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第1章 下流階級で低収入の俺が本気出したら無双してしまった
第16話 ぶらり一人旅 Hunky-dory gunslinger
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翌日。幸運にも仕事が早く終わった俺は、プラネットへ行くために超特急で帰宅した。
玄関のドアを開けてスマート・スピーカーに言う。
「ただいま、連絡事項は?」
「以前に利用されたコンビニから電子クーポンが届いております」
部屋で服を脱ぎながら会話を続ける。
「クーポン?」
「はい。牛丼のクーポンです。利用すれば10パーセント・オフだそうです」
「じゃあそれ使ってで牛丼頼んどいて。受け取りはこないだのコンビニね」
「かしこまりました」
「風呂はやらなくていい、シャワーですませる。じゃあな」
「はい」
脱ぎ終わり、タオルを手に風呂場へ。
シャワーが終わったらエナジー・ドリンクで元気を補給して、プラネットへ直行だ!
ブラック・スクールと呼ばれるダンジョンがある。学校によく似た建築物で、外壁がどこも真っ黒に塗られている。
ここをソロで攻略するには2億のパワーが必要ってのが世間の意見だ。そんなところに俺は一人で、即ちソロで入っていく。
無謀? かもしれんね。だって、”以前の俺は”パワー1億5000万だったわけだからな。そう、以前はな……。
俺はスクール内を歩き回り、一匹のモンスターに出くわす。クラップ・クラブ(crap crab)だ。金属のガラクタで作ったカニ型の機械だよ。
高さ約2メートル、横だけでなく前後にも動くことができて、打撃戦を得意とする。なるべくなら飛び道具で片づけたほうがいい。
さっそくブローニング・ハイパワーの試し撃ちといこうじゃねぇか。俺は両手でしっかりと握り、容赦なくバンバンと連続発砲する。
直撃弾を受けたクラブがよろめき、数本の脚がちぎれ飛ぶ。さすがの威力だ、そう感心したタイミングで弾が尽きる。マガジンを交換しなくちゃ。
もっとも、プラネットはあくまでゲーム。そんな面倒な作業をしなくても、数秒すれば自動的にリロードされる。もちろん望むなら手動交換も可能だがな。
まぁどちらの方法を使うにせよ、パーティを組んでいれば、仲間に援護してもらってリロードの時間を稼げる。しかしソロじゃぁそうはいかない。ならどうする?
だったらいっそ接近戦だ。俺は銃を左手で持ち、空いた右手を腰へ伸ばしてソードの柄を取り出す。スイッチをオン……赤く輝く刀身が出現する。
そいつを見たクラブがゲップするような音を出す。「グェッ、グェッ!」。ビビってんのか? それとも威嚇なのか。
「カニの言葉なんてわかんねぇよ!」
言ってソードを構える。こないだの課金でゲットした最新モデル、フェアレーター(Verrater)だ。どういう意味の言葉かは知らんが、クールな響きだ。気に入ってる。
「じゃ、覚悟しな!」
突っこんで連続斬りを浴びせる。カッターで紙を切るかのごとく、やすやすとクラブの体を斬り裂く。
「グェェッ……」
HPゼロとなったクラブは、謎の光の粉をまき散らしながら消滅していく。俺はこういう描写が好きじゃない、洋ゲー風に死体が残るタイプが好みだ。
まぁいいか、そんな話は。それよりドロップを調べよう。俺は奴がいた地点に行き、その場に落ちているアイテムを調べる。
成果は……カニのハサミが2つ、甲羅が1つ。どれも換金アイテムだ。こういうのを冒険者協会に売って金を稼ぐってわけ。
とりあえずアイテム・ボックスにしまっとこう。ドロップたちは煙のように消えていき、ボックス内に入る。こういうの見ると「まさにゲームの世界だな」って思うよ。
ところで、どうよ、俺? 強くなっただろ? 課金は偉大だ、一瞬にしてこれだけ強くなれる。まるで心まで豊かになったような気がするね。
そんなことをしみじみ思いつつ、ダンジョン探索を再開する。
2階に行って何回かの戦闘を行い、ドロップを回収して3階へ。またもや戦闘、またもや楽勝。ちょっと張り合いねぇなぁ……もっと強いのと戦いたい。
そう思った時、廊下の前方から物音が響く。いや、物音というよりは喋り声か? 学校の設備でいうところの教室、声はそこから聞こえてきている。
こいつには聞き覚えがある。予想が正しければきっと奴らだろう。ならば行くまでだ。
そもそも俺は、奴らに会うためにここに来たのだから。
玄関のドアを開けてスマート・スピーカーに言う。
「ただいま、連絡事項は?」
「以前に利用されたコンビニから電子クーポンが届いております」
部屋で服を脱ぎながら会話を続ける。
「クーポン?」
「はい。牛丼のクーポンです。利用すれば10パーセント・オフだそうです」
「じゃあそれ使ってで牛丼頼んどいて。受け取りはこないだのコンビニね」
「かしこまりました」
「風呂はやらなくていい、シャワーですませる。じゃあな」
「はい」
脱ぎ終わり、タオルを手に風呂場へ。
シャワーが終わったらエナジー・ドリンクで元気を補給して、プラネットへ直行だ!
ブラック・スクールと呼ばれるダンジョンがある。学校によく似た建築物で、外壁がどこも真っ黒に塗られている。
ここをソロで攻略するには2億のパワーが必要ってのが世間の意見だ。そんなところに俺は一人で、即ちソロで入っていく。
無謀? かもしれんね。だって、”以前の俺は”パワー1億5000万だったわけだからな。そう、以前はな……。
俺はスクール内を歩き回り、一匹のモンスターに出くわす。クラップ・クラブ(crap crab)だ。金属のガラクタで作ったカニ型の機械だよ。
高さ約2メートル、横だけでなく前後にも動くことができて、打撃戦を得意とする。なるべくなら飛び道具で片づけたほうがいい。
さっそくブローニング・ハイパワーの試し撃ちといこうじゃねぇか。俺は両手でしっかりと握り、容赦なくバンバンと連続発砲する。
直撃弾を受けたクラブがよろめき、数本の脚がちぎれ飛ぶ。さすがの威力だ、そう感心したタイミングで弾が尽きる。マガジンを交換しなくちゃ。
もっとも、プラネットはあくまでゲーム。そんな面倒な作業をしなくても、数秒すれば自動的にリロードされる。もちろん望むなら手動交換も可能だがな。
まぁどちらの方法を使うにせよ、パーティを組んでいれば、仲間に援護してもらってリロードの時間を稼げる。しかしソロじゃぁそうはいかない。ならどうする?
だったらいっそ接近戦だ。俺は銃を左手で持ち、空いた右手を腰へ伸ばしてソードの柄を取り出す。スイッチをオン……赤く輝く刀身が出現する。
そいつを見たクラブがゲップするような音を出す。「グェッ、グェッ!」。ビビってんのか? それとも威嚇なのか。
「カニの言葉なんてわかんねぇよ!」
言ってソードを構える。こないだの課金でゲットした最新モデル、フェアレーター(Verrater)だ。どういう意味の言葉かは知らんが、クールな響きだ。気に入ってる。
「じゃ、覚悟しな!」
突っこんで連続斬りを浴びせる。カッターで紙を切るかのごとく、やすやすとクラブの体を斬り裂く。
「グェェッ……」
HPゼロとなったクラブは、謎の光の粉をまき散らしながら消滅していく。俺はこういう描写が好きじゃない、洋ゲー風に死体が残るタイプが好みだ。
まぁいいか、そんな話は。それよりドロップを調べよう。俺は奴がいた地点に行き、その場に落ちているアイテムを調べる。
成果は……カニのハサミが2つ、甲羅が1つ。どれも換金アイテムだ。こういうのを冒険者協会に売って金を稼ぐってわけ。
とりあえずアイテム・ボックスにしまっとこう。ドロップたちは煙のように消えていき、ボックス内に入る。こういうの見ると「まさにゲームの世界だな」って思うよ。
ところで、どうよ、俺? 強くなっただろ? 課金は偉大だ、一瞬にしてこれだけ強くなれる。まるで心まで豊かになったような気がするね。
そんなことをしみじみ思いつつ、ダンジョン探索を再開する。
2階に行って何回かの戦闘を行い、ドロップを回収して3階へ。またもや戦闘、またもや楽勝。ちょっと張り合いねぇなぁ……もっと強いのと戦いたい。
そう思った時、廊下の前方から物音が響く。いや、物音というよりは喋り声か? 学校の設備でいうところの教室、声はそこから聞こえてきている。
こいつには聞き覚えがある。予想が正しければきっと奴らだろう。ならば行くまでだ。
そもそも俺は、奴らに会うためにここに来たのだから。
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