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第1部 すべては経験
第10話-1 セール品/Cheap Is Dear
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翌日、朝、宿の一室。予定通り、ギンたちは作戦会議を始めた。まずギンが喋る。
「毒よけの装備品は当然買うとして、他に何がいるかな?」
キャンディスが答える。
「レーヴさんの魔法力を強めるアイテムなど、必要ではないでしょうか」
「そりゃあ、なんでさ?」
「固いウロコに守られたリザードには、剣より魔法が効くからですよ」
レーヴ、冒険者向けの野暮なショルダー・バッグから何かを取り出しながら言う。
「実はさ、こないだの冒険のお金でこういうのを買ったんだけど」
彼女はテーブルの上に何かを置く。それは長方形の薄い金属板で、不思議な模様が描かれており、上のほうには小さな赤いジェム(gem, 宝石)が埋め込まれている。
「じゃーん、マジック・アンプリファイアー(magic amplifier, 魔法増幅器)、略してマジック・アンプ! これはねー、魔法を使う時、威力を高めてくれるんだよー」
マジック・アンプ。それを見て、カールが声をかける。
「レーヴくん、それ、ちょっと見せてもらってもいいかい?」
「はい、どーぞ」
カールはそれをじっくり眺める。そして言う。
「これ、いくらしたんだい?」
「特別セール価格で2万マー! この性能で2万は安いですよね?」
「……あー、その……」
カールは言葉を選びながら返事を続ける。
「これは、私が思うに……相場1万5000」
「……えーっ!?」
「ジェムの質がイマイチなんだ。純度が低い。初心者向けとしてはまぁまぁの性能だけど、しかし、これで2万とは……」
「そんなぁ……」
リッチー、思わず口を挟む。
「お前さぁ、セールって言葉に弱すぎなんだよ。世の中、安かろう悪かろうなんだぜ? 買い物は気をつけねーと」
「くぅっ、リッチーには言われたくない! リッチーだって、ぼったくり価格でなまくらナイフ買ったことあるじゃん!」
「うるせぇよ!」
「頭ったま来た、あの商人、許さないんだから!」
「返品しに行くのか?」
「当たり前でしょ!」
「たぶんとっくにトンズラして、どっか別の街に行ってると思うぞ」
「えぇ~!」
ギンがなだめに入る。
「まぁまぁ、落ち着いて、レーヴ。まったくダメなアイテムってわけじゃないんだから。カールさん、これ、使えることは使えますよね?」
「うーん、まぁそうだが……」
「買っちゃったものはしょうがないですから、とりあえずこれで間に合わせようって思いますよ」
「私としては、あまりそれはお勧めできないが……」
カールは買い替えを主張したものの、予算の都合もあり、結局はこれを使うことで話がまとまった。レーヴはぼやきながらそれをバッグにしまう。
「はぁ、おいしい話には気をつけないとなぁ……。それで、ギン、後は何が必要?」
「俺はこれで大丈夫だと思うけど……。カールさん、何か意見ありますか?」
「いや、特にないよ。後は買いに行くだけだ」
「それじゃ、お昼ご飯を食べたら行きましょう。みんなもそれでいい?」
特に異議は出なかった。こういうわけで、その日の午後は買い物をすることに決まった。
冒険者として生きるなら、日常生活でも気を抜いてはいけない。
「毒よけの装備品は当然買うとして、他に何がいるかな?」
キャンディスが答える。
「レーヴさんの魔法力を強めるアイテムなど、必要ではないでしょうか」
「そりゃあ、なんでさ?」
「固いウロコに守られたリザードには、剣より魔法が効くからですよ」
レーヴ、冒険者向けの野暮なショルダー・バッグから何かを取り出しながら言う。
「実はさ、こないだの冒険のお金でこういうのを買ったんだけど」
彼女はテーブルの上に何かを置く。それは長方形の薄い金属板で、不思議な模様が描かれており、上のほうには小さな赤いジェム(gem, 宝石)が埋め込まれている。
「じゃーん、マジック・アンプリファイアー(magic amplifier, 魔法増幅器)、略してマジック・アンプ! これはねー、魔法を使う時、威力を高めてくれるんだよー」
マジック・アンプ。それを見て、カールが声をかける。
「レーヴくん、それ、ちょっと見せてもらってもいいかい?」
「はい、どーぞ」
カールはそれをじっくり眺める。そして言う。
「これ、いくらしたんだい?」
「特別セール価格で2万マー! この性能で2万は安いですよね?」
「……あー、その……」
カールは言葉を選びながら返事を続ける。
「これは、私が思うに……相場1万5000」
「……えーっ!?」
「ジェムの質がイマイチなんだ。純度が低い。初心者向けとしてはまぁまぁの性能だけど、しかし、これで2万とは……」
「そんなぁ……」
リッチー、思わず口を挟む。
「お前さぁ、セールって言葉に弱すぎなんだよ。世の中、安かろう悪かろうなんだぜ? 買い物は気をつけねーと」
「くぅっ、リッチーには言われたくない! リッチーだって、ぼったくり価格でなまくらナイフ買ったことあるじゃん!」
「うるせぇよ!」
「頭ったま来た、あの商人、許さないんだから!」
「返品しに行くのか?」
「当たり前でしょ!」
「たぶんとっくにトンズラして、どっか別の街に行ってると思うぞ」
「えぇ~!」
ギンがなだめに入る。
「まぁまぁ、落ち着いて、レーヴ。まったくダメなアイテムってわけじゃないんだから。カールさん、これ、使えることは使えますよね?」
「うーん、まぁそうだが……」
「買っちゃったものはしょうがないですから、とりあえずこれで間に合わせようって思いますよ」
「私としては、あまりそれはお勧めできないが……」
カールは買い替えを主張したものの、予算の都合もあり、結局はこれを使うことで話がまとまった。レーヴはぼやきながらそれをバッグにしまう。
「はぁ、おいしい話には気をつけないとなぁ……。それで、ギン、後は何が必要?」
「俺はこれで大丈夫だと思うけど……。カールさん、何か意見ありますか?」
「いや、特にないよ。後は買いに行くだけだ」
「それじゃ、お昼ご飯を食べたら行きましょう。みんなもそれでいい?」
特に異議は出なかった。こういうわけで、その日の午後は買い物をすることに決まった。
冒険者として生きるなら、日常生活でも気を抜いてはいけない。
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