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第3章 七寺英太の革命日記

第61話 戦い続けるグリニング・パンプキンズ Doom is sickly grinning

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 俺たちがヨーランドの救援に駆けつけた時、戦いは既に終わっていた。ま、奴の実力からすれば当然だな。
 問題はその後だ。俺とヨーランドが今後について話していると、ジャマーが警告音を響かせる。

”ステルス状態の何者かを感知!”

 ヨーランドは即座に「くそっ!」と叫び、武器を手にして言う。

「さっき殺した奴らが、この場所をチンコロ(※密告)しやがったんだ。また戦闘になるぜ」

 こうなりゃ、”毒を食らわば皿まで”だ。俺はまだやる気のある仲間たちを呼び集め、それからずっとPK合戦に没頭した。
 最終的には疲れきった隙を突かれてやられたが、この程度でへこたれるわけがない。翌日、俺たちはデッド・シティに出撃し、再度の報復を行った。

 そんなことが数日ほど続き、気がつくと俺たちパンプキンズは、デッド・シティを根城にして殺し合いに明け暮れるようになっていた。
 けれど何事にも終わりがある。どんな映画もいつかはエンディングにたどり着くのさ。



 デッド・シティ中央にそびえたつ巨大ビル、その周りにある瓦礫の山は、今の俺たちにとっては砦と同じだ。
 瓦礫の隙間からは近づいてくる敵が簡単に視認でき、なおかつ相手は俺たちを視認できない。

 つまり地の利は俺たちにある。だが戦力面ではこっちが不利だ。ここまでの戦いで多くの仲間が戦意を失い、引退してしまった。
 現在ログインしているのは、ゼーキル、リス、ヨーランド、俺、そしてボンクラたち4人を加えて計8人。たったこれだけの戦力で陣を敷かなくてはならない。

 しかもさらに嫌なことに、俺たちは二つの地点に分断されている。さっき敵の強襲を受け、ヨーランドとボンクラたちが遠くに取り残されたんだ。
 このままではまずい、すぐに合流しなければ。誰もがそう感じているが、しかし敵は俺たちの都合を無視してやって来る。

 ヨーランド隊の誰かがクラン内チャットを使って言う。

(5人が接近中。ステルスは使ってません。あと、かなり高級なジャマーを浮かべてます)

 俺は答える。

(もっと詳しく)
(敵は全員が女です。たぶんピンク髪の奴がリーダーで、その横にいる紫髪がサポート役でしょう。この2人はセブンさんのところへ向かってます)
(了解。戦闘準備!)

 全員が(はい)とか(わかりました)などと返す。誰の声にも精神的な疲労がにじみ出ている、そういう俺だってヘトヘトだ。
 それでも俺は虚勢を張り、元気を振り絞って指示する。

(ヨーランド、そっちの戦いはお前が指揮を執れ)
(構わねぇけどよ、セブンは?)
(こっちの敵はたった2人だ。対して俺たちは3人、楽勝さ)
(だからって油断するなよ)
(わかってる。いいから準備しろ!)

 言い捨てて通信を切り、俺はため息をつく。
 この一連の戦い、絶滅作戦とやらは、いつになれば終わる? パンプキンズを狙う反逆者どもは、いつになれば気が済む?

 どれだけ敵を殺しても、こうやって次々に新手が現れてキリがない。いったいどうすれば最終的な勝利を手に入れられるんだ?
 ゼーキルが言う。

(セブン、どうした? ボーッとしてないか?)
(なんでもねぇよ……。とりあえず瓦礫のそばに行くぞ)

 落ち着け、俺。何事にも終わりがある。絶滅作戦だって、いつかは終わるさ。
 そのことを信じ、敵が諦める瞬間まで戦い抜こう。王者たる俺に敗北などあり得ない、きっとそうなんだから……。
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