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第1章 下流階級で低収入の俺が本気出したら無双してしまった

第6話 予想できなかったこと Used-up has-been

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 言われてみると確かに変だ。食器をぶつけあっているようにうるさい。マサキングが警告する。

「モタモタすんな、来るぞ!」

 三脚たちが姿を現す。何匹いるんだ、3、4、……7!? ふつうは4匹程度だろ! 俺は驚く。

「どうなってんだ!?」

 アンズさんが「とにかく撃って!」と叫んで発砲する。慌てて俺とマサキングも撃ち始め、戦闘が始まる。
 こちらの猛射撃は3匹を倒したらしい。死んだ三脚たちが、光の粉のようなものをまき散らしながら消滅していく。ゲームによくある表現だ。

 残った4匹は銃を乱射しながら突進してくる。いったん身を隠そう、なにか柱とかの陰に……。
 クソッ! 廊下に何があるってんだ! 逃げ場なんて無い!

 敵の銃弾が俺たちの体を突き抜けていき、HPゲージがごっそり減る。マサキングが言う。

「こうなりゃ接近戦だ!」

 彼は右足のホルスターに素早く銃をしまい、かわりにご自慢のスカージを取り出す。「クソッタレ!」と怒鳴りながら突っこんでいく。
 こっちも負けてられねぇ! 俺もラファールを手にして突っこむ、ちょうど目の前にいる三脚を斬る。

 そいつのそばにいる別の三脚が俺を撃ち、俺のHPはついに半分未満となる。

「バーバリアンさん!」

 アンズさんが俺のいる方へ銃を向け、撃ってくる。援護射撃ってわけか。
 大丈夫、俺に当たる心配はしなくていいぜ。このゲームにはフレンドリー・ファイアなんて存在しねぇ。

 さっき俺に撃ってきた三脚が、怒りに駆られ、アンズさんへ走っていく。よし、この隙に眼前の三脚を倒す!
 大上段にラファールを構え、”疾風”の名の通りに高速で斬り刻む。

 三脚のHPが猛スピードでゼロになって死亡する。今度は俺がアンズさんを助けなくちゃ。視線を向ける、すると彼女はなぜか発砲せずに棒立ちになっている。
 いや、違う! あれはジャムってるんだ! 証拠に、アンズさんの顔は真っ青だ。

 俺は彼女を助けるために走り出そうとする。だがそれよりも早くマサキングがアンズさんのそばに駆け寄り、スカージを振るう。

「おらぁ!」

 青白い剣身が三脚の体を斬り裂き、一撃で絶命させる。
 やれやれ……。俺は状況を確認するためにあたりを見回す。よし、敵は全滅してる。こっちの勝利だ。

 にしても危ないところだった。マサキングがいなかったら、アンズさんは死んでたかもしれん。
 彼女もそう思ったらしく、マサキングにお礼の言葉を述べている。

「ありがとう、マサキングさん! 助かったよ! すっごい強いねぇ」
「スカージのおかげですよ。買って正解でしたね」
「いいなぁ~、うらやましい……。あたしも欲しいんだけど、今月もう金欠でさぁ……」
「無理して課金はしないほうがいいですよ、お金はリアル優先で使ってかないと」

 俺は楽しそうな二人から視線をそらし、自分の右手のラファールをながめる。
 決して悪い武器じゃない。まだやれるはずだ。がっつり改造したんだから。問題なんてどこにある?

 ……うん。お前に言われなくたって分かってるよ。とっくに買い替えの時期だってことくらい……。
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