VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

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第5章 上流階級の優雅で華麗な日々

第89話 掟 Zero tolerance

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 冷静な声でレーヴェが言う。

「メセドナ、詳しく頼む」
「たぶん4人パーティーだね。男と女が2人ずつ」
「見覚えのあるワンダラーはいるか?」
「ピンク髪の女は、昔どこかで見たような……」
「スエナという名前では?」
「あっ、それそれ!」
「ふむ……」

 なぜかレーヴェは眉間にシワを寄せる。俺はたずねる。

「どうした、そんな顔して?」
「最近、スエナがなにか企んでいると聞いてね。仲間を集め、うちと争奪戦をするつもりらしい」

 はぁ!? 争奪戦!? 

「アハハ! 冗談きついよ!
 だって、うちと張りあえる強さを持ってるのは、ネメシスだけだぜ? あそこ以外、どこのクランがうちを倒せるの?」
「その通りだが、でも知り合いが教えてくれたインテル(intel, 情報)だ。嘘と決めつけるのは合理的ではない」
「じゃあ、仮にその通りだとしてよ? そんな身の程知らずなバカは、お仕置きしてやる必要があるだろ」
「つまり……」
「今から奴を殺すってこと!」

 そうだ、死刑だ。スエナと彼女の仲間たちは、今、ヘル・レイザーズ専用の狩り場を荒らしている。そんな重罪は絶対に許せない!

「ヘル・レイザーズの掟、その1。俺たちの利益を傷つける者は、誰であろうと必ず殺す」
「まぁ待て! まずみんなの意見を聞いて……」

 サンドマンが割りこむ。

「議論の必要なんてねぇ! 掟にしたがってPKすりゃいいんだ」
 それに、ミサイル・タートルの時にお前は言ったぜ。「PKがしたいなら今度つきあう」って。まさか忘れたわけじゃないよな……?」
「わかっている。なら、最終確認だ。PKに反対する者は手を挙げてくれ」

 誰も挙手しない。すなわち、PK決定だ。うなずいてレーヴェはチーム内チャットを開き、言う。

(そうと決まればさっそくやろう。メセドナ、スエナたちの状況を報告してくれ)
(モンスターと戦ってるね。クリスタル・ドール、数は一匹)

 へぇ! 激レア・モンスターじゃん。スエナって幸運だな。もっとも、俺たちに見つかった時点で不運に転落だけど。

(よし。じゃあ、作戦を伝える。ステルス状態で奴らを包囲し、火力を集中して撃破。いいな?)

 なんの面白味もないアイデアだが、しかしそれでいい。あんなザコは正攻法で充分だ。
 俺たちは数グループに分かれ、ステルス・スキルを起動する。敵のジャマーは予想通り低性能で、俺たちのスキルを妨害できない。

 激しいスタミナ消費と引き換えに、俺たちは透明になる。俺は愛銃のメカム BXPを握って心を落ち着ける。
 スエナ、覚悟しろ! ぶち殺す!
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