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第3章 七寺英太の革命日記

第60話 徹底抗戦 Hell is one step away

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 俺は自室のベッドに寝転び、瓶ビールをちびちび飲みながら思う。なりゆきで参加したあのデモのこと、そして、言い渡された首のことを。
 無職になっちまった。おかげで好きなだけプラネットで遊んでられるが、それってリスと同じじゃねぇか。

 もうあいつを嘲笑ってる場合じゃない。それどころか、俺の方がずっとみじめだ。
 上司が言った通り、いずれ俺は逮捕されてお仕置きされるだろう。リハビリ施設に放りこまれ、許してもらえるその瞬間まで強制労働だ。

 クソッタレ。そんなの死んだってお断りだね。でも逃げる場所なんてない、どうしたらいい?
 ……とりあえず現実逃避しよう。俺は残りのビールを飲み干し、瓶を放り捨て、目を閉じる。

 意識をスマホへ転送。プラネットにログイン!



 ベースを失った以上、あそこには戻れない。だから俺は、以前にアジトにしていた建物にシケこむ。
 大きな部屋のドアを開けて入り、みんなに声をかける。

「ちはーっす。珍しいな、こんなに集まってるなんて……」

 実際こいつは大人数だ。普段あまり顔を見ない奴まで出席してやがる。
 ははぁ、何か事件があったな。リスに問いただす。

「おい、どうした?」
「……さっき、デッド・シティでヨーランドがPKされた。だから緊急でみんなを集めた」
「マジ?」

 ヨーランドといえば、俺と同じくパワー2億を誇るタフ・ガイだ。そいつがやられただって?

「もっと詳しく頼むぜ」
「ヨーランドが道を歩いてたら、いきなり大量のモンスターがやって来て……。
 対処に追われてパニクってる時、他のクランの連中が現れて、それで殺されたんだって」
「おおかた、そいつらがモンスターをけしかけたんだろ。昔からある手口だ」
「うん。それでね、犯人たちがこう言ったらしい。
”パンプキンズ絶滅作戦が始まった。よって、もはやお前たちに居場所は無い”」
「は? なんだそりゃ?」
「要するに復讐でしょ。パンプキンズを恨んでるクランが集まって、協力してぶっつぶすって話」
「くっだらねぇ……」

 深くため息をつき、俺は手近な椅子に座る。
 なんだよ、絶滅作戦って。これじゃ、パンプキンズが悪者みたいじゃねーか。ふざけんな!

 そりゃ、確かに俺たちは大量のPKをしたさ。でも、プラネットは元々そういうゲームだ。誰もがPKのリスクを覚悟して遊んでる。
 つまり双方合意ってわけ。だったら、殺されたことを理由にこっちを恨むのは逆ギレだろうが。PKが嫌ならプラネット以外のゲームを遊べばいいんだ。

 クソッ、こんなバカな理屈を唱える奴らに負けてたまるか! パンプキンズをなめんじゃねぇ!

「よぉし……。だったら徹底抗戦だ。ケンカを売ってくる奴ら全員、とことんぶちのめす! そうだろ、みんな?」

 俺は威勢のいい返事が飛び出すことを期待する。だが、部屋の隅にいる男がシケ声で言う。

「すみません、じゃあ俺、引退しますよ。このゲームやめます」
「はぁ!?」
「セブンさん、もういいじゃないですか。俺たちは十分すぎるほど楽しんだ。そろそろ潮時です」
「お前……!」
「PKは、自分が攻撃側としてやるから楽しいんであって、逆にこっちがやられるのはぜんぜん楽しくない。
 そして俺は、復讐合戦に巻きこまれてPKされまくるなんて、絶対に嫌です。
 だから引退です。セブンさん、今までお世話になりました」
「ふざけるな! 逃げるな!」
「何とでも言ってください。それじゃ……」
「おい!」

 男の姿が消えていく。それにつられて他の奴らもいなくなっていく。

「俺もやめるわ」「リーダー、お疲れさまでした」「お疲れ」「負け犬クズリーダー! じゃあな!」「私はやめないけど、ちょっと用事が……」「全部あんたのせいだ!」「あの、また明日来ます」「ヨーランドさん心配だけどいったん落ちます」「グッバイ」

 やがて室内は空っぽになり、俺とゼーキルとリスの3人だけが取り残される。俺はわめく。

「ちくしょう! 馬鹿! クソ! クソッ!」

 ゼーキルが「とりあえずヨーランドを助けにいこう」と言う。

「あぁ、なんだって?」
「だから、ヨーランドを助けるんだ。彼は復讐のためにデッド・シティに向かった。このまま見殺しにはできない」
「だったらすぐ出発だ! 行くぞ!」

 現実で負け犬となった以上、せめてゲームの世界では勝者でいたい。だから戦う、燃え尽きるまで……!
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