28 / 55
第1部 すべては経験
第14話-3 地図があれば安心/Void Insurance
しおりを挟む
レーヴたちは15分とかからずにココナツ・アヴェニューへ到着する。そしてホコリっぽいそのアヴェニューを見て回る。
人間族、耳長族、男、女、若い者、中年の者。一山当てようと、誰もが必死に売ろうとしている。そんな中、白の耳長族に見える若い男性が、キャンディスたちに声をかける。
「おい、そこのお二人さん。あんたら、冒険者?」
レーヴがむっとして返す。
「そうだけど、もうちょっと丁寧に喋ってよ」
「まぁいいじゃねぇの、細かいことは。それで、何を探してんだ?」
「この街のダンジョン、地下四階の地図」
「地図ぅ!?」
そのミックストの男性は驚く。
「地図って……。そんな金あんの?」
「当たり前でしょ。お金なかったら探すわけないじゃん」
「はは、そりゃそうだ。ふん、ちょっと待ってろよ。その地図、心当たりがあるぜ」
男性はバッグの中をごそごそ漁る。そして一枚の黄色い紙を取り出し、喋る。
「ほら、お探しの地図だ。見てみるか?」
男性はレーヴにそれを渡す。彼女はキャンディスと共にそれを見る。キャンディスが感想を言う。
「へぇ、これは……。かなり書き込まれていますね」
レーヴもそれを見る。
「なるほど……。よくできてるじゃん。でもなんか変な感じ」
男性が返す。
「おい、なんだよ、変って」
「だってさ、冒険しながら作った地図って、もっとボロいでしょ。戦ったり走ったり、汗やら薬の染みやらで汚れてる、そういうもんじゃん? でもこれはきれい。ねぇ、なんでなの?」
「いや、それは……」
男は苦笑いを浮かべる。
「こないだ、あ~……えっと、酒場でポーカー勝負やって、賭け金代わりに手に入れてよ。前の持ち主がどういう奴だったか、俺はよく知らねぇ。だから、なぜボロくないかって言われても困るぜ」
「ふーん……」
「それで、買うのか、買わないのか?」
「いくらなの?」
「へぇ、そうだな……」
男性はレーヴたちの服装を見る。
「そこの、白いあんた。そのローブ、さざ波の奴だろ?」
「えぇ、そうですが……」
「そんなもの着てるって、金持ちなのかい?」
「さぁ……。ただ、これが高価な品だということは知っていますよ」
「ふーん……」
男性はもう一度、さざ波のローブを見る。そしてキャンディスに向かって言う。
「2万5000でどうだ」
「えっ、2万5000!?」
「当たり前だ、なにせ地図だぞ? おう、買わねぇなら帰った帰った。買わずにダンジョン行って、モンスターの巣に入って殺されりゃいいや」
キャンディスの顔が不安に包まれる
「私はそれが怖いんです。なるべく安全にいきたい、だから、どうしても地図が欲しいんです」
「なら、2万5000出してくれ」
「うーん……」
キャンディスに考える暇を与えず、男性は畳みかける。
「安全にいきたいんだろ? なっ、買っちまえよ、地図」
「でも……」
「なぁなぁ、やっぱり安全に冒険したいだろ? なっ?」
安全に冒険したいだろ? この言葉がキャンディスに止めを刺し、彼女は購入を決定した。レーヴは「高いよ~」と文句を言ったが、キャンディスは決して意見を変えず、強引に取引をまとめてしまった。
こうして、二人の買い物は終わった。地図にかなりの出費をしたせいで、レーヴの野望……新しい服を買うという野望がダメになったのは、言うまでもない。
これで準備は整った。後は出陣するのみ。
人間族、耳長族、男、女、若い者、中年の者。一山当てようと、誰もが必死に売ろうとしている。そんな中、白の耳長族に見える若い男性が、キャンディスたちに声をかける。
「おい、そこのお二人さん。あんたら、冒険者?」
レーヴがむっとして返す。
「そうだけど、もうちょっと丁寧に喋ってよ」
「まぁいいじゃねぇの、細かいことは。それで、何を探してんだ?」
「この街のダンジョン、地下四階の地図」
「地図ぅ!?」
そのミックストの男性は驚く。
「地図って……。そんな金あんの?」
「当たり前でしょ。お金なかったら探すわけないじゃん」
「はは、そりゃそうだ。ふん、ちょっと待ってろよ。その地図、心当たりがあるぜ」
男性はバッグの中をごそごそ漁る。そして一枚の黄色い紙を取り出し、喋る。
「ほら、お探しの地図だ。見てみるか?」
男性はレーヴにそれを渡す。彼女はキャンディスと共にそれを見る。キャンディスが感想を言う。
「へぇ、これは……。かなり書き込まれていますね」
レーヴもそれを見る。
「なるほど……。よくできてるじゃん。でもなんか変な感じ」
男性が返す。
「おい、なんだよ、変って」
「だってさ、冒険しながら作った地図って、もっとボロいでしょ。戦ったり走ったり、汗やら薬の染みやらで汚れてる、そういうもんじゃん? でもこれはきれい。ねぇ、なんでなの?」
「いや、それは……」
男は苦笑いを浮かべる。
「こないだ、あ~……えっと、酒場でポーカー勝負やって、賭け金代わりに手に入れてよ。前の持ち主がどういう奴だったか、俺はよく知らねぇ。だから、なぜボロくないかって言われても困るぜ」
「ふーん……」
「それで、買うのか、買わないのか?」
「いくらなの?」
「へぇ、そうだな……」
男性はレーヴたちの服装を見る。
「そこの、白いあんた。そのローブ、さざ波の奴だろ?」
「えぇ、そうですが……」
「そんなもの着てるって、金持ちなのかい?」
「さぁ……。ただ、これが高価な品だということは知っていますよ」
「ふーん……」
男性はもう一度、さざ波のローブを見る。そしてキャンディスに向かって言う。
「2万5000でどうだ」
「えっ、2万5000!?」
「当たり前だ、なにせ地図だぞ? おう、買わねぇなら帰った帰った。買わずにダンジョン行って、モンスターの巣に入って殺されりゃいいや」
キャンディスの顔が不安に包まれる
「私はそれが怖いんです。なるべく安全にいきたい、だから、どうしても地図が欲しいんです」
「なら、2万5000出してくれ」
「うーん……」
キャンディスに考える暇を与えず、男性は畳みかける。
「安全にいきたいんだろ? なっ、買っちまえよ、地図」
「でも……」
「なぁなぁ、やっぱり安全に冒険したいだろ? なっ?」
安全に冒険したいだろ? この言葉がキャンディスに止めを刺し、彼女は購入を決定した。レーヴは「高いよ~」と文句を言ったが、キャンディスは決して意見を変えず、強引に取引をまとめてしまった。
こうして、二人の買い物は終わった。地図にかなりの出費をしたせいで、レーヴの野望……新しい服を買うという野望がダメになったのは、言うまでもない。
これで準備は整った。後は出陣するのみ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!
武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。
ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる