VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

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第2章 2084年

第39話 ステルス状態の何者か Deja vu

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 ゴースト・キラー捜索を始めてしばらくの間は、まったくのザコとの戦いが続くばかりだった。
 それでも、長いこと冒険していると集中力が落ちてくるし、精神的な疲労も溜まる。

 だからポールは、大岩がいくつか転がっている地点に来た時、小休止を提案した。
 岩を盾にして隠れていれば安全に休めるだろう。全員がそう判断し、やれやれといった調子で腰を下ろした。

 宙に浮かんでいるジャマーを眺めながらタイガーがぼやく。

「こんだけ探しても見つからねぇんじゃ、今日は無理かもなぁ……」

 ポールが答える。

「じゃあそろそろ解散します?」
「せっかく高級ジャマーを使ったんだ。もう少し……」

 直後、ジャマーの光がいきなり強まる。視界の隅にあるレーダーに赤い点が一つ出現する、同時に警告文も。

”ステルス状態の何者かを感知!”

 すぐさま武器を取って立ち上がり、タイガーが言う。

「来やがったぜ、お客さんがよ!」

 ベアが返す。

「でも本当にキラーか?」
「こんな酔っ払いみたいなフラフラ歩き、人間はやらねぇよ!」

 言いつつタイガーは戦闘用ミラーを取り出し、くの字に曲げ、岩陰から外を見る。
 紫のロング・コートに身を包んだガイ骨が、トンプソン・サブマシンガンを持ってうろうろと浮遊しているのが分かる。

 タイガーは会話をチャット回線に切り替えて話す。

(確認した。間違いなくキラーだ)

 ポールが(よっしゃ!)と嬉しそうに言い、ベアが(で、どうする?)とタイガーに聞く。

(挟み撃ちでいこう。俺とポールがキラーを引きつける、ベア、その隙に斬り倒してくれ)
(了解)

 タイガーとポールが岩の右側に行く。ベアは彼らの反対側へ行き、ソードを取り出す。
 全員が配置についたのを確認し、タイガーが号令する。

(いくぞ!)

 まずタイガーたちが飛び出し、キラーへ散発的に撃ちこむ。不意を突かれたキラーは驚き、慌てて彼らに反撃する。
 キラーの向きが変わったことで死角が生まれる。ベアはそこを目指して走り、斬りかかる。

「はぁーっ!」

 縦斬りからの横斬り、さらに縦斬りを放ってから蹴り飛ばす。キラーの体勢が崩れ、ベアはその隙に跳び退いて叫ぶ。

「タイガー! ポール!」
「任せろ!」
「いくぜぇ!」

 二人の猛射撃が始まる。キラーは一瞬で蜂の巣にされて死亡し、消えていく。
 幾つかのドロップ品が地面に出現する。回収のため、全員さっそくそこへ向かう。
 
 タイガーが最初に到着する。ドロップの一つを手に取る。黒くて小さな鉱石だ。

「おい、チタン鉱石だ! しかも上物!」

 遅れて到着したベアが別のドロップを拾い上げる。感嘆の声を漏らす。

「すげぇ……こっちはシルバー!」

 ようやくタイガーたちに追いついたポールが嬉しそうにたずねる。

「ベアさん! それ以外はなんかありますか?」
「えー、そうだな……」

 ドロップを拾おうとしてベアが腰をかがめる。瞬間、全員の前にある大きな岩の上から、若い男の声が響き渡る。

「武器を捨てろ! すでに包囲した!」 
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