89 / 227
第5章 上流階級の優雅で華麗な日々
第86話 暗殺計画 The richer you are, the unsafer you become
しおりを挟む
俺は会社の受付係に事情を話し、パパの部屋があるフロアへ行く。
いつもの調子で入室する。机で書類仕事をしているパパは、俺に気づき、あいさつしてくる。
「よく来たな。まぁ椅子に座れ……」
「いきなり呼び出して、なんかあったの?」
「情報局から秘密の手紙が来た。いや、ちょっと待て……」
パパは机上の機械をいじる。俺の背後で音がして、何枚かの秘密ドアが降りる。
これらのドアは、電波を遮ることで盗聴器を無意味化する。他にも様々な機密保護の仕組みがあるらしいが、詳しくは知らない。それよりも話を進めよう。
「パパ、ここまでするほど重大な話なの?」
「なにせ命に関わる話だ。念には念を入れんとな」
「命……?」
「本題の前に質問するが、新宿のテロを覚えてるか?」
さっきニュースでいってたことを思い出せばいいわけだ。
「武装戦線がやったっていう、あれでしょ」
「そうだ。情報局の手紙によると、奴らの次のテロ計画は暗殺。そして、暗殺候補の一人として、お前の名前が挙がっているらしい……」
……マジ? マジで?
「はは、嘘でしょ?」
「局がわざわざ伝えてきた話だぞ? 嘘なわけがない」
「……(顔面蒼白)」
「まぁ落ち着け。手紙を読んだ限り、お前が狙われると確実に決まったわけではない。他の誰かが犠牲者になる可能性も充分にあり得る」
「でもリスクがあるって事実はその通りじゃん! どうしたらいいの?」
「問題が解決するまで、おとなしくするしかないな。
外出を控え、なるべく家で過ごすようにして、どうしても出かけるなら必ずボディーガードを連れていく。他にも……」
「いやだよ、ボディーガードなんて! うっとうしい!」
パパは渋い顔で説得を始める。
「仕方ないだろう、お前。命にはかえられんよ」
「でもさ……!」
「テロリストがいつどこで襲ってくるかわからん以上、常に警戒するしかない。だったら、多少の不自由は我慢すべきだ。分かるだろう?」
「そうだけど、いや、もぅ……! クソッ!」
ちくしょう! あんなクズどものせいで、俺の自由が狭まるだって? そんなん冗談、死んでも認められるもんか!
世間にはごまんと金持ちがいるのに、なんでよりによって俺がこんな目に? こんなのおかしいよ!
これだから金持ちの生活は大変なんだ。今回みたいにテロのターゲットにされたり、誘拐されたり、いつも危険と隣り合わせの人生を強いられる。
貧乏人はそんな苦労なんて想像すらしないだろう。そのくせ金持ちを、搾取するブルジョワだのなんだの、ボロクソ言うんだから、心底ムカつくね!
世の中はどうしてこうも理不尽なんだろう? いじめられるのはいつだって金持ちだ。
いつもの調子で入室する。机で書類仕事をしているパパは、俺に気づき、あいさつしてくる。
「よく来たな。まぁ椅子に座れ……」
「いきなり呼び出して、なんかあったの?」
「情報局から秘密の手紙が来た。いや、ちょっと待て……」
パパは机上の機械をいじる。俺の背後で音がして、何枚かの秘密ドアが降りる。
これらのドアは、電波を遮ることで盗聴器を無意味化する。他にも様々な機密保護の仕組みがあるらしいが、詳しくは知らない。それよりも話を進めよう。
「パパ、ここまでするほど重大な話なの?」
「なにせ命に関わる話だ。念には念を入れんとな」
「命……?」
「本題の前に質問するが、新宿のテロを覚えてるか?」
さっきニュースでいってたことを思い出せばいいわけだ。
「武装戦線がやったっていう、あれでしょ」
「そうだ。情報局の手紙によると、奴らの次のテロ計画は暗殺。そして、暗殺候補の一人として、お前の名前が挙がっているらしい……」
……マジ? マジで?
「はは、嘘でしょ?」
「局がわざわざ伝えてきた話だぞ? 嘘なわけがない」
「……(顔面蒼白)」
「まぁ落ち着け。手紙を読んだ限り、お前が狙われると確実に決まったわけではない。他の誰かが犠牲者になる可能性も充分にあり得る」
「でもリスクがあるって事実はその通りじゃん! どうしたらいいの?」
「問題が解決するまで、おとなしくするしかないな。
外出を控え、なるべく家で過ごすようにして、どうしても出かけるなら必ずボディーガードを連れていく。他にも……」
「いやだよ、ボディーガードなんて! うっとうしい!」
パパは渋い顔で説得を始める。
「仕方ないだろう、お前。命にはかえられんよ」
「でもさ……!」
「テロリストがいつどこで襲ってくるかわからん以上、常に警戒するしかない。だったら、多少の不自由は我慢すべきだ。分かるだろう?」
「そうだけど、いや、もぅ……! クソッ!」
ちくしょう! あんなクズどものせいで、俺の自由が狭まるだって? そんなん冗談、死んでも認められるもんか!
世間にはごまんと金持ちがいるのに、なんでよりによって俺がこんな目に? こんなのおかしいよ!
これだから金持ちの生活は大変なんだ。今回みたいにテロのターゲットにされたり、誘拐されたり、いつも危険と隣り合わせの人生を強いられる。
貧乏人はそんな苦労なんて想像すらしないだろう。そのくせ金持ちを、搾取するブルジョワだのなんだの、ボロクソ言うんだから、心底ムカつくね!
世の中はどうしてこうも理不尽なんだろう? いじめられるのはいつだって金持ちだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ストランディング・ワールド(Stranding World) 第二部 ~不時着した宇宙ステーションが拓いた地にて新天地を求める~
空乃参三
SF
※本作はフィクションです。実在の人物や団体、および事件等とは関係ありません。
※本作は海洋生物の座礁漂着や迷入についての記録や資料ではありません。
※本作には犯罪・自殺等の描写などもありますが、これらの行為の推奨を目的としたものではありません。
※本作はノベルアッププラス様でも同様の内容で掲載しております。
※本作は「ストランディング・ワールド(Stranding World) ~不時着した宇宙ステーションが拓いた地にて兄を探す~」の続編となります。そのため、話数、章番号は前作からの続き番号となっております。
LH(ルナ・ヘヴンス歴)五一年秋、二人の青年が惑星エクザローム唯一の陸地サブマリン島を彷徨っていた。
ひとりの名はロビー・タカミ。
彼は病魔に侵されている親友セス・クルスに代わって、人類未踏の島東部を目指していた。
親友の命尽きる前に島の東部に到達したという知らせをもたらすため、彼は道なき道を進んでいく。
向かう先には島を南北に貫く五千メートル級の山々からなるドガン山脈が待ち構えている。
ロビーはECN社のプロジェクト「東部探索体」の隊長として、仲間とともに島北部を南北に貫くドガン山脈越えに挑む。
もうひとりの名はジン・ヌマタ。
彼は弟の敵であるOP社社長エイチ・ハドリを暗殺することに執念を燃やしていた。
一時は尊敬するウォーリー・トワ率いる「タブーなきエンジニア集団」に身を寄せていたが、
ハドリ暗殺のチャンスが訪れると「タブーなきエンジニア集団」から離れた。
だが、大願成就を目前にして彼の仕掛けた罠は何者かの手によって起動されてしまう。
その結果、ハドリはヌマタの手に寄らずして致命傷を負い、荒れ狂う海の中へと消えていった。
目標を失ったヌマタは当てもなくいずこかを彷徨う……
「テロリストにすらなれなかった」と自嘲の笑みを浮かべながら……
トライアルズアンドエラーズ
中谷干
SF
「シンギュラリティ」という言葉が陳腐になるほどにはAIが進化した、遠からぬ未来。
特別な頭脳を持つ少女ナオは、アンドロイド破壊事件の調査をきっかけに、様々な人の願いや試行に巻き込まれていく。
未来社会で起こる多様な事件に、彼女はどう対峙し、何に挑み、どこへ向かうのか――
※少々残酷なシーンがありますので苦手な方はご注意ください。
※この小説は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、エブリスタ、novelup、novel days、nola novelで同時公開されています。
遥かなるマインド・ウォー
弓チョコ
SF
西暦201X年。
遥かな宇宙から、ふたつの来訪者がやってきた。
ひとつは侵略者。人間のような知的生命体を主食とする怪人。
もうひとつは、侵略者から人間を守ろうと力を授ける守護者。
戦争が始まる。
※この物語はフィクションです。実在する、この世のあらゆる全てと一切の関係がありません。物語の展開やキャラクターの主張なども、何かを現実へ影響させるような意図のあるものではありません。
最強のVRMMOプレイヤーは、ウチの飼い猫でした ~ボクだけペットの言葉がわかる~
椎名 富比路
SF
愛猫と冒険へ! → うわうちのコ強すぎ
ペットと一緒に冒険に出られるVRMMOという『ペット・ラン・ファクトリー』は、「ペットと一緒に仮想空間で遊べる」ことが売り。
愛猫ビビ(サビ猫で美人だから)とともに、主人公は冒険に。
……と思ったが、ビビは「ネコ亜人キャラ」、「魔法攻撃職」を自分で勝手に選んだ。
飼い主を差し置いて、トッププレイヤーに。
意思疎通ができ、言葉まで話せるようになった。
他のプレイヤーはムリなのに。
ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー
びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。
理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。
今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。
ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』
計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る!
この物語はフィクションです。
※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。
絶命必死なポリフェニズム ――Welcome to Xanaduca――
屑歯九十九
SF
Welcome to Xanaduca!
《ザナドゥカ合衆国》は世界最大の経済圏。二度にわたる世界終末戦争、南北戦争、そして企業戦争を乗り越えて。サイバネティクス、宇宙工学、重力技術、科学、化学、哲学、娯楽、殖産興業、あらゆる分野が目覚ましい発展を遂げた。中でも目立つのは、そこら中にあふれる有機化学の結晶《ソリドゥスマトン》通称Sm〈エスエム、ソードマトン〉。一流企業ならば必ず自社ブランドで売り出してる。形は人型から動物、植物、化け物、機械部品、武器。見た目も種類も役目も様々、いま世界中で普及してる新時代産業革命の象徴。この国の基幹産業。
〔中略〕
ザナドゥカンドリームを求めて正規非正規を問わず入国するものは後を絶たず。他国の侵略もたまにあるし、企業や地域間の戦争もしばしば起こる。暇を持て余すことはもちろん眠ってる余裕もない。もしザナドゥカに足を踏み入れたなら、郷に入っては郷に従え。南部風に言えば『銃を持つ相手には無条件で従え。それか札束を持ってこい』
〔中略〕
同じザナドゥカでも場所が違えばルールも価値観も違ってくる。ある場所では人権が保障されたけど、隣の州では、いきなり人命が靴裏のガムほどの価値もなくなって、ティッシュに包まれゴミ箱に突っ込まれるのを目の当たりにする、かもしれない。それでも誰もがひきつけられて、理由はどうあれ去ってはいかない。この国でできないことはないし、果たせぬ夢もない。宇宙飛行士から廃人まで君の可能性が無限に広がるフロンティア。
――『ザナドゥカ観光局公式パンフレット』より一部抜粋
愛しのアリシア
京衛武百十
SF
彼女の名前は、<アリシア2234-LMN>。地球の日本をルーツに持つ複合企業体<|APAN-2(ジャパンセカンド)>のロボティクス部門が製造・販売するメイド型ホームヘルパーロボットの<アリシアシリーズ>の一体である。
しかし彼女は、他のアリシアシリーズとは違った、ユニークな機体だった。
まるで人間の少女のようにくるくると表情が変わり、仕草もそれこそ十代の少女そのものの、ロボットとしてはひどく落ち着きのないロボットなのである。
なぜなら彼女には、<心>としか思えないようなものがあるから。
人類が火星にまで生活圏を広げたこの時代でも、ロボットに搭載されるAIに<心>があることは確認されていなかった。それを再現することも、意図的に避けられていた。心を再現するためにリソースを割くことは、人間大の機体に内蔵できるサイズのAIではまったく合理的ではなかったからである。
けれど、<千堂アリシア>とパーソナルネームを与えられた彼女には、心としか思えないものがあるのだ。
ただしそれは、彼女が本来、運用が想定されていた条件下とは全く異なる過酷な運用が行われたことによって生じた<バグ>に過ぎないと見られていた。
それでも彼女は、主人である千堂京一を愛し、彼の役に立ちたいと奮闘するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる