148 / 227
第9章 この社会を革命するために 前編
第145話 戦いの嵐の前の静けさ Soon go crazy
しおりを挟む
俺たちは誰にも邪魔されず、正々堂々とした態度で前庭に入る。全員で警戒しながら、前庭の奥にある屋敷へ進んでいく。
そこにもここにも謎の巨大オブジェクトが転がっている。材質は様々で、石だったり金属だったりするが、しかし共通点もある。どれも彫刻みたいな外見なのだ。
もう少し詳しく言えば、それらの中で生き物をかたどった作品は一つもない。奇妙にねじれた鉄の棒とか、メビウスの輪とか、抽象的なものばかりだ。
逆立ちした小型ピラミッドみたいな物体を見ながら俺は言った。
「この屋敷のあるじは彫刻家だったのかねぇ……」
返事をしたのはパティだ。
「かもしれませんよ。本当、変なものばっかり……」
「芸術好きの金持ちがせっせと買い集めたのかもしれんぜ」
「こんなにたくさん?」
「現実世界にはコレクターって人種がいるだろ。古い郵便切手に何億円も出すなんて野郎はゴロゴロしてる。じゃ、彫刻を集めたがる奴がいてもおかしくない」
「なるほどね……」
ドレが「お喋りするのもほどほどにな」と注意する。彼は続けて言った。
「モンスターが出現するゾーンに入ってるんだ、いつ出てくるかわからん。注意を怠るなよ」
俺は「分かってるさ」と返してグロック18の残弾ゲージを確認する。一発も撃ってないんだからもちろん満タンだ。今ここでモンスターが来てもすぐ発砲できる。
来るなら来やがれ。地獄に送りこんでやるからな!
何事もなく屋敷の玄関にたどり着く。長い年月、雨風にさらされたせいでボロボロだ。
しかし、門をくぐって中に入ってみると、内部は良好な状態であると気づく。ホコリまみれでクモの巣だらけだが、マイナス評価となりそうなのはその程度だ。
巨人サイズの調度品はどれもまだ使えそうなクオリティを保っているし、廊下や壁に大きなヒビが入ってるわけでもない。
誰かが中途半端ながらもこの屋敷をメンテナンスしている証拠だ。そして驚くべきことに、無人のはずなのに電灯が作動している。
廊下を歩いている俺は、右にいるドレに聞く。
「なぁ、いったい誰が明かりを点けたんだろう?」
「ここを縄張りにしている奴らに決まっている。ま、もっと簡単な答えもあるが」
「それは?」
「ゲームの運営さ。ワンダラーの諸姉諸兄が楽しく冒険できるよう、こうして明るくしてくれてるわけだ」
「つまりゲームによくあるご都合主義か……」
ドレの右にいるパティが異論を唱えた。
「もちろんその通りと思うけど、個人的にはちょっと違う意見もあります」
俺は「というと?」と聞き返す。
「お屋敷であるからには、主人に仕える使用人がいるはずでしょう。そいつらがここを保守しているのでは?」
「しかしさ、主人はとっくに死んでるだろうし、じゃあ使用人もとっくにいなくなってるんじゃ?」
「ごく普通に考えればその通り。でも、現実の世界にもあるでしょ? 家事手伝いをしてくれるアンドロイドやらガイノイドやらが。だとすると……」
どこからか物音が聞こえてくる。出来の悪いロボットが立てる騒がしい駆動音だ。
ドレが言う。
「この廊下の先に曲がり角が見えるだろう。音はあそこからだ……」
彼が示す場所はここからだと死角になっている。なるほど、何者かが身をひそめるにはうってつけだ。
そういえばなんであれがないんだ?
「なぁ、ドレ。ジャマーは?」
「おいおい、知らんのか? ステルス能力を持つモンスターは、このダンジョンには出現しないぞ」
「でもPKが……」
「ここはPK禁止のダンジョンだ」
「あー、そうか。だからジャマーなしでも安心できるっていう……」
「寝ぼけたこと言ってないで、しっかりしてくれ! 戦闘準備!」
ドレがショットガンを構える。そういえばこれは何だろう、ベネリM3 スーパー90のストック無し版かな。取り回しやすそうだ。
パティも愛銃を構えて俺に言う。
「シルバー、準備は?」
「わかってる!」
左手のグロック18はそのままに、右手でソードの柄を取り出し、刀身を出す。
「ほら、OKだ!」
「グッド。じゃ、ドレ、いきましょう」
「ラジャー」
いつでもい、モンスターども!
そこにもここにも謎の巨大オブジェクトが転がっている。材質は様々で、石だったり金属だったりするが、しかし共通点もある。どれも彫刻みたいな外見なのだ。
もう少し詳しく言えば、それらの中で生き物をかたどった作品は一つもない。奇妙にねじれた鉄の棒とか、メビウスの輪とか、抽象的なものばかりだ。
逆立ちした小型ピラミッドみたいな物体を見ながら俺は言った。
「この屋敷のあるじは彫刻家だったのかねぇ……」
返事をしたのはパティだ。
「かもしれませんよ。本当、変なものばっかり……」
「芸術好きの金持ちがせっせと買い集めたのかもしれんぜ」
「こんなにたくさん?」
「現実世界にはコレクターって人種がいるだろ。古い郵便切手に何億円も出すなんて野郎はゴロゴロしてる。じゃ、彫刻を集めたがる奴がいてもおかしくない」
「なるほどね……」
ドレが「お喋りするのもほどほどにな」と注意する。彼は続けて言った。
「モンスターが出現するゾーンに入ってるんだ、いつ出てくるかわからん。注意を怠るなよ」
俺は「分かってるさ」と返してグロック18の残弾ゲージを確認する。一発も撃ってないんだからもちろん満タンだ。今ここでモンスターが来てもすぐ発砲できる。
来るなら来やがれ。地獄に送りこんでやるからな!
何事もなく屋敷の玄関にたどり着く。長い年月、雨風にさらされたせいでボロボロだ。
しかし、門をくぐって中に入ってみると、内部は良好な状態であると気づく。ホコリまみれでクモの巣だらけだが、マイナス評価となりそうなのはその程度だ。
巨人サイズの調度品はどれもまだ使えそうなクオリティを保っているし、廊下や壁に大きなヒビが入ってるわけでもない。
誰かが中途半端ながらもこの屋敷をメンテナンスしている証拠だ。そして驚くべきことに、無人のはずなのに電灯が作動している。
廊下を歩いている俺は、右にいるドレに聞く。
「なぁ、いったい誰が明かりを点けたんだろう?」
「ここを縄張りにしている奴らに決まっている。ま、もっと簡単な答えもあるが」
「それは?」
「ゲームの運営さ。ワンダラーの諸姉諸兄が楽しく冒険できるよう、こうして明るくしてくれてるわけだ」
「つまりゲームによくあるご都合主義か……」
ドレの右にいるパティが異論を唱えた。
「もちろんその通りと思うけど、個人的にはちょっと違う意見もあります」
俺は「というと?」と聞き返す。
「お屋敷であるからには、主人に仕える使用人がいるはずでしょう。そいつらがここを保守しているのでは?」
「しかしさ、主人はとっくに死んでるだろうし、じゃあ使用人もとっくにいなくなってるんじゃ?」
「ごく普通に考えればその通り。でも、現実の世界にもあるでしょ? 家事手伝いをしてくれるアンドロイドやらガイノイドやらが。だとすると……」
どこからか物音が聞こえてくる。出来の悪いロボットが立てる騒がしい駆動音だ。
ドレが言う。
「この廊下の先に曲がり角が見えるだろう。音はあそこからだ……」
彼が示す場所はここからだと死角になっている。なるほど、何者かが身をひそめるにはうってつけだ。
そういえばなんであれがないんだ?
「なぁ、ドレ。ジャマーは?」
「おいおい、知らんのか? ステルス能力を持つモンスターは、このダンジョンには出現しないぞ」
「でもPKが……」
「ここはPK禁止のダンジョンだ」
「あー、そうか。だからジャマーなしでも安心できるっていう……」
「寝ぼけたこと言ってないで、しっかりしてくれ! 戦闘準備!」
ドレがショットガンを構える。そういえばこれは何だろう、ベネリM3 スーパー90のストック無し版かな。取り回しやすそうだ。
パティも愛銃を構えて俺に言う。
「シルバー、準備は?」
「わかってる!」
左手のグロック18はそのままに、右手でソードの柄を取り出し、刀身を出す。
「ほら、OKだ!」
「グッド。じゃ、ドレ、いきましょう」
「ラジャー」
いつでもい、モンスターども!
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~
オイシイオコメ
SF
75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。
この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。
前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。
(小説中のダッシュ表記につきまして)
作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜
八ッ坂千鶴
SF
普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。
そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……!
※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる