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第四章 ファルコンズ最高!(Falcons rules!)
第20話-1 決戦開始!
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さて、試合について語る前に、ルールについて確認しておこう。まぁだいたいは前回と同じだが。
試合時間九十分、七イニングス、変化球OK、バントと盗塁は禁止。七点差がついたらコールド成立。そして、荒天となった場合はそこで試合終了。
もっとも、今日の天気なら大崩れなどあり得ないだろう。どちらかというとコールドの条件に気をつけるべきかもしれない。
欠場している小荷田のかわりに四番を務める米木津、三十後半の男性だが、筋肉質な体から推察するに、ひょっとすると小荷田よりも長打力があるかもしれない。彼の出番の前にランナーを出さないようにしたいところだ。
それでは、プレイ・ボール!
スパローズ先発は前回と同じく藤ノ原だが、ファルコンズ打線は彼への恨みを爆発させるかのようにガンガン攻め立て、あっさり一点を奪い取る。
米木津には申し訳ないが、彼はしょせん補欠レベルのキャッチャーだ。きっぱり言って実力不足である。投手の力を生かすも殺すもキャッチャーにかかっている、なのにボンクラではこうなって当たり前だ。
藤ノ原とは対照的に比良は絶好調のピッチングを見せる。初回裏は三者凡退であっさり仕事を終え、二回裏もフォアボール一つと単打一つを許したが、しっかりゼロ点でピンチを終わらせる。
この流れに大きな変化が訪れたのは三回の裏だ。九番藤ノ原が四球で歩いた後に一番稲川が凡退、次の二番土屋がシングルで一死一塁二塁としたところで三番飯村がクラッチを放って一点を獲得。
試合がここまで進んだ時、ついにあの男が球場にやってきたのだ。スパローズ監督の垣内は叫んだ。
「選手交代! バッター米木津にかわって、小荷田!」
不敵な笑顔を浮かべながら右打席に入った彼は、会心の一撃で比良の直球を飛ばして外野席に叩きこみ、スリーランという大成果をあげたのだ。
これによって得点は一対四、気づけばまたもやファルコンズ劣勢になってしまった。そして、ここまで打ちこまれた比良は音を上げてしまい、矢井場はついに決断した。
「しょうがねぇ、ピッチャー交代だ! 西詰、頼んだぞ!」
「はい!」
状況はノー・アウトでランナー無し、左の打席に入っているのはファーストを守る五十鈴だ。顎ヒゲを生やした四十半ばの彼は、リラックスした様子でバットを構えている。チームが逆転したことに安心しているのだろうか。
西詰&谷下のバッテリーとしては、ここで彼をアウトにして悪い流れを断ち切りたいところだ。そのためにはどう攻めるのが効果的なのか。
セット・ポジションに構え、西詰は第一球目を投げ込む。直球、速度は約百キロ。入団当初とは比べ物にならないほど威力が上がったそれは、内角低めにバシッと決まる。
「ストライク!」
谷下が西詰にボールを投げ返す。二人の間でサインのやり取り、そして第二球目が投げられる。百キロが外角低めに刺さる。
「ストライク・ツー!」
五十鈴、少し渋い顔をしながら構え直す。どうやら速度についていけていないらしい。それを見た西詰は、確かな自信と共に考える。
(監督が言った通り、ツーストライクなら遊び球なしですぐ仕留める……!)
右手の中のボールをドロップ用の握り方で保持する。そして投げる。
八十キロの遅い球がゾーンの外側へ逸れていくような軌道で飛んでいく。これにすっかりタイミングを狂わされたか、五十鈴はバットを振るものの全くタイミングが合わない。
「ストライク・スリー!」
三球三振、見事な投球術である。西詰は勝利のポーズを取って叫ぶ。
「よっしゃ!」
お次は六番の青柳だ。いわゆるロン毛の彼は言う。
「打たせてもらうぜ?」
「なら、やってみろ!」
挑発に負けないよう、西詰は気合を入れる。
一球目、腕を鋭くしなやかに振って速球を外角低めに投げ込む。
「ストライク!」
さらにもう一球、今度は内角やや高め。
「ストライク・ツー!」
とどめのドロップ!
「ストライク・スリー!」
空振り三振! ケチのつけようのない、芸術的なまでのピッチングだ。
アウトが三つになったことで三回の裏が終了する。次の四回表のファルコンズの攻撃はどうなるのか。
試合時間九十分、七イニングス、変化球OK、バントと盗塁は禁止。七点差がついたらコールド成立。そして、荒天となった場合はそこで試合終了。
もっとも、今日の天気なら大崩れなどあり得ないだろう。どちらかというとコールドの条件に気をつけるべきかもしれない。
欠場している小荷田のかわりに四番を務める米木津、三十後半の男性だが、筋肉質な体から推察するに、ひょっとすると小荷田よりも長打力があるかもしれない。彼の出番の前にランナーを出さないようにしたいところだ。
それでは、プレイ・ボール!
スパローズ先発は前回と同じく藤ノ原だが、ファルコンズ打線は彼への恨みを爆発させるかのようにガンガン攻め立て、あっさり一点を奪い取る。
米木津には申し訳ないが、彼はしょせん補欠レベルのキャッチャーだ。きっぱり言って実力不足である。投手の力を生かすも殺すもキャッチャーにかかっている、なのにボンクラではこうなって当たり前だ。
藤ノ原とは対照的に比良は絶好調のピッチングを見せる。初回裏は三者凡退であっさり仕事を終え、二回裏もフォアボール一つと単打一つを許したが、しっかりゼロ点でピンチを終わらせる。
この流れに大きな変化が訪れたのは三回の裏だ。九番藤ノ原が四球で歩いた後に一番稲川が凡退、次の二番土屋がシングルで一死一塁二塁としたところで三番飯村がクラッチを放って一点を獲得。
試合がここまで進んだ時、ついにあの男が球場にやってきたのだ。スパローズ監督の垣内は叫んだ。
「選手交代! バッター米木津にかわって、小荷田!」
不敵な笑顔を浮かべながら右打席に入った彼は、会心の一撃で比良の直球を飛ばして外野席に叩きこみ、スリーランという大成果をあげたのだ。
これによって得点は一対四、気づけばまたもやファルコンズ劣勢になってしまった。そして、ここまで打ちこまれた比良は音を上げてしまい、矢井場はついに決断した。
「しょうがねぇ、ピッチャー交代だ! 西詰、頼んだぞ!」
「はい!」
状況はノー・アウトでランナー無し、左の打席に入っているのはファーストを守る五十鈴だ。顎ヒゲを生やした四十半ばの彼は、リラックスした様子でバットを構えている。チームが逆転したことに安心しているのだろうか。
西詰&谷下のバッテリーとしては、ここで彼をアウトにして悪い流れを断ち切りたいところだ。そのためにはどう攻めるのが効果的なのか。
セット・ポジションに構え、西詰は第一球目を投げ込む。直球、速度は約百キロ。入団当初とは比べ物にならないほど威力が上がったそれは、内角低めにバシッと決まる。
「ストライク!」
谷下が西詰にボールを投げ返す。二人の間でサインのやり取り、そして第二球目が投げられる。百キロが外角低めに刺さる。
「ストライク・ツー!」
五十鈴、少し渋い顔をしながら構え直す。どうやら速度についていけていないらしい。それを見た西詰は、確かな自信と共に考える。
(監督が言った通り、ツーストライクなら遊び球なしですぐ仕留める……!)
右手の中のボールをドロップ用の握り方で保持する。そして投げる。
八十キロの遅い球がゾーンの外側へ逸れていくような軌道で飛んでいく。これにすっかりタイミングを狂わされたか、五十鈴はバットを振るものの全くタイミングが合わない。
「ストライク・スリー!」
三球三振、見事な投球術である。西詰は勝利のポーズを取って叫ぶ。
「よっしゃ!」
お次は六番の青柳だ。いわゆるロン毛の彼は言う。
「打たせてもらうぜ?」
「なら、やってみろ!」
挑発に負けないよう、西詰は気合を入れる。
一球目、腕を鋭くしなやかに振って速球を外角低めに投げ込む。
「ストライク!」
さらにもう一球、今度は内角やや高め。
「ストライク・ツー!」
とどめのドロップ!
「ストライク・スリー!」
空振り三振! ケチのつけようのない、芸術的なまでのピッチングだ。
アウトが三つになったことで三回の裏が終了する。次の四回表のファルコンズの攻撃はどうなるのか。
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