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第一章 くたばれ重課金
第3話 札束で殴り合うゲーム
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えー、結論から言おう。俺たちはボコボコにやっつけられてしまった……。
今、俺とバーミィは、俺たちが所属してるギルドの建物の居間にいる。
このボロい部屋の中央には安物のテーブルや椅子があって、隅にはカウチがあり、俺はそれにだらしなく寝そべっている。
椅子に座ってるバーミィが話しかけてくる。
「どうよ、被害は?」
「金は三割ぐらい持ってかれたな。それと、回復アイテム」
「ウッド・ゴーレムのドロップ品は?」
「全部あいつにとられたね」
「そうか……。俺もだ」
「クソッ……」
今のドアが開き、盗賊風の恰好をした白エルフの女が入ってくる。こいつはベルって名前で、俺たちとは古い付き合いだ。
彼女は言う。
「どーしたの、みんな。そんなしょげちゃって……」
俺が答える。
「さっきオリヒソにやられたんだよ」
「PKされた?」
「あぁ」
「うわぁ、ご愁傷さま……」
彼女は肩をすくめて言い、近くの壁にもたれかかるようにして立ち、話を続ける。
「バーミィもやられたの?」
「まぁな……」
「二人いたのに勝てなかったんだ?」
「しょうがないだろ、オリヒソ相手じゃ分が悪い」
「それもそうか。重課金だしねー、あいつ」
「クソッ……」
重課金。重戦車みたいなゴツい言葉だ。しかし……。
「しかし、だからなんだっつー話だよ。金で強さを買う、ただそれだけのことじゃねーか」
ベル。
「課金要素のあるゲームってのはそういうもんでしょ。そりゃあさ、昔はさ、格ゲー練習して上手くなったり、そういう感じで強さを手に入れたけどね。今は何でもお金で解決する時代だよ」
「でもやっぱ納得いかねぇんだよ。将棋やチェスでだよ、お金で飛車やクイーン買って相手に勝って、それの何が将棋上手なのか、チェス名人なのかと俺はいいたいね。そういうことでしょ」
「あんたのいってることは正しい、あたしだってそう思う。でも、もう昔と違うんだってば。地道な練習や努力で強くなる、そんなのは時代遅れ! お手軽お気楽極楽道楽、お金を払えばオール・ライト! それが流行の最先端、札束で殴り合うゲームだ」
「……分かってるけどさ……」
またもやドアが開き、誰かが入ってくる。俺たちはそいつに視線を向ける。
見た目は低レベルの戦士だ。種族は人間、性別は女。どうみても初心者だが、なんでここに? きいてみるか。
「すんません、誰ですか?」
「はじめまして、スロースと申します。今回、オリヒソのことで話があって参りました」
「はぁ?」
「噂で聞きましたが、ダムドさんとバーミィさんはオリヒソに負けたとか……」
即座にバーミィがキレる。
「てめぇ、嫌味を言いにきたのか?」
「そうではありません。私はオリヒソを倒す話をするために来たのです」
「倒すぅ? 初心者のあんたがぁ? はっ、冗談やめろよ!」
「私が倒すのではありません。お二人が倒すのです」
「ちょっとあんたさぁ、なんなのさっきから、変なことばっか言って! なめたこと言ってっと……」
やべぇな、バーミィの奴、もう短剣を抜こうとしてる。止めておくのが正解か。
「まぁまぁ、落ち着けって。とにかく話を聞いてみようぜ、ケンカはその後でも出来るんだし」
「けどな……」
「スロースさん、とりあえずそこの椅子に座ってください。俺たちもいきますから」
「ありがとうございます」
「ベルはどうすんだ?」
「あたしはダンジョンでも行ってくるよ。なんか内密の話みたいだし、なら、あたしがいたらまずいでしょ?」
「すまねぇ」
「いいって、大したことじゃないし。じゃ、また後でね」
ベルはドアを開けてどこかに去っていく。
その姿を見送った後、さきほど椅子に腰かけたばかりのスロースが喋り始める。
「それでは、早速ですが話を始めさせていただきます……」
今、俺とバーミィは、俺たちが所属してるギルドの建物の居間にいる。
このボロい部屋の中央には安物のテーブルや椅子があって、隅にはカウチがあり、俺はそれにだらしなく寝そべっている。
椅子に座ってるバーミィが話しかけてくる。
「どうよ、被害は?」
「金は三割ぐらい持ってかれたな。それと、回復アイテム」
「ウッド・ゴーレムのドロップ品は?」
「全部あいつにとられたね」
「そうか……。俺もだ」
「クソッ……」
今のドアが開き、盗賊風の恰好をした白エルフの女が入ってくる。こいつはベルって名前で、俺たちとは古い付き合いだ。
彼女は言う。
「どーしたの、みんな。そんなしょげちゃって……」
俺が答える。
「さっきオリヒソにやられたんだよ」
「PKされた?」
「あぁ」
「うわぁ、ご愁傷さま……」
彼女は肩をすくめて言い、近くの壁にもたれかかるようにして立ち、話を続ける。
「バーミィもやられたの?」
「まぁな……」
「二人いたのに勝てなかったんだ?」
「しょうがないだろ、オリヒソ相手じゃ分が悪い」
「それもそうか。重課金だしねー、あいつ」
「クソッ……」
重課金。重戦車みたいなゴツい言葉だ。しかし……。
「しかし、だからなんだっつー話だよ。金で強さを買う、ただそれだけのことじゃねーか」
ベル。
「課金要素のあるゲームってのはそういうもんでしょ。そりゃあさ、昔はさ、格ゲー練習して上手くなったり、そういう感じで強さを手に入れたけどね。今は何でもお金で解決する時代だよ」
「でもやっぱ納得いかねぇんだよ。将棋やチェスでだよ、お金で飛車やクイーン買って相手に勝って、それの何が将棋上手なのか、チェス名人なのかと俺はいいたいね。そういうことでしょ」
「あんたのいってることは正しい、あたしだってそう思う。でも、もう昔と違うんだってば。地道な練習や努力で強くなる、そんなのは時代遅れ! お手軽お気楽極楽道楽、お金を払えばオール・ライト! それが流行の最先端、札束で殴り合うゲームだ」
「……分かってるけどさ……」
またもやドアが開き、誰かが入ってくる。俺たちはそいつに視線を向ける。
見た目は低レベルの戦士だ。種族は人間、性別は女。どうみても初心者だが、なんでここに? きいてみるか。
「すんません、誰ですか?」
「はじめまして、スロースと申します。今回、オリヒソのことで話があって参りました」
「はぁ?」
「噂で聞きましたが、ダムドさんとバーミィさんはオリヒソに負けたとか……」
即座にバーミィがキレる。
「てめぇ、嫌味を言いにきたのか?」
「そうではありません。私はオリヒソを倒す話をするために来たのです」
「倒すぅ? 初心者のあんたがぁ? はっ、冗談やめろよ!」
「私が倒すのではありません。お二人が倒すのです」
「ちょっとあんたさぁ、なんなのさっきから、変なことばっか言って! なめたこと言ってっと……」
やべぇな、バーミィの奴、もう短剣を抜こうとしてる。止めておくのが正解か。
「まぁまぁ、落ち着けって。とにかく話を聞いてみようぜ、ケンカはその後でも出来るんだし」
「けどな……」
「スロースさん、とりあえずそこの椅子に座ってください。俺たちもいきますから」
「ありがとうございます」
「ベルはどうすんだ?」
「あたしはダンジョンでも行ってくるよ。なんか内密の話みたいだし、なら、あたしがいたらまずいでしょ?」
「すまねぇ」
「いいって、大したことじゃないし。じゃ、また後でね」
ベルはドアを開けてどこかに去っていく。
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「それでは、早速ですが話を始めさせていただきます……」
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