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第二章 フレンズ(Friends)

第8話-1 いざ試合!

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 鎌崎ジャイアンツとの試合を行うその日曜日は、よく晴れている上に風が微かで、屋外スポーツを行うにはまさにうってつけの天気といえた。
 矢井場仙吉が率いる遠山ファルコンズは、彼らのボロ球場の近くにある貸し球場に出向き、まずはそこの中でミーティングを開くことにした。

 球場内の一室、そこにあるホワイトボードの前には矢井場が立っていて、彼の前にあるたくさんの席にはファルコンズの面々が座っている。矢井場は右手に黒のペンを持ちながら喋り出す。

「まずはオーダーを発表するぞ。といっても、俺がそこに書いた通りだが……」

 ホワイトボードを見てみよう。カッコ内は守備位置を示している。

一番 デイビッド(サード)
二番 中西(左翼)
三番 テイター(遊撃)
四番 山阪(ファースト)
五番 谷下(捕手)
六番 下中村(右翼)
七番 幕井(中堅)
八番 江草(セカンド)
九番 ピッチャー

 この中で左打バッターなのはデイビッドのみで、両打ちはテイターのみ、他はすべて右打ちだ。

 矢井場は話を続ける。

「ピッチャーだが、先発は岩川だ。やれるとこまで頑張って、厳しくなってきたら西詰に交代、この作戦でいく」

 岩川から質問が飛ぶ。

「私と西詰くんだけですか、ピッチャーは……?」
「いざとなりゃあ俺も出る、安心しろ」
「あの、そういうことではなくて……。もっとピッチャー集まらなかったんですか?」
「しょうがねぇだろ、みんないろいろ事情があんだから」
「でも……」
「大丈夫だって、今のうちには期待の新人、西詰がいるんだぜ? 安心安全の中継ぎエース、出場すればしっかり仕事してくれる。だからお前はどーんと構えて投げりゃあいいんだ、打線だって十点くらい取るからよ」

 打線という言葉に反応し、今度は西詰が質問する。

「監督、今日の向こうの先発は誰なんですか?」
「まぁ上木原だろうな」
「あの人なかなか手強くて、点が取れないって噂ですけど……」
「ふん、まぁそうだが、勝負はやってみなけりゃ分からねぇ。お前、ドラゴンズ好きなんだろ。なら、九十五年の広島戦を知ってるだろ。九点取られたけど逆転勝ちしたやつ」
「なんでしたっけ、確か夏の試合で……。ドラの先発は佐藤秀樹、広島は近藤芳久で……」
「立浪が三番でパウエルが四番の試合だよ。広島は五回までに九点取って、こりゃあ中日の負けだとみんなが思ったさ。でもそっから少しずつ巻き返して、延長戦に持ち込んで逆転勝ちした」
「そういえばありましたね、そういう試合」
「これが勝負ってもんよ。何が起きても不思議じゃねぇんだ。だいたい、上木原が強いっていったってよ、あいつだって化け物じゃねぇんだ。調子が悪くて暴投したり、いろいろあるさ。だからビビるんじゃねぞ、勝負で一番駄目なのはそれだからな。お前ら全員、気合い入れてけ! 強気でいけ!」

 チーム一同、「はい!」と返答する。それから数分後、ミーティングは終了した。



 両チーム協議の上で決められたルールは以下の通りだ。
 まず、先攻はファルコンズで後攻はジャイアンツ。全七イニングスで延長はなし。四回終了をもって試合成立とみなす。また、試合時間は九十分だ。もし九十分を越えた場合は、その時の攻撃チームが攻撃を終えた時点で試合終了とする。

 たとえば、六回の表にファルコンズが攻撃していて、その最中に時間切れとなった場合、ファルコンズが三アウトとなって攻撃を終了するのと同時に試合終了となる。
 もしこれが六回裏のジャイアンツ攻撃中の場合も同じことで、ジャイアンツが三アウトになるのと同時に試合終了となる。

 それとコールドについてだが、四回終了以降に七点差がついた場合は即座にそこで試合終了という取り決めになっている。たとえまだ五回表であったとしても、その時の攻撃チーム(この場合はファルコンズ)が七点差を発生させたならそこで試合が終わる。
 最後にこれを述べて終わりにしよう。変化球、バント、盗塁、これら三つは禁止である。

 それでは試合開始、プレイ・ボールだ!
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