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第二章 フレンズ(Friends)
第7話-4 自販機ナード
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今、西詰とテイターはバッティングセンター内にあるベンチに座り、どちらもアルミ缶入りの飲み物を飲んでいる。西詰か手にしているのは紅茶で、テイターのはコーラだ。
不満そうな口調でテイターは言う。
「まったく、ムキになって戦ってさ。ちょっとは手加減してよ……」
「やだよ、勝負の世界は情け無用だろ」
「もぉ……」
コーラを一口飲み、彼女は話を続ける。
「それにしてもさー、日本って自動販売機いっぱいあるよねー。ねぇねぇ、なんで?」
「そんなん俺に言われたってさ……」
「アメリカじゃこんなに沢山なかったよー。そりゃ、学校とかには置いてあったけど、日本みたいに街中にたくさんあるなんて、そんなん珍しかったよ」
「なんでさ?」
「だって壊されたり中身盗まれたりするもん」
「治安悪っ……」
「しょうがないよ、日本と文化違うもん。にしても、ほんと自販機って面白いよねー。あたしこれ結構好きでさぁ、新しい商品見るととつい買っちゃうんだ」
「お気に入りとかあんの?」
「あれあれ。お汁粉」
「おしるこ……?」
「お汁粉。おいしいよ?」
「はは……」
「他にもねー、好きなの色々あるよ。あの、炭酸入ってるオレンジの……オレンジーノだっけ? あれ好きー。あとあと、ナタデココ入ってる薄味カルピスみたいなのも好き」
「なんでそんな詳しいの……。お前、もしかして自販機マニア?」
「……まにあ?」
困惑した顔をするテイター。
「どうした、テイター?」
「うーん、その、 mania (マニア)っていうのはそういう意味とちょっと違うんだよ。そもそも発音が違う、 mania を無理やり日本語っぽく言うとメィニィアかなぁ」
「へぇ……。日本語のマニアって、じゃあ英語だとなんて言うの?」
「うーん、なんだろ……。 メィニィアック(maniac)かなぁ? いや、ちょっと違う……。まぁ nerd(ナード)とかそのあたりじゃない? うん、だからあたしは自販機ナードだな」
「でもさ、ナードって、日本語で言ったらアキバ系のオタクみたいな意味なんでしょ。そんくらいは知ってるよ」
「実際そうなんだけど、適切な言葉が思い浮かばなくて……。」
テイターはごくごくとコーラを飲み、話を続ける。
「ぷはー、炭酸はこのしゅわしゅわがいいよねー」
「よくそんな一気に飲めるな……」
「海外は炭酸飲料ばっかだからね。そこで暮らしてりゃ、体が慣れてがぶがぶ飲めるようになるよ。まぁそれはそれとしてさ、今度の試合の話しよーよ」
「鎌崎ジャイアンツって実際どうなんだろうな。山阪さんは大したことないって言ってたけど」
「あはは、あの人らしいコメントだねー。あたしは戦ったことあるから分かるけどさ、強いか弱いかは相手のメンバー次第だよ。あっちの先発が上木原って人だとやばいかもね。カーブ投げてくるから」
「やっぱ変化球打てる人って少ないの?」
「うん。あたしもちょっと苦手だなー、まぁ、気合い入れれば打てるけどね!」
「テイター以外だと誰が打てんの?」
「そうだなぁ、山阪さんや谷下さんなら大丈夫じゃない? 後は分かんないなー……。デイビットは厳しいかも」
「なるほどね……。じゃあ得点はあんまり期待できないわけか。打ち合いよりも投手戦になりそうだな」
「まぁそうなるって決まったわけじゃないけど、覚悟しとく必要はあるかもね、ちなみに、投手戦を英語で言うと pitcher's duel (ピッチャーズ・デュエル)だよ」
「カッコいいな、それ」
「そうかも。まぁ攻撃はあたしや他の人たちに任せてさ、歩はどーんと相手打線をやっつけてよ! あたし、期待してるから!」
「了解……」
言って、西詰は紅茶を飲み、話を続ける。
「相手のバッターは誰がやばい?」
「んー、四番の玉橋さんかな。ポジションは外野、右投げ左打ち。とにかくバットに当ててくるからね、気をつけて」
「足は速いの?」
「うん、割と。でも安心して、ショートゴロだったらあたしが捕って、バシッと送球してアウトにするから!」
「お前、いつも自信満々だよな……」
「だってさぁ、人生は強気強気でいかないと! 弱気になったら勝負事に負けちゃうからね、歩もあたしを見習って気合い入れてこう!」
テイターは歩の肩をどーんと叩き、にこにこ笑って励ます。その笑顔は心の底から明るく、それを見た歩は少し勇気づけられた。
後は試合に出陣するのを待つだけである。
不満そうな口調でテイターは言う。
「まったく、ムキになって戦ってさ。ちょっとは手加減してよ……」
「やだよ、勝負の世界は情け無用だろ」
「もぉ……」
コーラを一口飲み、彼女は話を続ける。
「それにしてもさー、日本って自動販売機いっぱいあるよねー。ねぇねぇ、なんで?」
「そんなん俺に言われたってさ……」
「アメリカじゃこんなに沢山なかったよー。そりゃ、学校とかには置いてあったけど、日本みたいに街中にたくさんあるなんて、そんなん珍しかったよ」
「なんでさ?」
「だって壊されたり中身盗まれたりするもん」
「治安悪っ……」
「しょうがないよ、日本と文化違うもん。にしても、ほんと自販機って面白いよねー。あたしこれ結構好きでさぁ、新しい商品見るととつい買っちゃうんだ」
「お気に入りとかあんの?」
「あれあれ。お汁粉」
「おしるこ……?」
「お汁粉。おいしいよ?」
「はは……」
「他にもねー、好きなの色々あるよ。あの、炭酸入ってるオレンジの……オレンジーノだっけ? あれ好きー。あとあと、ナタデココ入ってる薄味カルピスみたいなのも好き」
「なんでそんな詳しいの……。お前、もしかして自販機マニア?」
「……まにあ?」
困惑した顔をするテイター。
「どうした、テイター?」
「うーん、その、 mania (マニア)っていうのはそういう意味とちょっと違うんだよ。そもそも発音が違う、 mania を無理やり日本語っぽく言うとメィニィアかなぁ」
「へぇ……。日本語のマニアって、じゃあ英語だとなんて言うの?」
「うーん、なんだろ……。 メィニィアック(maniac)かなぁ? いや、ちょっと違う……。まぁ nerd(ナード)とかそのあたりじゃない? うん、だからあたしは自販機ナードだな」
「でもさ、ナードって、日本語で言ったらアキバ系のオタクみたいな意味なんでしょ。そんくらいは知ってるよ」
「実際そうなんだけど、適切な言葉が思い浮かばなくて……。」
テイターはごくごくとコーラを飲み、話を続ける。
「ぷはー、炭酸はこのしゅわしゅわがいいよねー」
「よくそんな一気に飲めるな……」
「海外は炭酸飲料ばっかだからね。そこで暮らしてりゃ、体が慣れてがぶがぶ飲めるようになるよ。まぁそれはそれとしてさ、今度の試合の話しよーよ」
「鎌崎ジャイアンツって実際どうなんだろうな。山阪さんは大したことないって言ってたけど」
「あはは、あの人らしいコメントだねー。あたしは戦ったことあるから分かるけどさ、強いか弱いかは相手のメンバー次第だよ。あっちの先発が上木原って人だとやばいかもね。カーブ投げてくるから」
「やっぱ変化球打てる人って少ないの?」
「うん。あたしもちょっと苦手だなー、まぁ、気合い入れれば打てるけどね!」
「テイター以外だと誰が打てんの?」
「そうだなぁ、山阪さんや谷下さんなら大丈夫じゃない? 後は分かんないなー……。デイビットは厳しいかも」
「なるほどね……。じゃあ得点はあんまり期待できないわけか。打ち合いよりも投手戦になりそうだな」
「まぁそうなるって決まったわけじゃないけど、覚悟しとく必要はあるかもね、ちなみに、投手戦を英語で言うと pitcher's duel (ピッチャーズ・デュエル)だよ」
「カッコいいな、それ」
「そうかも。まぁ攻撃はあたしや他の人たちに任せてさ、歩はどーんと相手打線をやっつけてよ! あたし、期待してるから!」
「了解……」
言って、西詰は紅茶を飲み、話を続ける。
「相手のバッターは誰がやばい?」
「んー、四番の玉橋さんかな。ポジションは外野、右投げ左打ち。とにかくバットに当ててくるからね、気をつけて」
「足は速いの?」
「うん、割と。でも安心して、ショートゴロだったらあたしが捕って、バシッと送球してアウトにするから!」
「お前、いつも自信満々だよな……」
「だってさぁ、人生は強気強気でいかないと! 弱気になったら勝負事に負けちゃうからね、歩もあたしを見習って気合い入れてこう!」
テイターは歩の肩をどーんと叩き、にこにこ笑って励ます。その笑顔は心の底から明るく、それを見た歩は少し勇気づけられた。
後は試合に出陣するのを待つだけである。
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