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第2章 2084年

第40話 いつか誰かが必ずお前らを叩き潰す Damnation

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 ベアたちの周りに多数のワンダラーが現れる。
 ポールが「わぁッ、PK!?」と悲鳴をあげる。タイガーが「クソッ! ジャマー使ってたのに!」と罵り、ベアは頭上を見上げる。

 岩の頂に人影は無い。しかしさっきの声は間違いなくあそこから響いた。
 考えられる可能性はただ一つ。何者かがステルス状態で潜伏しているのだ。ベアは怒鳴りつける。

「お前の居場所はバレバレだ! ステルスをやめて降りてこい!」

 頂に若い男の姿が現れる。日本人のアバターで、金髪を肩のあたりまで伸ばしている。この男は言う。

「へぇ。お前、よくここが分かったな?」
「耳がいいのが自慢でね」
「そりゃすごい。さて……」

 男は地面に飛び降りる。ビルの5階ほどの高さから実行したはずだが、ノー・ダメージだ。
 このこと一つだけで相手の実力が分かる。ベアたちより圧倒的に格上、戦えば一瞬で殺される。

 それに、そもそも完全包囲されているのだ。勝ち目なんてどこにある?
 こういった事情はベアだって分かっている。しかしプライドが降伏の選択肢を許さない。彼は力いっぱいの大声を若い男に叩きつける。

「お前、どこのどいつだ!」
「噂くらいは知ってんだろ? クラッシュ・シティの支配者、グリニング・パンプキンズを。
 俺はパンプキンズのリーダー、セブンだ! 今後ともよろしく!」

 言いながら彼は拳銃を撃ち、ベアの足元の小石を粉々にする。
 そのまま銃口をベアの顔に向け、ニヤニヤと笑って話す。

「俺は鬼や悪魔じゃねぇ。そのドロップ置いて帰ってくれればよ、命は勘弁してやる」
「ふざけるな! そんな要求、従うかよ!」
「おいおい、死にてーのか? いいからさっさと帰れって言っててんだ! マジ殺すぞクズども!」

 セブンは銃を乱射する。弾が次々にベアの足元に当たり、土ぼこりを巻き上げる。
 それを見てパニックとなったポールが震え声で言う。

「ベアさん、降参しましょうよ。こりゃ無理です」
「でもせっかくチタンが手に入ったんだぞ!」
「あんなん最悪、課金でゲットできるじゃないですか! 今は命を大事にしましょう! おーい、セブンさん! 俺は降伏だ!」

 ポールは手から銃を落とし、両手を挙げる。

「ほら、完全降伏! だから撃たないでくれよ!」

 そろそろベアも決断しなくてはならない。抗うか、従うか。
 彼の理性が主張する。戦って負けて経験値を失うより、おとなしく従うべきだと。彼は歯噛みして言う。

「分かった。セブン、俺も降伏だ」

 銃を落とす。情けない音がドサンと響き、消える。
 満足そうにセブンは言う。

「よしよし、それでいいんだよ。あとはお前が残ってるだけだ、おい、お前だよ!」
「くそっ……!」

 みなにならってタイガーも武器を手放す。悔し顔で言う。

「てめぇ覚えてろよ、次は復讐してやる!」
「はいはい。その手のセリフは聞き飽きたっつーの」
「いいか、よーく聞いとけ。世の中は因果応報、自業自得っていうだろ。お前らがやったことは、いつかお前らにはね返るんだぜ。
 それに、もし俺たちが復讐できなくても、いつか誰かが必ずお前らを叩き潰す。そんとき吠え面かいても遅せぇぞ!」
「わかった、わかった! で、言いたいことは終わりか? なら帰れ、飽き飽きなんだよ!」

 再度の威嚇射撃がタイガーの足元に行われる。怒りがタイガーの胸にこみあげ、叫ぶ。

「因果応報! 自業自得! ぜってぇ誰かが復讐する、覚えとけ! クソ野郎!」

 いくら吠えても結果は変わらない。ベアたちは脅しに屈した、残念だが事実だ。
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