VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

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第7章 革命前夜

第122話 捨て身 Battle maniacs

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《レーヴェの視点》
 ここまで話し終えた時、誰かが部屋に入ってくる。そいつは大きな声で陽気に挨拶してくる。

「ちーっす! 遅れてすまねぇ!」

 スレイヤーZだ。すまねぇという言葉こそ口にしたが、そう思っていそうな雰囲気は微塵も感じ取れない。
 まったく。いらだちを抑え、とりあえず私も挨拶する。

「ごきげんよう、Z」

 ウィッチも元気よく「ちわー!」と言い、続けて「あのさ、どこ行くかアイデアある?」と話題をつなぐ。

「おいおい、お前ら何も考えてなかったの?」
「うん」
「うへぇ。行き当たりばったり(笑)」
「ねーねー、レーヴェのアイデアは?」
「個人的にはキリング・ハンドを倒しにいきたいが……」

 Zは上機嫌に「いいじゃんいいじゃん、超オッケー!」と言い、ウィッチも「賛成!」と答える。決まりだな。さっそく出発しよう。


《スレイヤーZの視点》
 ベースを出発してはや5分。俺たちはハンドの部屋にいる。宣戦布告をすませたハンドが空中に浮かぶ、その姿をながめて俺はニヤつく。

「いつ見てもくだらねぇポンコツだよな、こいつは」

 ウィッチが「ホントよねー」とまるで緊張感のないセリフでこたえる、それと対照的に張り詰めた雰囲気のレーヴェが言う。

「油断するな……気を抜けば死ぬ」

 俺は「わぁーってるよ!」と返し、左手のジャガーナートを握りしめる。さっきプラグインを挿して電気属性をつけたからな、大ダメージ間違いなし!
 あとはおとり役のウィッチの仕事次第だ。

「おい、ボケっとすんな! 出番だ!」
「あーい、了解~」

 適当な返事をして彼女は駆けだす。その手にはショットガンがある。
 えらく古い銃だが大丈夫か? そんな心配をよそに彼女はハンドの前に立ち、攻撃を始める。

「ほらほら、こっちこっち!」

 ウィッチの散弾が当たっているのが見える。あんな遠くからじゃロクなダメージにならんだろうが、そんなん重要じゃない。
 大事なのはハンドの敵意を煽ってウィッチを狙うよう仕向けることだ。目論見は成功したらしく、奴の火炎放射がウィッチに浴びせられる。

 彼女はなおも「ほらほら~!」と挑発し、あちこち逃げ回る。いくらか被弾してるがわざとやってんだろう、「ノロマで殺しやすい相手」を演じてるんだ。
 このドタバタ劇の間に俺は走り、ハンドの左側面をとる。そしてちょうど反対側にはレーヴェがいる、挟み撃ちの状況だな!

 ウィッチに有効打を与えられないハンドが業を煮やし、動きを止めて指ミサイルを撃ち始める。背中がガラ空きだ、チャンス!

「いくぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 一気に近づいて斬る! ほぼ同時にレーヴェもやってきて加勢する。
 ハンドのHPゲージがすさまじい勢いで削れていく、だがまだ3分の2も残ってやがる。ランクSの防御力は伊達じゃないってわけか。

 俺たちに気づいたハンドが振り向く。飛んでいった5つの指先が元の位置に戻っていく。あれが終われば今度は俺たちが狙われる、間違いねぇ。
 なおも攻めるか、いったん引くか。「レーヴェ、どうする?」「左後ろへ下がれ」。指示された通りに跳び退く。

 レーヴェは逆に右後ろへ下がる。彼は素早くソードをしまい、持ち物欄から白塗装のFN P90を出して実体化し、構える。
 そのまま撃ち始めながら言う。「Z、君も!」「おう!」。お前ばっか目立つなんて許さねぇ、MVPになるのはこの俺だ! やってやる!

 愛銃のHK G36(ブルパップ式の特別仕様)を実体化させ、構えると同時に撃つ。300万かけて改造した高級品だ、どんな相手もぶち抜く!
 さっきの剣撃のダメージよりは劣るが、それでもかなりの勢いでハンドを痛めつける。敵の残りHPは約30パーセント……そろそろ暴走モード突入だな。

 ハンドは俺とレーヴェの中間地点に急行する。手のひらと甲の両面から炎を吹き出し、そのまま高速で回り出す。周囲を薙ぎ払う動きだ。
 そういやウィッチはどうなった? 同じことを考えたらしいレーヴェが言う。「ウィッチ、大丈夫か?」「まぁねぇー」「気をつけろ」。

 会話が終わるやいなや炎が俺に襲いかかり、視界を覆う。さすがに防御しないとやべぇ、バリアでしのぐ。
 レーヴェの指示がきこえる。「ウィッチ、守れ」「バリアで?」「その間に回復だ」「りょーかい」。俺は会話に割りこむ。

「レーヴェ、お前はどうすんだ?」
「攻める」
「この状況で!?」
「殺される前に殺す。それが私の戦闘哲学だ」

 遠くのレーヴェの姿が見える。バリアは張っていない、だから炎が来るたびに焼かれている。しかしまるでお構いなしって顔で銃を撃っている。

「Z、捨て身でかかれ! 撃ち殺せ!」
「いいねぇ、上等!」

 こちらが苦しい時は敵だって苦しい。そういう場面では絶対に下がっちゃいけない、ビビれば負ける。
 殺されるリスクなんて考えるな! 常に殺すことだけを考えろ! バリアを解いてG36の引き金をひく。

「死ねッ、おらぁぁぁッ!」

 焼かれながら撃ち続ける。俺のHPもハンドのHPもどんどん減る、どっちが先に死ぬかのレースだ!
 ウィッチが言う。「ちょっとちょっと、やばくない!?」「うるせぇんだよ!」「ちょっと、レーヴェ!」「撃て、撃てッ! もう少しで殺せる!」。

 彼のP90が非常識なほど大量の弾丸を吐き出しているのがわかる。いつみてもやべぇ火力だ、改造にどれだけ使ったんだか。ぜってぇ500万を超えてるよ。
 銃のついでに彼のHPゲージも見る。そろそろ残り10パーだ、そういう俺だって残り少ない。だがハンドはさらに少ない。本当にもう少しだ、あと一押し!

「ポンコツ! くたばれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 G36の残弾が空になる。そのタイミングでハンドの攻撃がやみ、大きく体を震わせた後、地面に崩れ落ちる。
 動かない。死んだんだ。すなわち俺たちの勝利! 爆発的な喜びの衝動が俺を叫ばせる。

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 殺したッ!」

 最高ーーーーーーーーーーーーーーーーー!
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