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第3章 七寺英太の革命日記
第51話 美しいネチケット Shitty custom
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俺は横を歩いている仲間たちに目を向ける。アジア人の若い女とアフリカンの若い男、こいつら二人がそうだ。
女の名前は”葡萄リス”という。長いから略して「リス」と呼ばれることが多い。
こいつは朝も昼も夜も、いつだってプラネットにログインしてやがる。要するにネトゲ廃人だ。
なんでそんなことができるのか、前に質問したことがある。答えは、「夜間の大学に通ってて時間に融通が利くから」だった。
はぁ? なに言ってやがる? もし大学生なら、講義に出なくちゃならんだろうが。でもリスは平日の夜だってゲームしてる、つまりあの答えはウソ!
どーせ正体は引きこもりとかニートだ。ネット以外に身の置き場がない落ちこぼれ、競争社会の負け犬ってわけ。
我がクラン、”グリニング・パンプキンズ”の面々は、そんなんとっくにお見通しさ。
でも、相手が現実世界で何をしてるか、深く尋ねないのがネットのマナーだ。だから誰もこれ以上の追及をしていない。
そういや、昔どこかの匿名掲示板でこんな書きこみを見かけたぜ。
”ネットでうまく生きていくコツの一つは、他人の私生活をなるべく聞かないことだ。知りたがりはうざがられる”
まさしくその通り。知りたがりはうざがられる。あぁ、なんと美しく、引きこもりや無職に都合のいいネチケットだ!
クソ……。こんなアホなことを考えも無意味だ。俺はアフリカンの男、ゼーキルに話しかけ、気分転換を図る。
「なぁ、引き返そうぜ」
「どうしたセブン。いきなり……」
セブン。それがプラネットにおける俺の名前だ。本名が七寺だからセブン、それと、ラッキー・セブンのご利益にあやかれますようにって願いもこめてある。
もっとも、今日はぜんぜんラッキーを感じないがな。もしそんなんがあるなら、さっさと獲物を見つけさせろ! 面倒は嫌いだ!
そう思った時、ゼーキルが言い始める。
「うん? なにか聞こえる……」
「俺には何にも」
「そりゃそうだろう。でも、俺は耳のスキルを鍛えてるんだ。お前が聞きとれない音でも聞きとれる」
「じゃあどこから音がするか教えてくれ」
「この先のY字に分かれた道の左。その奥からだ……」
リスが話に乱入してくる。
「だったら行こうよ! モンスターだろうとワンダラーだろうと、さっさと殺そう!」
俺はうなずいて返す。
「OK。締まってこうぜ!」
言ってスタスタ歩き出す。リスが「ねぇ、ちょっと!」なんて言いながら追いかけてくる。
いい獲物がいると嬉しいが。ま、ダメで元々だ。あまり期待はしないでおこう。
女の名前は”葡萄リス”という。長いから略して「リス」と呼ばれることが多い。
こいつは朝も昼も夜も、いつだってプラネットにログインしてやがる。要するにネトゲ廃人だ。
なんでそんなことができるのか、前に質問したことがある。答えは、「夜間の大学に通ってて時間に融通が利くから」だった。
はぁ? なに言ってやがる? もし大学生なら、講義に出なくちゃならんだろうが。でもリスは平日の夜だってゲームしてる、つまりあの答えはウソ!
どーせ正体は引きこもりとかニートだ。ネット以外に身の置き場がない落ちこぼれ、競争社会の負け犬ってわけ。
我がクラン、”グリニング・パンプキンズ”の面々は、そんなんとっくにお見通しさ。
でも、相手が現実世界で何をしてるか、深く尋ねないのがネットのマナーだ。だから誰もこれ以上の追及をしていない。
そういや、昔どこかの匿名掲示板でこんな書きこみを見かけたぜ。
”ネットでうまく生きていくコツの一つは、他人の私生活をなるべく聞かないことだ。知りたがりはうざがられる”
まさしくその通り。知りたがりはうざがられる。あぁ、なんと美しく、引きこもりや無職に都合のいいネチケットだ!
クソ……。こんなアホなことを考えも無意味だ。俺はアフリカンの男、ゼーキルに話しかけ、気分転換を図る。
「なぁ、引き返そうぜ」
「どうしたセブン。いきなり……」
セブン。それがプラネットにおける俺の名前だ。本名が七寺だからセブン、それと、ラッキー・セブンのご利益にあやかれますようにって願いもこめてある。
もっとも、今日はぜんぜんラッキーを感じないがな。もしそんなんがあるなら、さっさと獲物を見つけさせろ! 面倒は嫌いだ!
そう思った時、ゼーキルが言い始める。
「うん? なにか聞こえる……」
「俺には何にも」
「そりゃそうだろう。でも、俺は耳のスキルを鍛えてるんだ。お前が聞きとれない音でも聞きとれる」
「じゃあどこから音がするか教えてくれ」
「この先のY字に分かれた道の左。その奥からだ……」
リスが話に乱入してくる。
「だったら行こうよ! モンスターだろうとワンダラーだろうと、さっさと殺そう!」
俺はうなずいて返す。
「OK。締まってこうぜ!」
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