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第3章 七寺英太の革命日記
第65話 真実 Be careful what you see
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数日後。俺はマロンさんに呼び出され、ある部屋を訪れた。
そこは小さな会議室になっている。ホワイトボードがあり、それと向かい合う形で数台の長テーブルや椅子がある。
椅子には俺を含む数人の男たちが座っていて、真面目な雰囲気だ。やがてホワイトボードの前のマロンさんが話し出す。
「革命を成し遂げるには知識が必要だ。何も知らずに大事業を始めるのは、目をつむって夜道を歩くのと同じ。危険極まりない。
そこで、お前たちを教育していくわけだが……。ところで、最近のデモについてどう思う?」
俺の前の席にいる男が手を挙げる。
「酷いもんですよ。やみくもに騒いで警察とぶつかって。あれじゃ何も変わらない」
「その通りだ。何も変わらない。でもそれでOK、だって奴らは、騒ぐことだけが目的なのだから」
「えぇっ?」
「結論から言おう。デモとはLMの裏工作にすぎない」
「どういうことです?」
「監視社会が続くと、不満を持つ連中が増えてくる。そいつらがテロを始めたらたまらない、だから情報局のスタッフが一か所に集め、デモ活動をやらせてガス抜きする。
で、その時ついでに”監視社会”と叫ばせて、一般市民に意識させるのさ。どれだけ現実逃避しても、監視されている事実からは逃げられない……ってね」
「自作自演じゃないですか!」
「イエス。何もかもLMの思い通りってわけだ。裏工作の証拠をもっと見せてやろう、今度はこれだ」
部屋が暗くなる。ホワイトボードに何かが映し出される。
「これは、例の死者3人が出たデモの映像だ。ところで、メディアで報道されていた内容を覚えているか? どこもこう言っていたはずだ。
”デモ隊が先に暴力を振るった。警察は自己防衛のためにやむを得ず武器を使い、結果として死人が出た”
映像も公開されたな。ほら、この場面、デモ隊の男が警官に殴りかかっているところだ」
マロンさんの口調が一気に険しくなる。
「なるほど、これを見る限りでは、確かにデモ隊が先制攻撃している。だが、これは編集で作り出した嘘だ! まやかしだ!
こっちの映像を見ろ!」
画面が切り替わり、別の動画が再生され始める。
「これは、うちの工作部隊が手に入れた本物の映像だ。さっきと同じ場面だが、こうして別アングルから見ると全く違うだろう」
なるほど。さっきは物陰にかくれてよく見えなかった部分が、はっきりと確認できる。
「拡大して映すぞ。それと、音のボリュームも上げる。しっかり観察しろ……。
”かかってこいよションベン小僧! ほらほらほら!”
”貴様ぁッ!”
ここだ! 今、どうなっている? 挑発された警官が殴りかかっているだろう?
つまり、これが真実だ! LMやメディアの主張はウソ、警官が先に殴ったんだ!」
ってことは、俺も他の人たちも、みんなしてLMに騙されてたってことじゃねぇか……。
俺はマロンさんの顔を見る。彼女はちらっと視線を返し、確信に満ちた顔で言う。
「お前たち、これで分かっただろう! 白が黒になり、黒が白になる、今の日本はそんな狂った社会だ!
加害者が自分の責任を認めず、他人のせいにして、あわよくば自分が被害者であるかのようなツラをする!
こんな腐った社会は、革命して作り直すしかないだろうが!」
そこは小さな会議室になっている。ホワイトボードがあり、それと向かい合う形で数台の長テーブルや椅子がある。
椅子には俺を含む数人の男たちが座っていて、真面目な雰囲気だ。やがてホワイトボードの前のマロンさんが話し出す。
「革命を成し遂げるには知識が必要だ。何も知らずに大事業を始めるのは、目をつむって夜道を歩くのと同じ。危険極まりない。
そこで、お前たちを教育していくわけだが……。ところで、最近のデモについてどう思う?」
俺の前の席にいる男が手を挙げる。
「酷いもんですよ。やみくもに騒いで警察とぶつかって。あれじゃ何も変わらない」
「その通りだ。何も変わらない。でもそれでOK、だって奴らは、騒ぐことだけが目的なのだから」
「えぇっ?」
「結論から言おう。デモとはLMの裏工作にすぎない」
「どういうことです?」
「監視社会が続くと、不満を持つ連中が増えてくる。そいつらがテロを始めたらたまらない、だから情報局のスタッフが一か所に集め、デモ活動をやらせてガス抜きする。
で、その時ついでに”監視社会”と叫ばせて、一般市民に意識させるのさ。どれだけ現実逃避しても、監視されている事実からは逃げられない……ってね」
「自作自演じゃないですか!」
「イエス。何もかもLMの思い通りってわけだ。裏工作の証拠をもっと見せてやろう、今度はこれだ」
部屋が暗くなる。ホワイトボードに何かが映し出される。
「これは、例の死者3人が出たデモの映像だ。ところで、メディアで報道されていた内容を覚えているか? どこもこう言っていたはずだ。
”デモ隊が先に暴力を振るった。警察は自己防衛のためにやむを得ず武器を使い、結果として死人が出た”
映像も公開されたな。ほら、この場面、デモ隊の男が警官に殴りかかっているところだ」
マロンさんの口調が一気に険しくなる。
「なるほど、これを見る限りでは、確かにデモ隊が先制攻撃している。だが、これは編集で作り出した嘘だ! まやかしだ!
こっちの映像を見ろ!」
画面が切り替わり、別の動画が再生され始める。
「これは、うちの工作部隊が手に入れた本物の映像だ。さっきと同じ場面だが、こうして別アングルから見ると全く違うだろう」
なるほど。さっきは物陰にかくれてよく見えなかった部分が、はっきりと確認できる。
「拡大して映すぞ。それと、音のボリュームも上げる。しっかり観察しろ……。
”かかってこいよションベン小僧! ほらほらほら!”
”貴様ぁッ!”
ここだ! 今、どうなっている? 挑発された警官が殴りかかっているだろう?
つまり、これが真実だ! LMやメディアの主張はウソ、警官が先に殴ったんだ!」
ってことは、俺も他の人たちも、みんなしてLMに騙されてたってことじゃねぇか……。
俺はマロンさんの顔を見る。彼女はちらっと視線を返し、確信に満ちた顔で言う。
「お前たち、これで分かっただろう! 白が黒になり、黒が白になる、今の日本はそんな狂った社会だ!
加害者が自分の責任を認めず、他人のせいにして、あわよくば自分が被害者であるかのようなツラをする!
こんな腐った社会は、革命して作り直すしかないだろうが!」
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