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第4章 現代の監視社会における具体的な監視方法とその運用の実態について
第71話 日本革命解放軍とはなにか Dustbin for cheap thugs
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部屋の中央に映画のスクリーンのようなものが浮かび上がる。大伝馬はそれを脳波操作し、様々な資料を映しながら語る。
「率直に言えば、俺としちゃぁお前が情報局で働くのに反対だ。だって前職は単なる私立探偵だろ? 荒事とは無縁だ」
「お言葉ですが、それなりに戦えるつもりです。自分なりに訓練してきました」
「ふん、どうだか。じゃあお前、拳銃はどれくらい使える?」
「拳銃所持が合法化されたのって、十年ほど前ですよね。僕はあのとき、まだ学生でしたけど、すぐ訓練教室にいって免許を取りました」
「訓練で的を撃つのと実戦で人を撃つのとは、ぜんぜん違うんだぜ」
「探偵をやってた時、正当防衛で不良を撃ち殺してます。3人」
「じゃ格闘術はどうだ?」
「中学と高校では柔道部でした。卒業してからはやめちゃいましたけど、今はかわりに空手をやってます」
「つまり、まるきり素人のザコじゃないって言いたいのか?」
「そこまで傲慢じゃないですよ。ただ、いくらかは自己弁護したいと思って……」
理堂は徐々に整っていくスクリーンの様子をながめ、弁護を続ける。
「言い訳になりますけど、僕は志願して情報局にきたわけじゃありません。ある日、事務所にチーフがきて、いきなり僕を引き抜いた」
「わかってるよ、そんくらい……。
チーフが決めたことである以上、お前が仲間入りすることに反対はしないさ。俺はただ、お前の情報を確認したかっただけだよ。
まぁそれはそれとしてだ。お前は何も知らない新人である以上、きちんと勉強してもらわにゃならん。だから俺の話を聞け」
「はい」
スクリーンの操作をやめ、大伝馬は理堂の顔を見る。
「では質問だ。現在、日本で活動しているテロ組織たちの中で、最大規模はどこだ?」
「日本革命解放軍」
「正解。じゃ、ネタばらしをするぜ。あれはうちが作った操り人形、政治工作用の闇の部隊だ」
「やっぱり……」
「なんだよ、つまんねぇ反応だな。少しは驚け」
「だって、ダーク・ウェブじゃこんなの常識ですよ」
「お前、あんなとこ出入りしてんのか……」
「いけませんか?」
「ふん……」
「出入りといっても見るだけですよ。なにか物を売り買いしたり、掲示板に書きこんだり、そういうことはやってません」
「あそこは面白半分で首を突っこんでいい場所じゃねぇぞ。わかってんのか? ったく……。
それでだ、話を元に戻すが。以前にも教えたが、市民がやるデモの殆どはうちが裏で操ってる。
なぜ警察はデモ現場に素早く到着できるのか? それは、デモ隊が動く前に俺たちが通報してるからだ」
スクリーンに一本の動画が映しだされ、ゆっくりと再生されていく。大伝馬は言う。
「後先なくなった奴、いわゆる”無敵の人”だが、そういう手合いに自暴自棄のテロを起こされちゃたまらない。
だからそうならないよう、こっちでコントロールし、適当にデモで暴れさせる。
ところがだ。一寸先は闇っていうだろ? いくら気をつけてても、時としてとんでもねートラブルが起きる……」
動画がある場面にさしかかる。それは七寺英太が遭遇したあの場面、若い男が火の着いたガラス瓶を投げるところだ。
大伝馬は心底うんざりしながら喋り続ける。
「たまにいるんだよ。こういう過激なことをするアホが。
普通なら暗殺するんだが、場合によっちゃあ別の形で処理することもある……」
大伝馬は動画を消し去る。かわりに図を表示する。それには日本革命解放軍の組織構造やメンバー名、地位などが書かれている。
リーダーの名前は「犬山ツヨシ」、副リーダーは「猫谷マロン」。理堂は彼らの横にある説明文を読む、どちらも偽名であることがわかる。
「デンマさん。この二人の正体は、情報局のスタッフってわけですか」
「そうだ。さっきみたいな暴れん坊が出現した時、こいつらが動いて革命軍に引き入れる」
「でもどうやって?」
「まずターゲットのスマホの情報、すなわち位置情報を入手するんだ」
「そんなこと出来るんですか?」
「俺たちの立場を思い出せ。俺たちは情報局、特別調査室のメンバーだ。秘密裁判所に書類を出せば、いくらでも捜査令状を取れる。
で、令状を振りかざして電話会社に要求するんだ。おたくの客の誰それにテロの疑いがあるから、GPSの情報を出せ、ってな」
大伝馬はゆっくりと説明を続ける。
「スマホってのは、たいてい持ち主と一緒の場所にあるだろ。つまり、スマホのGPS情報を知ることは、持ち主の位置を知るのと殆ど同じ。
後は簡単! AIにデータを入力し、24時間ずっと見張らせる。で、ターゲットがよさげな所に移動したら、AIが犬山たちに通報。作戦開始。
地元の不良をけしかけてもめ事を起こさせ、仲裁をするのと引き換えに、革命軍へ加入させる……」
すべては情報局の筋書き通りというわけだ。理堂は感心する。
「率直に言えば、俺としちゃぁお前が情報局で働くのに反対だ。だって前職は単なる私立探偵だろ? 荒事とは無縁だ」
「お言葉ですが、それなりに戦えるつもりです。自分なりに訓練してきました」
「ふん、どうだか。じゃあお前、拳銃はどれくらい使える?」
「拳銃所持が合法化されたのって、十年ほど前ですよね。僕はあのとき、まだ学生でしたけど、すぐ訓練教室にいって免許を取りました」
「訓練で的を撃つのと実戦で人を撃つのとは、ぜんぜん違うんだぜ」
「探偵をやってた時、正当防衛で不良を撃ち殺してます。3人」
「じゃ格闘術はどうだ?」
「中学と高校では柔道部でした。卒業してからはやめちゃいましたけど、今はかわりに空手をやってます」
「つまり、まるきり素人のザコじゃないって言いたいのか?」
「そこまで傲慢じゃないですよ。ただ、いくらかは自己弁護したいと思って……」
理堂は徐々に整っていくスクリーンの様子をながめ、弁護を続ける。
「言い訳になりますけど、僕は志願して情報局にきたわけじゃありません。ある日、事務所にチーフがきて、いきなり僕を引き抜いた」
「わかってるよ、そんくらい……。
チーフが決めたことである以上、お前が仲間入りすることに反対はしないさ。俺はただ、お前の情報を確認したかっただけだよ。
まぁそれはそれとしてだ。お前は何も知らない新人である以上、きちんと勉強してもらわにゃならん。だから俺の話を聞け」
「はい」
スクリーンの操作をやめ、大伝馬は理堂の顔を見る。
「では質問だ。現在、日本で活動しているテロ組織たちの中で、最大規模はどこだ?」
「日本革命解放軍」
「正解。じゃ、ネタばらしをするぜ。あれはうちが作った操り人形、政治工作用の闇の部隊だ」
「やっぱり……」
「なんだよ、つまんねぇ反応だな。少しは驚け」
「だって、ダーク・ウェブじゃこんなの常識ですよ」
「お前、あんなとこ出入りしてんのか……」
「いけませんか?」
「ふん……」
「出入りといっても見るだけですよ。なにか物を売り買いしたり、掲示板に書きこんだり、そういうことはやってません」
「あそこは面白半分で首を突っこんでいい場所じゃねぇぞ。わかってんのか? ったく……。
それでだ、話を元に戻すが。以前にも教えたが、市民がやるデモの殆どはうちが裏で操ってる。
なぜ警察はデモ現場に素早く到着できるのか? それは、デモ隊が動く前に俺たちが通報してるからだ」
スクリーンに一本の動画が映しだされ、ゆっくりと再生されていく。大伝馬は言う。
「後先なくなった奴、いわゆる”無敵の人”だが、そういう手合いに自暴自棄のテロを起こされちゃたまらない。
だからそうならないよう、こっちでコントロールし、適当にデモで暴れさせる。
ところがだ。一寸先は闇っていうだろ? いくら気をつけてても、時としてとんでもねートラブルが起きる……」
動画がある場面にさしかかる。それは七寺英太が遭遇したあの場面、若い男が火の着いたガラス瓶を投げるところだ。
大伝馬は心底うんざりしながら喋り続ける。
「たまにいるんだよ。こういう過激なことをするアホが。
普通なら暗殺するんだが、場合によっちゃあ別の形で処理することもある……」
大伝馬は動画を消し去る。かわりに図を表示する。それには日本革命解放軍の組織構造やメンバー名、地位などが書かれている。
リーダーの名前は「犬山ツヨシ」、副リーダーは「猫谷マロン」。理堂は彼らの横にある説明文を読む、どちらも偽名であることがわかる。
「デンマさん。この二人の正体は、情報局のスタッフってわけですか」
「そうだ。さっきみたいな暴れん坊が出現した時、こいつらが動いて革命軍に引き入れる」
「でもどうやって?」
「まずターゲットのスマホの情報、すなわち位置情報を入手するんだ」
「そんなこと出来るんですか?」
「俺たちの立場を思い出せ。俺たちは情報局、特別調査室のメンバーだ。秘密裁判所に書類を出せば、いくらでも捜査令状を取れる。
で、令状を振りかざして電話会社に要求するんだ。おたくの客の誰それにテロの疑いがあるから、GPSの情報を出せ、ってな」
大伝馬はゆっくりと説明を続ける。
「スマホってのは、たいてい持ち主と一緒の場所にあるだろ。つまり、スマホのGPS情報を知ることは、持ち主の位置を知るのと殆ど同じ。
後は簡単! AIにデータを入力し、24時間ずっと見張らせる。で、ターゲットがよさげな所に移動したら、AIが犬山たちに通報。作戦開始。
地元の不良をけしかけてもめ事を起こさせ、仲裁をするのと引き換えに、革命軍へ加入させる……」
すべては情報局の筋書き通りというわけだ。理堂は感心する。
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