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第2部 闇に死す
第2話 ちょっとした旅行
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マッシヴ・ボア狩りから数日後。ギンたちは、コーメルキムへ向かう商人たちの隊列に護衛として加わり、ボロい幌馬車やら馬やらに乗って旅をしていた。
隊列の先頭部には、馬に乗っているギンとリッチーがいて、二人は話をしている。だるそうな雰囲気のリッチーが喋る。
「はぁ、いつになったら着くのかねぇ……」
「あと2日か3日したらじゃない?」
「めんどくせぇなぁ、護衛しながらの旅ってのは……」
「しょうがないでしょ、お金ないんだから」
「金がない、金がないから馬を買えない、買えないから人様の馬をお借りする。情けねぇなぁ」
「我慢だよ、我慢。今は節約して、貯金してかないと」
「あの金属の板がお宝だといいんだがな」
「さぁ、どうだろうね……。魔法の力は感じないって、レーヴもキャンディスも言うしさ。かといって、美術や考古学の価値があるわけでもない」
「特別変わったところはないボロ金属。やっぱりガラクタか?」
「それはさすがにないと思うよ。だって、宝箱に入ってた奴だよ? それに、不思議な模様が刻まれてる。俺たちには分からない価値があるに決まってるさ」
「だといいがねぇ……」
リッチーは二週間前ほどに行った冒険のことを思い出す。
その日、リッチーたちは地下五階を探索していた。半年の歳月を経て強くなった彼らは、ブレイン・シェイカーを倒せるほどになり、少し前に四階を攻略した。そして最近は、五階を探索しているのである。
五階の床や壁は、まるでレンガのように赤茶けた色をしていて、それを見る人に荒野のイメージを与える。空気は少し乾いていて、匂いは殆どない。
レッサー・デヴィル(lesser devil, 低級悪魔)が多く出現するここでは、宝箱が見つかることがあり、四階までに比べればかなり稼げる。それゆえ多くの冒険者がここを訪れる。
なぜ宝箱が見つかるかは謎である。世人の大多数が語るのは、以下のような話である。
「モンスターは、死んだ冒険者からアイテムを奪う。そして、モンスターの中でも知性の高いものは、気に入ったアイテムを宝箱に入れ、保管する。
自分以外のモンスターに奪われないよう、鍵をかけ、念のために罠を仕込み、守りを固める。冒険者が見つける宝箱とは、こういったものである」
この説が嘘か本当かは誰にもわからない。知性あるモンスターが多く出現する場所で宝箱が見つかることを考えると、おそらくある程度は本当なのだろう。
何にせよ、もっとも大事なことは、宝箱の中にお宝が眠っているということである。それはたいていの場合ガラクタだが、たまには貴重なものが見つかる。その冒険でギンたちが見つけたものも、そういった貴重品だった。
今、ギンたちは、小部屋のような場所にいる。そこにはいろいろな品物が雑多に転がっていて、部屋の最奥部には、木製の宝箱がある。リッチーを除く全員は、少し遠くからそれを取り囲んでいて、リッチーは宝箱の前にいる。
彼は宝箱に手を当てながら目を閉じている。その手には魔法力の発動を示す青い光が輝いている。やがてその輝きは消えていき、完全に消滅する。リッチーが喋り出す。
「もう大丈夫だ。罠は完全に外れてる」
ギンが返す。
「悪いけど、開けてくれるか?」
「おうよ。宝箱を調べ、罠を外し、危険覚悟で開ける。それが俺の一番の仕事だ、ここは任せな……」
リッチーは緊張しながらゆっくりと宝箱を開ける。彼の視界に宝箱の中身が見えてくる。
最初に見えたのは、いくらかの金貨と銀貨だった。続いて、一本の短剣。それから、ボロくて小さい麻袋。彼は短剣を取り出し、そっと抜いて軽くながめる。そうしているところに、後ろからやってきたギンが声をかける。
「どう? なんか見つかった?」
「(短剣を見せながら)まぁ、中古で3000マーくらい……」
「ちょっと安くないか?」
「切れ味悪そうだし、しゃーねぇ」
「他には?」
「金がいくらか。あとはあの袋だな……」
リッチーは視線を例の麻袋へと向ける。ギンは麻袋に気付き、それを手に取る。慎重に袋を開け、中身を確かめる。
袋の中にあったのは、謎の、金属の板。彼はそれを引っ張り出して、観察してみる。
「なんだろう? リッチー、これ……」
「うん? (金属の板を見ながら)よくわかんねーな」
二人を見守っていたキャンディスがギンに声をかける。
「それ、私にも見せてもらえませんか?」
「はい」
「……」
キャンディスはそれを観察してみる。コメントを述べる。
「なんでしょうね?」
レーヴ。
「ねぇねぇ、あたしにも見せてよ」
「どうぞ」
「どれどれ? うーん……」
結論から言えば、ギンたちは金属の板の正体を理解できなかった。とはいえ、何か価値がありそうな感じがするのは事実。相談の末、彼らはこれを、コーメルキムの街の誰かに鑑定してもらうことに決めた。そういうわけで、彼らは今、旅をしているのだった。
話は馬上のギンとリッチーに戻る。相変わらず、二人は喋っている。ギンは言う。
「もしガラクタだったとしたら、まぁ、その時はしょうがないよ」
「しょうがなくねーよ、金と時間かけてんだから」
「まぁまぁ……。ちょっとした旅行と思ってさ、コーメルキムで遊んで帰る、それでもいいじゃないか」
「なんか、お前に言いくるめられてる気がするぜ」
「そんなことないって」
コーメルキムの街へ向けて、旅は続いていく。
隊列の先頭部には、馬に乗っているギンとリッチーがいて、二人は話をしている。だるそうな雰囲気のリッチーが喋る。
「はぁ、いつになったら着くのかねぇ……」
「あと2日か3日したらじゃない?」
「めんどくせぇなぁ、護衛しながらの旅ってのは……」
「しょうがないでしょ、お金ないんだから」
「金がない、金がないから馬を買えない、買えないから人様の馬をお借りする。情けねぇなぁ」
「我慢だよ、我慢。今は節約して、貯金してかないと」
「あの金属の板がお宝だといいんだがな」
「さぁ、どうだろうね……。魔法の力は感じないって、レーヴもキャンディスも言うしさ。かといって、美術や考古学の価値があるわけでもない」
「特別変わったところはないボロ金属。やっぱりガラクタか?」
「それはさすがにないと思うよ。だって、宝箱に入ってた奴だよ? それに、不思議な模様が刻まれてる。俺たちには分からない価値があるに決まってるさ」
「だといいがねぇ……」
リッチーは二週間前ほどに行った冒険のことを思い出す。
その日、リッチーたちは地下五階を探索していた。半年の歳月を経て強くなった彼らは、ブレイン・シェイカーを倒せるほどになり、少し前に四階を攻略した。そして最近は、五階を探索しているのである。
五階の床や壁は、まるでレンガのように赤茶けた色をしていて、それを見る人に荒野のイメージを与える。空気は少し乾いていて、匂いは殆どない。
レッサー・デヴィル(lesser devil, 低級悪魔)が多く出現するここでは、宝箱が見つかることがあり、四階までに比べればかなり稼げる。それゆえ多くの冒険者がここを訪れる。
なぜ宝箱が見つかるかは謎である。世人の大多数が語るのは、以下のような話である。
「モンスターは、死んだ冒険者からアイテムを奪う。そして、モンスターの中でも知性の高いものは、気に入ったアイテムを宝箱に入れ、保管する。
自分以外のモンスターに奪われないよう、鍵をかけ、念のために罠を仕込み、守りを固める。冒険者が見つける宝箱とは、こういったものである」
この説が嘘か本当かは誰にもわからない。知性あるモンスターが多く出現する場所で宝箱が見つかることを考えると、おそらくある程度は本当なのだろう。
何にせよ、もっとも大事なことは、宝箱の中にお宝が眠っているということである。それはたいていの場合ガラクタだが、たまには貴重なものが見つかる。その冒険でギンたちが見つけたものも、そういった貴重品だった。
今、ギンたちは、小部屋のような場所にいる。そこにはいろいろな品物が雑多に転がっていて、部屋の最奥部には、木製の宝箱がある。リッチーを除く全員は、少し遠くからそれを取り囲んでいて、リッチーは宝箱の前にいる。
彼は宝箱に手を当てながら目を閉じている。その手には魔法力の発動を示す青い光が輝いている。やがてその輝きは消えていき、完全に消滅する。リッチーが喋り出す。
「もう大丈夫だ。罠は完全に外れてる」
ギンが返す。
「悪いけど、開けてくれるか?」
「おうよ。宝箱を調べ、罠を外し、危険覚悟で開ける。それが俺の一番の仕事だ、ここは任せな……」
リッチーは緊張しながらゆっくりと宝箱を開ける。彼の視界に宝箱の中身が見えてくる。
最初に見えたのは、いくらかの金貨と銀貨だった。続いて、一本の短剣。それから、ボロくて小さい麻袋。彼は短剣を取り出し、そっと抜いて軽くながめる。そうしているところに、後ろからやってきたギンが声をかける。
「どう? なんか見つかった?」
「(短剣を見せながら)まぁ、中古で3000マーくらい……」
「ちょっと安くないか?」
「切れ味悪そうだし、しゃーねぇ」
「他には?」
「金がいくらか。あとはあの袋だな……」
リッチーは視線を例の麻袋へと向ける。ギンは麻袋に気付き、それを手に取る。慎重に袋を開け、中身を確かめる。
袋の中にあったのは、謎の、金属の板。彼はそれを引っ張り出して、観察してみる。
「なんだろう? リッチー、これ……」
「うん? (金属の板を見ながら)よくわかんねーな」
二人を見守っていたキャンディスがギンに声をかける。
「それ、私にも見せてもらえませんか?」
「はい」
「……」
キャンディスはそれを観察してみる。コメントを述べる。
「なんでしょうね?」
レーヴ。
「ねぇねぇ、あたしにも見せてよ」
「どうぞ」
「どれどれ? うーん……」
結論から言えば、ギンたちは金属の板の正体を理解できなかった。とはいえ、何か価値がありそうな感じがするのは事実。相談の末、彼らはこれを、コーメルキムの街の誰かに鑑定してもらうことに決めた。そういうわけで、彼らは今、旅をしているのだった。
話は馬上のギンとリッチーに戻る。相変わらず、二人は喋っている。ギンは言う。
「もしガラクタだったとしたら、まぁ、その時はしょうがないよ」
「しょうがなくねーよ、金と時間かけてんだから」
「まぁまぁ……。ちょっとした旅行と思ってさ、コーメルキムで遊んで帰る、それでもいいじゃないか」
「なんか、お前に言いくるめられてる気がするぜ」
「そんなことないって」
コーメルキムの街へ向けて、旅は続いていく。
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