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第7章 革命前夜
第112話 明文化された禁止事項でなければ何をしてもよい Flawless theory
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ロン毛が語り出す。
「あのさ。PKされる奴は、そういうリスクがあると知った上でダンジョンに行くわけだろ?
なら、どんな結果になろうと、自業自得の自己責任じゃねぇか。
殺されるのが嫌なら、そもそも行かなきゃいい。禁止ダンジョンという安全地帯で遊べばいいんだ。
自ら危険に飛びこんどいて、殺されたら「頭にきた」だの「ムカつく」だの、おかしいぜ!」
さて、どう反論しよう?
「ご意見たしかにごもっとも。その上で言いましょう。
レイザーズはPKだけでなく、MPKも仕掛けてくる。だから、禁止ダンジョンにいても殺されるリスクがある。
昔、うちのメンバーがそういう目に遭ってね。それに対して抗議したら、”MPKは規約で禁止されてないからやっていい”、そう返された。
どう思う?」
「実際その通りだろ。規約で禁止されてなきゃ何をやってもOK、それがプラネットだ」
「でも貴方の理屈では、禁止ダンジョンはPKされたくない人のための安全地帯、そうでしょ?」
「あぁ」
「ここなら大丈夫と安心していたら、裏技じみたやり方で殺される。どこが安全なの?」
ロン毛は不快感を漂わせ、反論してくる。
「もう一度いうが、規約で禁止されてなきゃ何をやってもOKだ」
「ならこれは? これも昔、うちのメンバーがやられたんだけどね。
レイザーズの何人かがつるんで、ターゲットに大量のメールを送って嫌がらせする」
「うざいメールなんて現実でもたくさん届くだろ。スパムとかあぁいうの。
でも、そういうのを送る奴らが逮捕されたなんて話は聞いたことねぇ。だって禁止されてないんだ、どこに問題がある?」
いったいこいつは何のつもりだ。なぜレイザーズの肩を持つような発言をする? いや、落ち着け……。
「じゃあさらにお伺いするけど。転売屋についてはどう思う?」
「はあ?」
「世間ではしばしば転売屋が非難される。けど、転売を禁止する法律はない。完全な合法。
でも、だからって許せるものじゃないし、そういう気持ちは貴方も感じてるでしょ?」
「ハ! 何を言うかと思えば……!
実際、合法なんだからやっていいじゃねぇか。もし転売がおかしいなら、スーパーはどうなる?
スーパーがやってるのは、おろし売り業者から安く仕入れて消費者に高く売る、つまり転売そのものだ。
これに文句を言う奴なんていねぇよ。そうだろ?」
「スーパーと転売屋では事情が違う! スーパーは、多くの人に適切な価格で商品を売るというビジネスでしょ?
そこには購入するチャンスの公平性がある。
一方の転売屋は、コンサートのチケットのような個数限定の商品を買い占め、価格を釣り上げて売りさばく。
チャンスの公平どころか、買い占めて不公平を生み出して儲けるという、正反対の歪んだビジネスだ!」
「でも禁止されてないんだからいいじゃねーか。お前、理屈っぽくてうるせぇよ!」
「何……!」
ざわつきが高まり、みんなの怒りの電圧が上がっていくのを感じる。どうする、パトリシア? どう事態を収拾する?
その時、大柄な白人男性が手を挙げ、言う。
「ちょっと俺に発言させてくれ。ネメシスのリーダー、アンドリューだ」
≪アンドリューの視点≫
まったく、愚か者どもめ。道徳哲学の議論なんぞ何の役に立つ? 必要なのは俺にとっての利益、すなわち、連合軍という捨て駒の確保だ。
俺はそのためにここに来た。それをあのロン毛が邪魔するなら、排除するまで。
「いい加減に黙れ、クソ野郎。お前の正体なんぞお見通しだ」
「あぁ!?」
「さっき、うちのメンバーからメール連絡があってな。お前、普段からMPKをしてるそうじゃないか」
「は? 何を……」
「言い逃れするな! こっちには証拠の動画がある!」
「……くそっ!」
人殺しAが人殺しBをかばう。世の中しょせんそんなものだ、くだらない。
「あのさ。PKされる奴は、そういうリスクがあると知った上でダンジョンに行くわけだろ?
なら、どんな結果になろうと、自業自得の自己責任じゃねぇか。
殺されるのが嫌なら、そもそも行かなきゃいい。禁止ダンジョンという安全地帯で遊べばいいんだ。
自ら危険に飛びこんどいて、殺されたら「頭にきた」だの「ムカつく」だの、おかしいぜ!」
さて、どう反論しよう?
「ご意見たしかにごもっとも。その上で言いましょう。
レイザーズはPKだけでなく、MPKも仕掛けてくる。だから、禁止ダンジョンにいても殺されるリスクがある。
昔、うちのメンバーがそういう目に遭ってね。それに対して抗議したら、”MPKは規約で禁止されてないからやっていい”、そう返された。
どう思う?」
「実際その通りだろ。規約で禁止されてなきゃ何をやってもOK、それがプラネットだ」
「でも貴方の理屈では、禁止ダンジョンはPKされたくない人のための安全地帯、そうでしょ?」
「あぁ」
「ここなら大丈夫と安心していたら、裏技じみたやり方で殺される。どこが安全なの?」
ロン毛は不快感を漂わせ、反論してくる。
「もう一度いうが、規約で禁止されてなきゃ何をやってもOKだ」
「ならこれは? これも昔、うちのメンバーがやられたんだけどね。
レイザーズの何人かがつるんで、ターゲットに大量のメールを送って嫌がらせする」
「うざいメールなんて現実でもたくさん届くだろ。スパムとかあぁいうの。
でも、そういうのを送る奴らが逮捕されたなんて話は聞いたことねぇ。だって禁止されてないんだ、どこに問題がある?」
いったいこいつは何のつもりだ。なぜレイザーズの肩を持つような発言をする? いや、落ち着け……。
「じゃあさらにお伺いするけど。転売屋についてはどう思う?」
「はあ?」
「世間ではしばしば転売屋が非難される。けど、転売を禁止する法律はない。完全な合法。
でも、だからって許せるものじゃないし、そういう気持ちは貴方も感じてるでしょ?」
「ハ! 何を言うかと思えば……!
実際、合法なんだからやっていいじゃねぇか。もし転売がおかしいなら、スーパーはどうなる?
スーパーがやってるのは、おろし売り業者から安く仕入れて消費者に高く売る、つまり転売そのものだ。
これに文句を言う奴なんていねぇよ。そうだろ?」
「スーパーと転売屋では事情が違う! スーパーは、多くの人に適切な価格で商品を売るというビジネスでしょ?
そこには購入するチャンスの公平性がある。
一方の転売屋は、コンサートのチケットのような個数限定の商品を買い占め、価格を釣り上げて売りさばく。
チャンスの公平どころか、買い占めて不公平を生み出して儲けるという、正反対の歪んだビジネスだ!」
「でも禁止されてないんだからいいじゃねーか。お前、理屈っぽくてうるせぇよ!」
「何……!」
ざわつきが高まり、みんなの怒りの電圧が上がっていくのを感じる。どうする、パトリシア? どう事態を収拾する?
その時、大柄な白人男性が手を挙げ、言う。
「ちょっと俺に発言させてくれ。ネメシスのリーダー、アンドリューだ」
≪アンドリューの視点≫
まったく、愚か者どもめ。道徳哲学の議論なんぞ何の役に立つ? 必要なのは俺にとっての利益、すなわち、連合軍という捨て駒の確保だ。
俺はそのためにここに来た。それをあのロン毛が邪魔するなら、排除するまで。
「いい加減に黙れ、クソ野郎。お前の正体なんぞお見通しだ」
「あぁ!?」
「さっき、うちのメンバーからメール連絡があってな。お前、普段からMPKをしてるそうじゃないか」
「は? 何を……」
「言い逃れするな! こっちには証拠の動画がある!」
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