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第四章 ファルコンズ最高!(Falcons rules!)
第16話 助け合いの精神
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めぐみの相談に乗った日の翌日の午後のこと。
その時の西詰は、いつぞやのように玉手川へ向かうコースをランニングしていた。そして、いつぞやのようにボロ球場までやってきて、そこで素振りをしているデイビッドを見つけ、声をかけた。
「こんにちはー、デイビッドさん!」
「こんにちは、西詰さん」
デイビッドは素振りをやめて、笑顔で返答する。
「西詰さんも練習ですか?」
「はい、ランニングしてました」
「それはいいことです」
西詰はデイビッドのところへ行き、話を始める。
「どうですか、最近、調子は?」
「普通ですね。西詰さんは?」
「俺もまぁ普通ですよ。でも、野球始めた頃よりはいい感じです。やっぱり運動すると違いますね」
「体を動かすのはいいことです。しかし、無理はよくないです」
「気をつけますよ」
「西詰さん、ちょっとベンチ、休みませんか?」
二人は球場隅のボロいベンチへ行き、座る。
デイビッドが喋り出す。
「西詰さん、私のバッティング、どう思いますか?」
「どうって、まぁ、凄いと思いますよ」
「しかし、私、打率よくありません。私は悩んでいます」
西詰はデイビッドの顔色を伺う。少し気落ちしているような、そんな雰囲気が感じられる。
「デイビッドさん、IsoDってご存知ですか?」
「私そういうこと昔学んだことあります」
「じゃあご存知のはずじゃないですか。打率だけが打撃力のすべてじゃないって」
「それはそうです。しかし、walk(ウォーク)で出塁するのは本当に良いことでしょうか?」
「ウォーク?」
「あれ。西詰さんは英語の学生ではなかったですか?」
「そうですけど、ウォークって何ですか?」
「日本語で言うとフォアボールです。ボールが四つ出る、バッターは一塁へ歩く、ウォークする。だから、海外ではフォアボールではない、ウォークと言うのです」
「なるほど……」
「日本の野球の言葉は難しい。たとえは、イレギュラーバウンドという言葉、私は理解できなかった、最初」
「英語だとなんて言うんですか?」
「Bad hop(バッド・ホップ)ですね。他にもある、タイムリーヒット、分からなかったです。Clutch hit(クラッチ・ヒット)ですね」
「へぇ……」
「英語のことはこれで終わりにしませんか。私は悩みを聞いて欲しい、少し」
デイビッドの顔つきは真剣だ。西詰は少し気合を入れて返事をする。
「悩み……ですか」
「ウォークで出塁する、それは安全だが、シングルと同じ結果です。一塁に行っておしまい。積極的に攻める、二塁打や三塁打を打つ。それが最も良いことではないですか?」
「そりゃあまぁ……」
「私は今の状態で良いのか。どう思われますか?」
「うーん……」
ひょっとすると、デイビッドは山阪の発言を気にしているのだろうか。
「西詰さん、どうすることが私には一番良いのでしょうか?」
「その、どうすればいいかってのは、俺には分からないんですが……。ただ、デイビッドさんはデイビッドさん、山阪さんは山阪さんですよ。別々の人間であり、個性が違う。俺はそれが大事だって思うんです」
「それはどういうことですか?」
「たくさん得点するにはランナーが必要です。ランナーがゼロじゃあ、ホームラン打っても一点でおしまいですよ」
「はい」
「だから、デイビッドさんみたいな出塁率の高い人が必要になる。塁に出るのが仕事の人、長打を打つのが仕事の人、どちらもチームに欠かせない」
「えぇ、その通りですね」
「人には長所があって、もちろん短所もあるわけです。それで思うんですが、自分の長所で誰かの短所を補う、逆に、誰かの長所が自分の短所を補ってくれる。そういうことって凄く大切で、チーム・プレイで助け合いながら戦うって、そこに意味があると思うんです」
「なるほどですね……」
「デイビッドさんには出塁率って長所があるじゃないですか。それを大事にするのが一番だと俺は思います。ホームラン打つだけがバッターの仕事じゃありませんよ、そう思いませんか?」
「いい言葉ですね、それは……」
デイビッドの顔つきが少し明るくなる。
「すんませんデイビッドさん、なんか出過ぎたこと言っちゃって……」
「そんなことはありません。私、気が楽になりました」
「そうですか?」
「はい。西詰さんは優しい、さや子さんのようだ」
「さや子さんですか……。俺、あの人のことよく知らないんですけど、デイビッドさんご存知ですか?」
「彼女はとても優秀です。すごく優しい、野球が上手い。私よりも走塁が得意です。頼りになります」
「へぇ……」
「あの子の家は喫茶店をしています。ここの近くにあります、知っていますか?」
「初耳ですよ」
「一度行ってみることをお勧めしたいです。サンドイッチがとてもおいしいですよ」
「分かりました」
その日はそんなこんなで終わっていった。
その時の西詰は、いつぞやのように玉手川へ向かうコースをランニングしていた。そして、いつぞやのようにボロ球場までやってきて、そこで素振りをしているデイビッドを見つけ、声をかけた。
「こんにちはー、デイビッドさん!」
「こんにちは、西詰さん」
デイビッドは素振りをやめて、笑顔で返答する。
「西詰さんも練習ですか?」
「はい、ランニングしてました」
「それはいいことです」
西詰はデイビッドのところへ行き、話を始める。
「どうですか、最近、調子は?」
「普通ですね。西詰さんは?」
「俺もまぁ普通ですよ。でも、野球始めた頃よりはいい感じです。やっぱり運動すると違いますね」
「体を動かすのはいいことです。しかし、無理はよくないです」
「気をつけますよ」
「西詰さん、ちょっとベンチ、休みませんか?」
二人は球場隅のボロいベンチへ行き、座る。
デイビッドが喋り出す。
「西詰さん、私のバッティング、どう思いますか?」
「どうって、まぁ、凄いと思いますよ」
「しかし、私、打率よくありません。私は悩んでいます」
西詰はデイビッドの顔色を伺う。少し気落ちしているような、そんな雰囲気が感じられる。
「デイビッドさん、IsoDってご存知ですか?」
「私そういうこと昔学んだことあります」
「じゃあご存知のはずじゃないですか。打率だけが打撃力のすべてじゃないって」
「それはそうです。しかし、walk(ウォーク)で出塁するのは本当に良いことでしょうか?」
「ウォーク?」
「あれ。西詰さんは英語の学生ではなかったですか?」
「そうですけど、ウォークって何ですか?」
「日本語で言うとフォアボールです。ボールが四つ出る、バッターは一塁へ歩く、ウォークする。だから、海外ではフォアボールではない、ウォークと言うのです」
「なるほど……」
「日本の野球の言葉は難しい。たとえは、イレギュラーバウンドという言葉、私は理解できなかった、最初」
「英語だとなんて言うんですか?」
「Bad hop(バッド・ホップ)ですね。他にもある、タイムリーヒット、分からなかったです。Clutch hit(クラッチ・ヒット)ですね」
「へぇ……」
「英語のことはこれで終わりにしませんか。私は悩みを聞いて欲しい、少し」
デイビッドの顔つきは真剣だ。西詰は少し気合を入れて返事をする。
「悩み……ですか」
「ウォークで出塁する、それは安全だが、シングルと同じ結果です。一塁に行っておしまい。積極的に攻める、二塁打や三塁打を打つ。それが最も良いことではないですか?」
「そりゃあまぁ……」
「私は今の状態で良いのか。どう思われますか?」
「うーん……」
ひょっとすると、デイビッドは山阪の発言を気にしているのだろうか。
「西詰さん、どうすることが私には一番良いのでしょうか?」
「その、どうすればいいかってのは、俺には分からないんですが……。ただ、デイビッドさんはデイビッドさん、山阪さんは山阪さんですよ。別々の人間であり、個性が違う。俺はそれが大事だって思うんです」
「それはどういうことですか?」
「たくさん得点するにはランナーが必要です。ランナーがゼロじゃあ、ホームラン打っても一点でおしまいですよ」
「はい」
「だから、デイビッドさんみたいな出塁率の高い人が必要になる。塁に出るのが仕事の人、長打を打つのが仕事の人、どちらもチームに欠かせない」
「えぇ、その通りですね」
「人には長所があって、もちろん短所もあるわけです。それで思うんですが、自分の長所で誰かの短所を補う、逆に、誰かの長所が自分の短所を補ってくれる。そういうことって凄く大切で、チーム・プレイで助け合いながら戦うって、そこに意味があると思うんです」
「なるほどですね……」
「デイビッドさんには出塁率って長所があるじゃないですか。それを大事にするのが一番だと俺は思います。ホームラン打つだけがバッターの仕事じゃありませんよ、そう思いませんか?」
「いい言葉ですね、それは……」
デイビッドの顔つきが少し明るくなる。
「すんませんデイビッドさん、なんか出過ぎたこと言っちゃって……」
「そんなことはありません。私、気が楽になりました」
「そうですか?」
「はい。西詰さんは優しい、さや子さんのようだ」
「さや子さんですか……。俺、あの人のことよく知らないんですけど、デイビッドさんご存知ですか?」
「彼女はとても優秀です。すごく優しい、野球が上手い。私よりも走塁が得意です。頼りになります」
「へぇ……」
「あの子の家は喫茶店をしています。ここの近くにあります、知っていますか?」
「初耳ですよ」
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その日はそんなこんなで終わっていった。
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