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第3章 七寺英太の革命日記
第59話 報い The price you have to pay
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大暴れしたおかげで気分がいい。これならどんな名案も出せる。
だったら早速、バーバリアンへの復讐計画を立てようじゃねぇか。
俺はプラネットにログインし、クラッシュ・シティの中央にあるベース(基地)に入っていく。
この12号サーバーにたった8つしかないベース、それらの1つを我がパンプキンズが占有できるとは、まったくサイコーだぜ。
でも、ここまでのし上がるまでには色んな苦労があった。他のクランたちとの衝突、PK合戦、スパイ騒動。
時にくじけそうになりつつも、仲間を率い、俺は苦闘を制した。そう、俺は王者、クラッシュ・シティの支配者だ。
それだってのに、あのクズのバーバリアンに殺されただって? ゲロむかつくぜ……!
必ず復讐してやる! そう強く誓い、小さな部屋に入る。
入った直後、奥の壁際に立ってるゼーキルが喋り出す。
「遅いぞ。約束の時刻から15分も……」
「すまねぇ、ちょっと急な電話がきちまってよ」
大嘘だ、こんなん。まぁいいじゃねぇか、たかだか15分だろ? ところで、役者がひとり足りねぇな。
「ん? リスは?」
「お前が来ないからって、いったんログアウトした。すぐに戻るという話だが……」
「なるほど」
俺はそのへんのカウチに腰を下ろし、話を続ける。
「それで、俺が来る前、なんかアイデアは出た?」
「陳腐なものなら、一応」
「へぇ」
「俺たち3人で袋叩きにするんだ。この前は不意を突かれたから負けただけで、正面からぶつかればこっちに勝機がある」
「グッド。それでいこう!」
「簡単に言うがな、しかし……」
突如、部屋の片隅に青白い光のモヤが出現する。それは急速に消えてゆき、引きかえにリスのアバターが出現する。ログインしたんだ。
彼女は軽く俺をにらんで言う。
「遅いよ、何やってたの?」
「まぁちょっと。お前はどうしたの、トイレ?」
「そんなんどうでもいいじゃん! それより会議しよ!」
奴は俺と同じようにカウチに座る。やっと全員集合か、それじゃあ改めて話し合ってこう。
「ゼーキル、とにかくお前の意見を聞かせてくれ……」
結論から言えば、こんな会議は無意味だった。なぜなら、バーバリアンが所属クランを焚きつけ、争奪戦を仕掛けてきたからだ。
争奪戦の最中なら、指名手配のリスクを負わずに奴を殺せる。まさに絶好のチャンス!
だから俺は気合いを入れ、全力で戦った。なのにボロ負けして、おまけにベースまで失った。
一度こうしてケチがつくと、あとはドミノ倒しのように悪いことが連鎖していく。
戦犯探しが大ゲンカに発展し、みんなして責任をなすりつけ合い、やがてモチベーションを無くした連中が次々に引退していった。
そして悪運は、ゲーム世界だけでなく現実世界まで浸食し、俺の人生を狂わせていく……。
会社の上司に呼び出された俺は、彼の前に立っている。彼は厳しい顔で言う。
「七寺。単刀直入に言おう。首だ」
……は? くび?
「あの、首ってどういう……」
「首だよ、首! 解雇! 馘首! お前を会社から追い出すってことだ!」
なっ!?
「え、なぜですか。俺に何か問題でも……」
「(怒声)しらばっくれるな! 警察から連絡が来てる! お前、このあいだのデモの時、警官をボコボコにしただろう!」
反社会的な行為を理由とする解雇。なるほど、話が読めてきたぜ。とにかく自己弁護しよう。
「すみません! 確かに警官を殴りました、でも相手が先に攻撃してきたんで、それで仕方なく身を守るために……」
「くだらん嘘をつくな! 愚か者!」
上司は机をドンと叩き、畳みかけてくる。
「お前が何をやったか、現場の防犯カメラが記録している! 言い逃れは無意味だ!
手を出したのはお前が先で、そもそもお前、自分からあの騒ぎに参加したんだろうが! なのに自分は悪くないと? ふざけるなッ!」
「すみません……」
「自分がしでかしたことがどれだけ重大か、七寺、お前は理解しているのか?
今のお前は犯罪者、この社会の敵だ。いずれ警察に逮捕されて、場合によっては情報局のお世話になる。
そんな厄介者を会社に置いておくわけにはいかない、だから首だ。分かったな?」
「いや……でも……」
「口答えするなッ!」
ドン、ドン、ドン! 机が激しく叩かれ、言いようのない不安感が俺を包みこむ。
仕方ない、ここはひとまず退散だ。いろいろ思うことはあるが、とにかく家に帰ろう。まったく酷い話だぜ。
だったら早速、バーバリアンへの復讐計画を立てようじゃねぇか。
俺はプラネットにログインし、クラッシュ・シティの中央にあるベース(基地)に入っていく。
この12号サーバーにたった8つしかないベース、それらの1つを我がパンプキンズが占有できるとは、まったくサイコーだぜ。
でも、ここまでのし上がるまでには色んな苦労があった。他のクランたちとの衝突、PK合戦、スパイ騒動。
時にくじけそうになりつつも、仲間を率い、俺は苦闘を制した。そう、俺は王者、クラッシュ・シティの支配者だ。
それだってのに、あのクズのバーバリアンに殺されただって? ゲロむかつくぜ……!
必ず復讐してやる! そう強く誓い、小さな部屋に入る。
入った直後、奥の壁際に立ってるゼーキルが喋り出す。
「遅いぞ。約束の時刻から15分も……」
「すまねぇ、ちょっと急な電話がきちまってよ」
大嘘だ、こんなん。まぁいいじゃねぇか、たかだか15分だろ? ところで、役者がひとり足りねぇな。
「ん? リスは?」
「お前が来ないからって、いったんログアウトした。すぐに戻るという話だが……」
「なるほど」
俺はそのへんのカウチに腰を下ろし、話を続ける。
「それで、俺が来る前、なんかアイデアは出た?」
「陳腐なものなら、一応」
「へぇ」
「俺たち3人で袋叩きにするんだ。この前は不意を突かれたから負けただけで、正面からぶつかればこっちに勝機がある」
「グッド。それでいこう!」
「簡単に言うがな、しかし……」
突如、部屋の片隅に青白い光のモヤが出現する。それは急速に消えてゆき、引きかえにリスのアバターが出現する。ログインしたんだ。
彼女は軽く俺をにらんで言う。
「遅いよ、何やってたの?」
「まぁちょっと。お前はどうしたの、トイレ?」
「そんなんどうでもいいじゃん! それより会議しよ!」
奴は俺と同じようにカウチに座る。やっと全員集合か、それじゃあ改めて話し合ってこう。
「ゼーキル、とにかくお前の意見を聞かせてくれ……」
結論から言えば、こんな会議は無意味だった。なぜなら、バーバリアンが所属クランを焚きつけ、争奪戦を仕掛けてきたからだ。
争奪戦の最中なら、指名手配のリスクを負わずに奴を殺せる。まさに絶好のチャンス!
だから俺は気合いを入れ、全力で戦った。なのにボロ負けして、おまけにベースまで失った。
一度こうしてケチがつくと、あとはドミノ倒しのように悪いことが連鎖していく。
戦犯探しが大ゲンカに発展し、みんなして責任をなすりつけ合い、やがてモチベーションを無くした連中が次々に引退していった。
そして悪運は、ゲーム世界だけでなく現実世界まで浸食し、俺の人生を狂わせていく……。
会社の上司に呼び出された俺は、彼の前に立っている。彼は厳しい顔で言う。
「七寺。単刀直入に言おう。首だ」
……は? くび?
「あの、首ってどういう……」
「首だよ、首! 解雇! 馘首! お前を会社から追い出すってことだ!」
なっ!?
「え、なぜですか。俺に何か問題でも……」
「(怒声)しらばっくれるな! 警察から連絡が来てる! お前、このあいだのデモの時、警官をボコボコにしただろう!」
反社会的な行為を理由とする解雇。なるほど、話が読めてきたぜ。とにかく自己弁護しよう。
「すみません! 確かに警官を殴りました、でも相手が先に攻撃してきたんで、それで仕方なく身を守るために……」
「くだらん嘘をつくな! 愚か者!」
上司は机をドンと叩き、畳みかけてくる。
「お前が何をやったか、現場の防犯カメラが記録している! 言い逃れは無意味だ!
手を出したのはお前が先で、そもそもお前、自分からあの騒ぎに参加したんだろうが! なのに自分は悪くないと? ふざけるなッ!」
「すみません……」
「自分がしでかしたことがどれだけ重大か、七寺、お前は理解しているのか?
今のお前は犯罪者、この社会の敵だ。いずれ警察に逮捕されて、場合によっては情報局のお世話になる。
そんな厄介者を会社に置いておくわけにはいかない、だから首だ。分かったな?」
「いや……でも……」
「口答えするなッ!」
ドン、ドン、ドン! 机が激しく叩かれ、言いようのない不安感が俺を包みこむ。
仕方ない、ここはひとまず退散だ。いろいろ思うことはあるが、とにかく家に帰ろう。まったく酷い話だぜ。
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