VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

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第2章 2084年

第43話 弱い連中を見殺しにすることが必要 She finally wised up

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 熊里は話を続ける。

「こんな時代、俺だって最低と思ってるさ。でもどうしようもないだろ? テロリストたちは革命を叫ぶけど、いくら努力したって何も変わらない……。
 革命よりも大事なのは、お行儀よく生きることだ。黙ってLMの言うことに従い、会社の命令に従い、せっせと働いて真面目に暮らす。それで充分だろ?
 さいわい給料はたくさんもらえるんだ。嫌なことがあれば、その金で遊んで気をまぎらわせろ」
「でも、それじゃあ私たちは救われても、他の人たちは救われない。あの汚染水を飲んでる人たちは救われない!
 私はそんなの嫌です。目の前に大問題が転がってるのに見て見ぬふりなんて、私には出来ません!」
「はぁ……。そうか……」

 どうしたら若海の向こう見ずをやめさせられるだろう? 熊里は別角度から攻めてみることにする。

「なぁ若海、よく聞いてくれ。LMに殺されるって、まだマシなエンディングなんだよ。
 ほんとに怖いのは、仕事をクビになって下民階級に落とされることだ。
 もし落ちたら地獄だぞ。あぁいう汚い水を飲み、同じくらいに汚い空気を吸い、少しずつ体を壊していく。
 重い病気にかかって苦しみながら生きるのは嫌だろ? でも、今の状態で真面目に働いてれば、そんなのと無縁でいられる。
 よく考えろ。お前がやろうとしてることは、そこまで大きなリスクを背負ってまですることか?」
「……(無言)」
「若海。都会で暮らしてこうと思ったら、弱い連中を見殺しにすることが必要なんだよ。
 だから諦めろ。見て見ぬふりで生きていけ。騒いだって何も変わらないし、解決しないんだ……」

 熊里は言いながら情けなくなる。臆病な自分に軽蔑を感じる。
 しかし、会社やLMと戦うなんて無理なのだ。殺されたくない、下の階級に落とされたくない。そういう恐怖が熊里を支配している。

 人間だれだって我が身が可愛い、だったら、我が身を優先して何の問題がある? どうか若海にそれを分かって欲しい。
 そんな熊里の願いが伝わったのだろうか。若海は、冷たい視線を熊里に向け、小さく静かに言う。

「はい。……わかりました」
「そうか。ありがとう」

 微笑み、熊里は安心する。そうだ。それでいい。下民なんて捨て置けばいい。
 二人のチャットはこうして終わった。
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