87 / 227
第5章 上流階級の優雅で華麗な日々
第84話 渡る世間は危険だらけ Feel like walking the tightrope
しおりを挟む
現実世界に戻り、どうやってパパの会社まで行くかを考える。そうだな……。車で海沿いの道をドライブしていこう。
あそこは景色がいい。道の大部分が崖のそばにあって、眼下に広がる海を見渡すことができる。
それに、なかなかスリリングなのがいい。道幅が狭いから、対向車とすれ違うだけで緊張する。特にカーブは危険だ、滑りやすい雨の日はマジで事故りやすい。
もっとも、俺には無縁な話だけど。こちとら子どもの頃から運転教育を受けてるんだ、18歳でようやく免許を取るような貧乏人とはワケが違う。
いざとなったら自動運転機能を使えばいいし、不安要素はどこにもない。じゃ、さっそく行くとしよう!
俺は、長年にわたって愛用しているスポーツ・カーを飛ばし、例の崖沿いの道へ乗りこむ。
たらたら走りながら海を眺める。いつ見てもきれいだ。とはいえちょっと恐ろしい、だって事故ったらこの海へ落ちるんだ。まず助からない。
大ケガしたってサイボーグ技術で生き延びられる世の中になったが、さすがに脳がやられちまったらどうしようもない。
油断しないで安全運転を心がけないとな。そう思った直後にあくびが出る。やれやれ……ちょっと疲れてるのかな?
少し休むことにして、自動運転モードに切り替える。BGMがわりにカー・ラジオをつける、男性ニュース・キャスターの声が聞こえてくる。
「ただいまより、国民安全保障特別委員会からの緊急発表が行われます。ご清聴をお願いします」
なんだよ、急に。どうせ嫌な話だろ? せっかくいい気分だってのに、やめろよ。
俺はラジオを止めようと思う。しかし考え直す、だってパパも今ごろこの発表を聞いてるかもしれない。
後で面会した時、ニュースを聞かなかったことがバレて「勉強不足!」などと怒られるのはごめんだ。しょうがない、ご清聴してやろうじゃないの。
ラジオから議長の声が流れだす。まったく冴えない、色気もクソも無いババアの声だ。つまんない!
「国民の皆様、こんにちは。今日はデモについてお話いたします。
先日に発生した、3人の死者が出たデモは、実にいたましいものでした。また、これがきっかけとなって次々に暴力的なデモが起きております。
それだけではありません。この社会的混乱に便乗し、各種テロ組織の動きも活発になっています。
この前の、日本革命解放軍による事件を思い出してください。
インフラ会社の社員を誘拐し、料金値下げの要求を聞かなければ殺害するなど、絶対に許されない鬼畜の所業です」
なぁーにが革命解放軍だよ。ルサンチマンをこじらした、底辺のクズの集まりのくせに。革命なんて偉そうなこといっても、やってることは野蛮なテロじゃん。
もしこれがプラネットだったら、解放軍なんて速攻でぶち殺してるところだ。社会に迷惑かける落ちこぼれ集団め!
「また、これ以外のテロについても思い出してください。特に、10人もの命が失われた、新宿のあのテロを!
これの実行組織は武装戦線ですが、なるほど、武装の名前が示す通りに暴力的で過激です。こんな組織の存在を許していいのでしょうか?」
そうなんだよなぁ、武装戦線は解放軍よりもクズなんだ。どちらがマシかと聞かれたら、俺は迷わず解放軍と答えるね。
世間じゃ「テロ組織にはそれぞれ違いがある」なんてほざく奴もいるけど、俺に言わせてもらえばどれも似たり寄ったりだね。みんなゴミカスさ。
「情報局の調査によれば、武装戦線は次のテロを計画中とのことです。近いうちに犯行予告が行われるでしょう。
しかしどうか安心してください。われわれ安全保障委員会は、国民という子どもたちを守る、頼れるお母さんです。
リトル・マザーは今度こそテロを防ぎ、武装戦線を壊滅します。必ず、必ずです!」
へぇ、そいつはすごいや。だからなんだってんだ、バーカ! 何を言い訳したところで、新宿のテロを防げなかったのは事実だろ! クソババア!
俺みたいな上流階級は、最初からあんたなんて信用してないぜ。頼りになるのは大金で雇ったボディーガードや防弾車だ。
自分の身は自分で守る、これが常識。そして、他人の力をアテにして、アテが外れてテロでくたばるのは貧乏人と相場は決まってんだ。
そうでなきゃ、警備の隙を突かれた間抜けぐらいだな。ま、どっちにせよ俺には無縁の話だ。対岸の火事みたいなもんだね。
あそこは景色がいい。道の大部分が崖のそばにあって、眼下に広がる海を見渡すことができる。
それに、なかなかスリリングなのがいい。道幅が狭いから、対向車とすれ違うだけで緊張する。特にカーブは危険だ、滑りやすい雨の日はマジで事故りやすい。
もっとも、俺には無縁な話だけど。こちとら子どもの頃から運転教育を受けてるんだ、18歳でようやく免許を取るような貧乏人とはワケが違う。
いざとなったら自動運転機能を使えばいいし、不安要素はどこにもない。じゃ、さっそく行くとしよう!
俺は、長年にわたって愛用しているスポーツ・カーを飛ばし、例の崖沿いの道へ乗りこむ。
たらたら走りながら海を眺める。いつ見てもきれいだ。とはいえちょっと恐ろしい、だって事故ったらこの海へ落ちるんだ。まず助からない。
大ケガしたってサイボーグ技術で生き延びられる世の中になったが、さすがに脳がやられちまったらどうしようもない。
油断しないで安全運転を心がけないとな。そう思った直後にあくびが出る。やれやれ……ちょっと疲れてるのかな?
少し休むことにして、自動運転モードに切り替える。BGMがわりにカー・ラジオをつける、男性ニュース・キャスターの声が聞こえてくる。
「ただいまより、国民安全保障特別委員会からの緊急発表が行われます。ご清聴をお願いします」
なんだよ、急に。どうせ嫌な話だろ? せっかくいい気分だってのに、やめろよ。
俺はラジオを止めようと思う。しかし考え直す、だってパパも今ごろこの発表を聞いてるかもしれない。
後で面会した時、ニュースを聞かなかったことがバレて「勉強不足!」などと怒られるのはごめんだ。しょうがない、ご清聴してやろうじゃないの。
ラジオから議長の声が流れだす。まったく冴えない、色気もクソも無いババアの声だ。つまんない!
「国民の皆様、こんにちは。今日はデモについてお話いたします。
先日に発生した、3人の死者が出たデモは、実にいたましいものでした。また、これがきっかけとなって次々に暴力的なデモが起きております。
それだけではありません。この社会的混乱に便乗し、各種テロ組織の動きも活発になっています。
この前の、日本革命解放軍による事件を思い出してください。
インフラ会社の社員を誘拐し、料金値下げの要求を聞かなければ殺害するなど、絶対に許されない鬼畜の所業です」
なぁーにが革命解放軍だよ。ルサンチマンをこじらした、底辺のクズの集まりのくせに。革命なんて偉そうなこといっても、やってることは野蛮なテロじゃん。
もしこれがプラネットだったら、解放軍なんて速攻でぶち殺してるところだ。社会に迷惑かける落ちこぼれ集団め!
「また、これ以外のテロについても思い出してください。特に、10人もの命が失われた、新宿のあのテロを!
これの実行組織は武装戦線ですが、なるほど、武装の名前が示す通りに暴力的で過激です。こんな組織の存在を許していいのでしょうか?」
そうなんだよなぁ、武装戦線は解放軍よりもクズなんだ。どちらがマシかと聞かれたら、俺は迷わず解放軍と答えるね。
世間じゃ「テロ組織にはそれぞれ違いがある」なんてほざく奴もいるけど、俺に言わせてもらえばどれも似たり寄ったりだね。みんなゴミカスさ。
「情報局の調査によれば、武装戦線は次のテロを計画中とのことです。近いうちに犯行予告が行われるでしょう。
しかしどうか安心してください。われわれ安全保障委員会は、国民という子どもたちを守る、頼れるお母さんです。
リトル・マザーは今度こそテロを防ぎ、武装戦線を壊滅します。必ず、必ずです!」
へぇ、そいつはすごいや。だからなんだってんだ、バーカ! 何を言い訳したところで、新宿のテロを防げなかったのは事実だろ! クソババア!
俺みたいな上流階級は、最初からあんたなんて信用してないぜ。頼りになるのは大金で雇ったボディーガードや防弾車だ。
自分の身は自分で守る、これが常識。そして、他人の力をアテにして、アテが外れてテロでくたばるのは貧乏人と相場は決まってんだ。
そうでなきゃ、警備の隙を突かれた間抜けぐらいだな。ま、どっちにせよ俺には無縁の話だ。対岸の火事みたいなもんだね。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
アルビオン王国宙軍士官物語(クリフエッジシリーズ合本版)
愛山雄町
SF
ハヤカワ文庫さんのSF好きにお勧め!
■■■
人類が宇宙に進出して約五千年後、地球より数千光年離れた銀河系ペルセウス腕を舞台に、後に“クリフエッジ(崖っぷち)”と呼ばれることになるアルビオン王国軍士官クリフォード・カスバート・コリングウッドの物語。
■■■
宇宙暦4500年代、銀河系ペルセウス腕には四つの政治勢力、「アルビオン王国」、「ゾンファ共和国」、「スヴァローグ帝国」、「自由星系国家連合」が割拠していた。
アルビオン王国は領土的野心の強いゾンファ共和国とスヴァローグ帝国と戦い続けている。
4512年、アルビオン王国に一人の英雄が登場した。
その名はクリフォード・カスバート・コリングウッド。
彼は柔軟な思考と確固たる信念の持ち主で、敵国の野望を打ち砕いていく。
■■■
小説家になろうで「クリフエッジシリーズ」として投稿している作品を合本版として、こちらでも投稿することにしました。
■■■
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しております。
近衛文麿奇譚
高鉢 健太
歴史・時代
日本史上最悪の宰相といわれる近衛文麿。
日本憲政史上ただ一人、関白という令外官によって大権を手にした異色の人物にはミステリアスな話が多い。
彼は果たして未来からの転生者であったのだろうか?
※なろうにも掲載
ヒューリアン 巨人の惑星
雨川 海(旧 つくね)
SF
繁栄を謳歌する人類に、冷や水を浴びせる事態が起こる。
突如、宇宙からエイリアンが攻めて来たのだ。昆虫型の完全生物は、頑強なカプセルに乗っていて、核兵器を含む既存の兵器が役に立たない。唯一の攻略法は、エイリアンが出入りする場所から乗り込む事で、それには、敵との肉弾戦を余儀なくされる。
対エイリアン用の近接格闘兵器として登場したのは、鋼殻体と呼ばれるパワードスーツだった。そして、パイロットとして選ばれたのは、工場作業員やコンビニ店員だった。
『物語』
近未来、火星の基地を襲った昆虫型エイリアンは、月まで侵略し、地球圏を脅かし、人類の存在を危うくしていた。
それに対抗するべく、国境や宗教の違いや人種を乗り越え、団結した人類は、地球連邦軍を強化し、戦いに備えていた。
日本でも、専守防衛とばかりは言っていられず、徴兵制が開始される。そんな中、下層労働者のハジメは、徴兵検査で鋼殻体への適性が認められ、パイロットとしての道を歩むことになる。
厳しい訓練を受け、心身共に成長したハジメは、初めて日本に襲来するエイリアンの方舟と対峙し、激戦に巻き込まれる!
一部のシーンで、複数視点から描く事により、立体的な表現を試みています。
『第二部』
第二部に入り、主人公はハジメから顕に代わります。
エイリアンの侵略から五十年後の地球に新たな火種が出現します。人類は、エイリアンの置き土産に亡ぼされるのか? それとも、新たな進化を遂げるのか?
『備考』
SF小説の傑作「宇宙の戦士」へのオマージュ作品です。
星屑の戦士たちへ 眼鏡女子に~のアレンジ作品になります。
『天燃ゆ。地燃ゆ。命燃ゆ。』中篇小説
九頭龍一鬼(くずりゅう かずき)
SF
武士たちが『魂結び』によって『神神』を操縦し戦っている平安時代。
源氏側は平家側の隠匿している安徳天皇および『第四の神器』を奪おうとしている。
斯様なる状況で壇ノ浦の戦いにおよび平知盛の操縦する毘沙門天が源義経の操縦する持国天に敗北し平家側は劣勢となる。
平家の敗衄をさとった二位の尼は安徳天皇に『第四の神器』を発動させるように指嗾し『第四の神器』=『魂魄=こんそうる』によって宇宙空間に浮游する草薙の剱から御自らをレーザー攻撃させる。
安徳天皇の肉体は量子論的にデコヒーレンスされ『第四の神器』は行方不明となる。
戦国時代。わかき織田信長は琵琶法師による『平曲』にうたわれた『第四の神器』を掌握して天下統一せんと蹶起する。――。
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』② 海と革命家、時々娘
橋本 直
SF
進歩から取り残された『アナログ』異星人のお馬鹿ライフは続く
遼州人に『法術』と言う能力があることが明らかになった。
だが、そのような大事とは無関係に『特殊な部隊』の面々は、クラゲの出る夏の海に遊びに出かける。
そこに待っているのは……
新登場キャラ
嵯峨茜(さがあかね)26歳 『駄目人間』の父の生活を管理し、とりあえず社会復帰されている苦労人の金髪美女 愛銃:S&W PC M627リボルバー
コアネタギャグ連発のサイキック『回収・補給』ロボットギャグアクションストーリー。
雨上がりに僕らは駆けていく Part2
平木明日香
青春
学校の帰り道に突如現れた謎の女
彼女は、遠い未来から来たと言った。
「甲子園に行くで」
そんなこと言っても、俺たち、初対面だよな?
グラウンドに誘われ、彼女はマウンドに立つ。
ひらりとスカートが舞い、パンツが見えた。
しかしそれとは裏腹に、とんでもないボールを投げてきたんだ。
鍵の在処・在処の鍵
志賀雅基
SF
◆僕のエントロピーは過剰/熱的死まで17秒/充分だ/世界を道連れにできる◆
人類にこの先があれば。ある一人の一日。
◇エブリスタ・ノベルアップ+・ステキブンゲイに掲載◇
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる