唱和し始めるから、この手の下準備が超大事。それをしっかり実行したあたしこそ真の功労者じゃね?
 まぁレーヴェがどんだけカンチガイしようと、別にあたしは構わないけど。とにかく演説が成功して何よりだ、じゃ、そろそろ赤羽さんに報告の連絡をしよ。
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